セドリックと幼なじみ
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翌朝、ホグワーツの廊下は朝の光に満ち、各寮の生徒たちが思い思いの表情で移動していた。
なまえは食堂へ向かう途中、ふとハッフルパフの生徒たちが集まって何か話しているのを耳にした。
「昨日のセドリック、本当にかっこよかった!!」
「ほんと! 笑顔が眩しすぎる……!」
「ねえ、やっぱり誰か好きな人とかいるのかな?」
「どうだろう? でもこの前も、何か優しく声をかけてた子がいたって──」
なまえは思わず足を止めた。
──また、セドリックの話だ。
何気なく聞こえてくるセドリックの名前に、胸がかすかにざわつく。
昨日、双子に言われた言葉が頭をよぎる。
「でもさ、もしセドリックが誰かと付き合ったら……どうする?」
「“よかったね”って笑えるか?」
自分の気持ちがよく分からないまま、なまえは小さく息を吐いた。
「……考えても仕方ないよね」
そう自分に言い聞かせるように呟いて、足を速める。食堂の入口が見えた頃、向こうから見慣れた人物が近づいてくるのが分かった。
「おはよう、なまえ」
優しい声が、朝の空気を和らげるように響く。
目を向けると、セドリックが朝の日差しを背にして立っていた。セドリックの髪が柔らかく揺れ、灰色の瞳が穏やかに細められている。
「お、おはよ、セドリック」
ぎこちないながらも返事をすると、セドリックはふっと微笑んだ。
「朝食、もう食べた?」
「え? まだだけど……」
「なら、一緒に行こうか」
何気ない誘いのはずなのに、昨日の双子の言葉が頭をよぎる。
──“ヤキモチってやつじゃない?”
「……っ!」
自分の顔が熱くなっている気がして、慌てて視線をそらした。
「なまえ、どうしたの?」
「えっ!? いや、何でもない! ほら、早く行かないと席埋まっちゃうよ!」
ごまかすように早口で言うと、セドリックは「?」と首を傾げながらも、優しく頷いた。
「そうだね、行こうか」
彼の横を歩きながら、なまえはそっと自分の胸に手を当てた。
──この気持ちは、なんだろう?
昨日まで何とも思っていなかったはずの幼なじみ。でも、今は彼と目を合わせるだけで、どうしてか落ち着かない。
「……やっぱり、変だよ」
小さく呟いた声は、朝のざわめきに紛れて消えていった。
───
大広間に入ると、朝食の香ばしい匂いと、生徒たちの楽しげな声が耳に飛び込んできた。
セドリックと並んで歩くのは、いつものことなのに──どうしてこんなに意識してしまうんだろう。
「ほら、座って」
優しく促されて、なまえは戸惑いながらもハッフルパフのテーブルのセドリックの隣に腰を下ろした。
「えっ、私、ここで食べていいの?」
「うん、たまにはいいだろ? それに……」
セドリックは穏やかな笑みを浮かべながら、少しだけ体を前に傾けた。
「なまえがここにいると、朝からいい気分になれるしね」
「……っ!?」
パンを取ろうとしていた手が止まる。
──それ、どういう意味なの…?
何気なく言ったのかもしれない。
でも、昨夜の双子の言葉がまだ頭にこびりついていて、普通に受け流せなくなっている自分がいる。
「……そ、そういうことをさらっと言わないでよ」
「え?」
セドリックは本気で不思議そうな顔をしている。
「だって、君といると落ち着くし、楽しいし……それだけだよ?」
──それだけ。
その言葉が胸に突き刺さる。
やっぱり私は、ただの幼なじみで、妹みたいな存在でしかないんだ。
「…そっか」
わざとそっけなく返事をして、カップに手を伸ばす。その間にも、周囲からは次々とセドリックに話しかける声が聞こえてくる。
「セドリック、おはよう! 今日のクィディッチの練習、頑張ってね!」
「昨日の試合、すごかったよ! さすがハッフルパフのエースだな!」
「セドリック、あとで魔法薬学の課題手伝ってくれない?」
グリフィンドール、レイブンクロー、スリザリン──寮の垣根を越えて、彼を慕う声が飛び交っている。
「すごい人気……」
なまえが思わず呟くと、セドリックは少し照れたように笑った。
「みんなが応援してくれるのは、ありがたいことだよ」
──“君やみんなの応援のおかげだよ”
昨日の彼の言葉を思い出し、また胸がざわつく。セドリックにとって、私は“みんな”の中の一人でしかないのかもしれない。
「……ねえ、セドリック」
「ん?」
「もしさ、すごく大切な人が誰かと付き合ったら……寂しいって思う?」
言った瞬間、後悔した。
だけど、セドリックは少し考え込んだあと、ゆっくりと答えた。
「……うーん、そうだな」
カップを手に取りながら、彼はどこか遠くを見つめるような表情になる。
「たぶん、寂しくなると思う。……でも、その人が幸せなら、それでいいかな」
「……そっか」
セドリックの言葉は、あまりにも彼らしくて。
だからこそ、切なかった。