セドリックと幼なじみ
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「なまえ、準備はいい?」
母が暖炉の前で心配そうに聞いてくる。
「うん、大丈夫!」
私はフルーパウダーを手に取り、深呼吸をした。何度目でも、胸のドキドキが止まらない。
「いいか?名前はっきり言うんだぞ?」
「うん、分かってる!」
父の言葉に頷き、思い切って粉を暖炉に撒く。
「じゃあ、行ってきます!」
暖炉の中に足を踏み入れ、セドリックの家へと続く目的地の名前をはっきりと告げた。
次の瞬間、緑の炎が身体を包み、ふわっと浮き上がる。目の前の景色がぐるぐる回転し、耳元で風が唸る。
煙突の中を猛スピードで滑る感覚に、私は目をぎゅっと閉じた。
────
緑の炎がシュッと消え、煤がふわりと舞う中、私はどんっと着地した。
「うわっ!」
バランスを崩した私を、しっかりとした腕が受け止める。
「なまえ、大丈夫?」
ふっと笑う優しい声。私はふらつきながら顔を上げると、セドリックの柔らかい灰色の瞳がそこにあった。
「…セドリック!」
「ふふ、少しふらついちゃったね」
「う〜……フルーパウダーって難しい……」
「でも、無事に着いてよかった」
セドリックの手を借りて立ち上がると、奥からドタドタと足音が近づいてきた。
「おお、なまえ!久しぶりだな!」
「なまえちゃん、いらっしゃい!」
セドリックの両親が満面の笑みで迎えてくれる。
「お久しぶりです!」
「いやぁ、大きくなったな!ますます素敵なレディじゃないか!」
エイモスさんが豪快に笑いながら、私の肩をぽんぽんと叩く。
「父さん、強く叩きすぎだよ。」
「はっはっは!だって嬉しいんだ!随分と会ってなかったからな。」
「またお会いできて嬉しいです!」
「私たちもだよ。さあさあ、まずは座ってゆっくり話そう。」
温かい歓迎に、私は自然と笑顔になった。
⸻
セドリックの家で過ごす時間は、驚くほど心地よかった。ダイニングに移動すると、大きな木のテーブルがパンの香りで満たされていた。
窓の外では、夕暮れの光が田園風景を黄金に染め、魔法の燭台がふわふわ浮かんで部屋を照らす。
皿がカチャカチャと自分で並び、セドリックのお母さんが笑顔でスープを注いでくれる。
壁にはクィディッチの古いポスターと、セドリックのシーカー姿の写真が誇らしげに飾られていた。
お母さんの作る料理はどれも絶品で、ローストビーフもパンプキンパイも口の中でとろけるよう。
エイモスさんの話――ホグワーツ時代のクィディッチの武勇伝や魔法省のドタバタ劇――は笑いが止まらず、セドリックと並んで座るだけで、どこか胸がポカポカした。
「さて、お前たち、ホグワーツではどんな活躍をしてるんだ?」
食事中、エイモスさんがスプーンを振って興味津々に聞いてくる。
「なまえは、クィディッチはやらないのか?」
「え、えっと……」
私はフォークを握りしめ、ちょっと顔を赤らめた。
「見るのは大好きなんですけど、飛ぶのは苦手で……あの、高いところ、ちょっと怖くて。」
「ほう!なら、セドリックが教えてやればいい!」
「えっ?」
「僕が?」
セドリックがパンを手に持ったまま、目を丸くした。
「当たり前だろう!あんなに空を飛ぶのが得意なんだから!」
お母さんがクスクス笑いながら、「セドリック、なまえちゃんをしっかり支えてあげてね」と付け加えた。
「確かに、セドリックなら安心かも……」
私はスープの湯気を眺めながら、つぶやいた。
「じゃあ、今度一緒に飛んでみようか。」
「……うん!」
彼の優しい眼差しに、思わず頷いてしまった。心臓がドキッと跳ねたけど、なんだか楽しみな気がした。
⸻
ゆるやかな午後の日差しが、リビングの窓から柔らかく差し込んでいた。
窓の外では、心地よい風が田園の草を揺らし、黄色い花が飾られた鉢がそっと葉を動かしている。
ふかふかのラグが敷かれた部屋は、暖炉の残り火と魔法のランタンでほのかに輝き、ソファのクッションはまるで雲のようで、セドリックの隣に座ると、甘いハーブティーの香りがふわっと漂ってきた。
「なんか眠くなってきちゃった……」
「無理しなくていいよ。横になったら?」
「でも……」
「ほら、僕の隣、空いてるよ。」
セドリックがふんわり微笑み、自分の肩を軽くポンポンと叩いた。
「……じゃあ、お言葉に甘えて。」
私はドキドキしながら、そっとセドリックの肩にもたれた。セドリックの肩から感じる温もりが安心感をくれた。
「こうしてると昔を思い出すね。」
ゆっくりまぶたを閉じながら、セドリックのセーターの柔らかい感触に頬を預けた。
リビングのどこかで、時計がカチカチと優しく時を刻んでいる。
「……ふふ、こんなにくっつくなんて珍しいね。」
セドリックの小さな笑い声が耳に届くけど、眠気の波には抗えず、私は唇をほんの少し動かしただけ。
「……だって、すごく落ち着くから……」
自分でも聞き取れないほどの呟きだったけど、セドリックの手がそっと私の髪を撫でた。ハーブの香りとセドリックの温もりが、夢の世界への入り口みたいだった。
「そっか……なまえ、おやすみ。」
セドリックの声が遠くなり、私はそのまま静かな夢に落ちていった。
────
どれくらい眠っていたのだろう。
ふわりと、誰かの指先が髪を梳く感触に、うっすら意識が戻る。心地よさに身を任せたくて、私はまだ目を閉じたまま、まどろんでいた。
「……よく眠ってる。」
耳元で、静かに囁くセドリックの声。リビングの窓から漏れる風の音と、遠くでさえずる鳥の声が、セドリックの言葉を優しく包む。
私はそっと息を潜めた。心臓が小さくドキドキしてるのが、自分でも分かった。
「……こんな無防備ななまえ、初めて見たかも。」
セドリックの声に、くすぐったいような照れが混じる。セドリックの指が、髪の毛をそっと整えるように動く。
「……本当に……可愛いな。」
柔らかい指先が、ほんの一瞬、頬をかすめた。午後の光がソファの上で揺れ、リビングの温かさが私を包む。
「なまえ……起きてる?」
セドリックの問いかけは、まるで秘密を共有するみたいに小さかった。
私は迷った──でも、この温もりをもう少し感じていたくて、寝たふりを続けた。息を止めて、ドキドキを隠すように。
セドリックは小さく笑って、まるで大事な宝物を扱うように、私の髪をそっと梳いた。
「……大好きだよ。」
胸がきゅっと締めつけられた。セドリックの声は甘く、優しく、まるで温かい光みたいに愛おしかった。
思わず目を開けそうになった。
でも、私は心臓が跳ねるのをそっと抑えながら、この夢のような時間と、セドリックの温もりをあともう少しだけ感じたいと願った。
────
楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰る時間が近づいていた。
「またすぐに会える?」
玄関先で名残惜しそうに呟くと、セドリックが優しく微笑む。
「もちろん。ほら、ダイアゴン横丁で、教科書を買いに行く約束でしょ?」
「……うん!」
「それに、またいつでも遊びにおいで」
「ありがとう、セドリック」
「こっちこそ、来てくれてありがとう」
彼の穏やかな声に見送られながら、私はフルーパウダーを使って帰路についた。
こうして、忘れられない夏の思い出が、またひとつ増えたのだった。