大切な人
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それは、杜王町では決して珍しくないはずの出来事だった。
正体不明のスタンド使い。突然の襲撃。
巻き込まれた一般人。
───その「一般人」が、なまえでなければ。
露伴の携帯が鳴ったのは、夜遅くだった。
表示された番号を見た瞬間、嫌な予感が背筋を走る。
「……岸辺露伴か」
低く、抑えた声。空条承太郎だった。
「なまえがスタンド使いに襲われた。命に別状はないが、重傷だ。今は病院にいる」
一瞬、思考が止まる。
「……場所は。なまえは何処にいる」
「……ぶどうヶ丘病院だ。」
通話はそれだけで切れた。
原稿は机の上に広げたまま。
インクの蓋も閉めず、露伴は外に飛び出した。
なぜ気づかなかった。
なぜ、もっと警戒させなかった。
「大丈夫だ」と、勝手に思い込んでいたのは自分だ。
病院の廊下は、夜でも白く静まり返っていた。
その無機質な光が、露伴の神経を逆撫でする。
病室の前に立っていたのは、承太郎だった。壁にもたれ、帽子の影に目を落としている。
「……どうして、もっと早く知らせなかった」
抑えようとした声は、失敗していた。
承太郎は視線を上げる。
「現場は混乱していた。敵スタンドは逃走中だ。まずはなまえの保護が最優先だった」
「そんなことは分かっている!」
露伴は一歩、承太郎に詰め寄る。
「なまえは……ッ彼女は……スタンド使いだ……っ!厄介事に巻き込まれやすいことをアンタは知っていたはずだ!」
拳が震える。
承太郎の胸元に手が伸びかけ、ぎりぎりで止まった。
「僕は……っ、承太郎さん……アンタたちがいるから、大丈夫だと──」
言い切れず、言葉を噛み殺す。
一瞬、廊下の空気が張りつめた。
承太郎は低く息を吐く。
「……俺も万能じゃあねえ」
静かな声だった。
「俺が駆けつけた時、既に彼女は血まみれで倒れていた」
露伴の喉が鳴る。
「……それでもだ。彼女の意識が切れる直前に呼んだのは、お前の名前だ。」
露伴の言葉が、完全に途切れた。
「……っ」
「だから連絡したのだ。お前はなまえの家族じゃねぇが……だが、彼女にとって特別な存在なのは間違いないだろう」
長い沈黙。
「……僕の落ち度だ」
露伴は、そう吐き出すように言った。
「危険から遠ざけることもできた。それなのに、僕は……彼女がいる日常に甘えていた」
承太郎は病室のドアに視線を向ける。
「会ってこい。それから先は……自分で決めろ」
露伴は一度だけ、承太郎を見る。
もう責める気力は残っていなかった。
病室の扉を開けると、ベッドの上でなまえが眠っていた。
包帯。点滴。
規則正しい呼吸。それを確認しただけで、膝から力が抜けそうになる。
「……本当に、馬鹿だ」
声は、ひどく掠れていた。椅子に腰を下ろし、露伴は顔を覆う。
失うかもしれなかった。その事実が、今になって重くのしかかる。
やがて、なまえがゆっくりと目を開けた。
「……ろ、はん?」
「……ああ。ここにいる」
露伴は立ち上がり、カーテンを引く。
外界を遮断するように。
「君は……無茶をしすぎる」
「ごめん……」
「謝るな。……君が悪いんじゃあないさ。だが──」
一拍、間を置いて。
「君が傷つく可能性を、僕はもう許容できない」
なまえは、ただ露伴を見つめている。
「だから決めた。これは衝動じゃあない。……逃げでもない」
露伴は、はっきりと言った。
「なまえ。僕と結婚しろ」
沈黙。
「……それ、プロポーズ?」
「他にどう聞こえる?」
露伴の声は平静を装っているが、指先は震えている。
「君を“幼なじみ”という曖昧な言葉で放置するつもりはない。君を失うかもしれないと知って……もう、耐えられなくなった」
そして、静かに。
「君が好きだ。昔から。ずっとだ」
なまえの目から、静かに涙が溢れる。
「……ずっと伝えてたのに」
「分かっている。だから……」
露伴は言葉を切り、なまえの手を取る。
「もう二度と、君を危険に晒さない。それを、僕自身に課す」
窓の外、杜王町はいつも通り静かだった。
だがその日、幼なじみという関係は、確かに終わった。
それは衝動ではない。
岸辺露伴が、生涯を賭けると決めた選択だった。
正体不明のスタンド使い。突然の襲撃。
巻き込まれた一般人。
───その「一般人」が、なまえでなければ。
露伴の携帯が鳴ったのは、夜遅くだった。
表示された番号を見た瞬間、嫌な予感が背筋を走る。
「……岸辺露伴か」
低く、抑えた声。空条承太郎だった。
「なまえがスタンド使いに襲われた。命に別状はないが、重傷だ。今は病院にいる」
一瞬、思考が止まる。
「……場所は。なまえは何処にいる」
「……ぶどうヶ丘病院だ。」
通話はそれだけで切れた。
原稿は机の上に広げたまま。
インクの蓋も閉めず、露伴は外に飛び出した。
なぜ気づかなかった。
なぜ、もっと警戒させなかった。
「大丈夫だ」と、勝手に思い込んでいたのは自分だ。
病院の廊下は、夜でも白く静まり返っていた。
その無機質な光が、露伴の神経を逆撫でする。
病室の前に立っていたのは、承太郎だった。壁にもたれ、帽子の影に目を落としている。
「……どうして、もっと早く知らせなかった」
抑えようとした声は、失敗していた。
承太郎は視線を上げる。
「現場は混乱していた。敵スタンドは逃走中だ。まずはなまえの保護が最優先だった」
「そんなことは分かっている!」
露伴は一歩、承太郎に詰め寄る。
「なまえは……ッ彼女は……スタンド使いだ……っ!厄介事に巻き込まれやすいことをアンタは知っていたはずだ!」
拳が震える。
承太郎の胸元に手が伸びかけ、ぎりぎりで止まった。
「僕は……っ、承太郎さん……アンタたちがいるから、大丈夫だと──」
言い切れず、言葉を噛み殺す。
一瞬、廊下の空気が張りつめた。
承太郎は低く息を吐く。
「……俺も万能じゃあねえ」
静かな声だった。
「俺が駆けつけた時、既に彼女は血まみれで倒れていた」
露伴の喉が鳴る。
「……それでもだ。彼女の意識が切れる直前に呼んだのは、お前の名前だ。」
露伴の言葉が、完全に途切れた。
「……っ」
「だから連絡したのだ。お前はなまえの家族じゃねぇが……だが、彼女にとって特別な存在なのは間違いないだろう」
長い沈黙。
「……僕の落ち度だ」
露伴は、そう吐き出すように言った。
「危険から遠ざけることもできた。それなのに、僕は……彼女がいる日常に甘えていた」
承太郎は病室のドアに視線を向ける。
「会ってこい。それから先は……自分で決めろ」
露伴は一度だけ、承太郎を見る。
もう責める気力は残っていなかった。
病室の扉を開けると、ベッドの上でなまえが眠っていた。
包帯。点滴。
規則正しい呼吸。それを確認しただけで、膝から力が抜けそうになる。
「……本当に、馬鹿だ」
声は、ひどく掠れていた。椅子に腰を下ろし、露伴は顔を覆う。
失うかもしれなかった。その事実が、今になって重くのしかかる。
やがて、なまえがゆっくりと目を開けた。
「……ろ、はん?」
「……ああ。ここにいる」
露伴は立ち上がり、カーテンを引く。
外界を遮断するように。
「君は……無茶をしすぎる」
「ごめん……」
「謝るな。……君が悪いんじゃあないさ。だが──」
一拍、間を置いて。
「君が傷つく可能性を、僕はもう許容できない」
なまえは、ただ露伴を見つめている。
「だから決めた。これは衝動じゃあない。……逃げでもない」
露伴は、はっきりと言った。
「なまえ。僕と結婚しろ」
沈黙。
「……それ、プロポーズ?」
「他にどう聞こえる?」
露伴の声は平静を装っているが、指先は震えている。
「君を“幼なじみ”という曖昧な言葉で放置するつもりはない。君を失うかもしれないと知って……もう、耐えられなくなった」
そして、静かに。
「君が好きだ。昔から。ずっとだ」
なまえの目から、静かに涙が溢れる。
「……ずっと伝えてたのに」
「分かっている。だから……」
露伴は言葉を切り、なまえの手を取る。
「もう二度と、君を危険に晒さない。それを、僕自身に課す」
窓の外、杜王町はいつも通り静かだった。
だがその日、幼なじみという関係は、確かに終わった。
それは衝動ではない。
岸辺露伴が、生涯を賭けると決めた選択だった。