マッチングアプリ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雨音が激しく響く中、昇降口の冷たい空気が二人を包んでいた。
なまえは背後からの声に肩を跳ねさせ、ゆっくりと振り返る。そこには、大きなビニール傘を握りしめたライナーが立っていた。数週間ぶりに間近で見る彼の顔は、心なしか少し痩せたようにも見える。
「ライナー……」
「……傘、忘れたんだろ。いつも予備持ってないもんな、お前」
どこか投げやりな口調。けれど、その目はまっすぐになまえをとらえて離さない。
「うん……朝は降ってなかったから」
「……入れよ」
ライナーは短く吐き捨てると、バサッと勢いよく傘を開いた。そして、なまえの前に一歩踏み出し、大きな傘を広げて差し出す。
「いいの……? 私たち、喧嘩中なのに」
「お前が濡れて風邪ひいたら……俺が後味悪い」
相変わらずの素直じゃない言い草。けれど、差し出された傘の持ち手が、かすかに震えているのをなまえは見逃さなかった。
ライナーだって、本当は気まずくて、怖くて、それでも放っておけなくてここにいるのだと分かってしまう。
なまえは意地を張るのをやめ、ライナーの開いた傘の中に一歩踏み込んだ。
ふわりと香る、聞き覚えのあるライナーの匂い。隣に立つだけで、止まっていた時間が一気に動き出したような気がした。
「……行こう」
二人は並んで歩き出す。雨足は強まるばかりで、大きなビニール傘を叩く音がうるさいくらいに響いていた。
ふと気づくと、ライナーの右肩が激しく濡れている。傘のほとんどが、なまえの上に差し出されていた。
「ライナー、肩濡れてる! もっとそっちに寄せて」
「あ? 別にこれくらい平気だよ」
「平気じゃないよ! 風邪ひくのライナーじゃん!」
思わずライナーの制服の袖を引っ張ると、彼は足を止め、急に濡れた肩をそびやかしてなまえを見下ろした。
「……じゃあ、もっと近く寄れよ」
「え」
「隙間あいてるから濡れるんだろ。離れて歩くな」
言いながら、ライナーは空いていた左手を伸ばし、なまえの反対側の肩をぐっと引き寄せた。
体温が直接伝わるほどの至近距離。あまりの強引さと距離の近さに、胸がはち切れそうになる。
「……ライナー」
「……言っとくけど、俺はまだ怒ってるからな」
「え……」
「アプリのことだけじゃない。『ただの幼なじみ』って言われたのが、一番腹立った」
ライナーの声が低く沈む。傘の陰になった彼の顔には、悔しさと、消し去れない切なさが滲み出ていた。
「それに……幼なじみだから心配してたんじゃない。お前が……他の男のものになるのが嫌だったんだよ」
雨音を突き破って届いた告白に、なまえの息が止まる。ライナーは顔を背けたまま、握りしめた傘の手元にぎゅっと力を込めた。
「身の程知らずなのは分かってる。でも、幼なじみで片付けられるくらいなら……っ」
「消したよ……!」
叫ぶようななまえの声に、ライナーの言葉が止まった。
「アプリ……あの日の夜、すぐに消した。ライナーに言われたからじゃなくて、あんな悲しそうな顔させたのがショックで……ライナーと口きけなくなる方が、何百倍も辛かったから……!」
雨の中で、お互いの呼吸だけが白く重なる。
ライナーは目を見開き、じっとなまえを見つめた。やがて、その強張っていた表情がじわじわと解け、深く溜め息を吐き出す。
「……お前さぁ……」
呆れたような、けれど愛おしさを隠しきれない声。ライナーは左手で抱き寄せていたなまえの肩から、そのまま背中へと腕を回し、力いっぱい引き寄せた。
「そういう大事なことは……もっと早く言えよ、バカ」
濡れたライナーの制服の匂いが鼻をくすぐる。胸の中に閉じ込められていた数週間分の淋しさが一気に溢れ出し、なまえもそっと彼の腰に手を回し返した。
「ライナーこそ、素直になるの遅い……」
「うるさい。……もう二度と、あんなこと言うなよ」
頭の上にライナーの顎がぽんと乗せられる。雨の冷たさを完全に忘れてしまうほど、二人の間には温かい体温だけが満ちていた。
なまえは背後からの声に肩を跳ねさせ、ゆっくりと振り返る。そこには、大きなビニール傘を握りしめたライナーが立っていた。数週間ぶりに間近で見る彼の顔は、心なしか少し痩せたようにも見える。
「ライナー……」
「……傘、忘れたんだろ。いつも予備持ってないもんな、お前」
どこか投げやりな口調。けれど、その目はまっすぐになまえをとらえて離さない。
「うん……朝は降ってなかったから」
「……入れよ」
ライナーは短く吐き捨てると、バサッと勢いよく傘を開いた。そして、なまえの前に一歩踏み出し、大きな傘を広げて差し出す。
「いいの……? 私たち、喧嘩中なのに」
「お前が濡れて風邪ひいたら……俺が後味悪い」
相変わらずの素直じゃない言い草。けれど、差し出された傘の持ち手が、かすかに震えているのをなまえは見逃さなかった。
ライナーだって、本当は気まずくて、怖くて、それでも放っておけなくてここにいるのだと分かってしまう。
なまえは意地を張るのをやめ、ライナーの開いた傘の中に一歩踏み込んだ。
ふわりと香る、聞き覚えのあるライナーの匂い。隣に立つだけで、止まっていた時間が一気に動き出したような気がした。
「……行こう」
二人は並んで歩き出す。雨足は強まるばかりで、大きなビニール傘を叩く音がうるさいくらいに響いていた。
ふと気づくと、ライナーの右肩が激しく濡れている。傘のほとんどが、なまえの上に差し出されていた。
「ライナー、肩濡れてる! もっとそっちに寄せて」
「あ? 別にこれくらい平気だよ」
「平気じゃないよ! 風邪ひくのライナーじゃん!」
思わずライナーの制服の袖を引っ張ると、彼は足を止め、急に濡れた肩をそびやかしてなまえを見下ろした。
「……じゃあ、もっと近く寄れよ」
「え」
「隙間あいてるから濡れるんだろ。離れて歩くな」
言いながら、ライナーは空いていた左手を伸ばし、なまえの反対側の肩をぐっと引き寄せた。
体温が直接伝わるほどの至近距離。あまりの強引さと距離の近さに、胸がはち切れそうになる。
「……ライナー」
「……言っとくけど、俺はまだ怒ってるからな」
「え……」
「アプリのことだけじゃない。『ただの幼なじみ』って言われたのが、一番腹立った」
ライナーの声が低く沈む。傘の陰になった彼の顔には、悔しさと、消し去れない切なさが滲み出ていた。
「それに……幼なじみだから心配してたんじゃない。お前が……他の男のものになるのが嫌だったんだよ」
雨音を突き破って届いた告白に、なまえの息が止まる。ライナーは顔を背けたまま、握りしめた傘の手元にぎゅっと力を込めた。
「身の程知らずなのは分かってる。でも、幼なじみで片付けられるくらいなら……っ」
「消したよ……!」
叫ぶようななまえの声に、ライナーの言葉が止まった。
「アプリ……あの日の夜、すぐに消した。ライナーに言われたからじゃなくて、あんな悲しそうな顔させたのがショックで……ライナーと口きけなくなる方が、何百倍も辛かったから……!」
雨の中で、お互いの呼吸だけが白く重なる。
ライナーは目を見開き、じっとなまえを見つめた。やがて、その強張っていた表情がじわじわと解け、深く溜め息を吐き出す。
「……お前さぁ……」
呆れたような、けれど愛おしさを隠しきれない声。ライナーは左手で抱き寄せていたなまえの肩から、そのまま背中へと腕を回し、力いっぱい引き寄せた。
「そういう大事なことは……もっと早く言えよ、バカ」
濡れたライナーの制服の匂いが鼻をくすぐる。胸の中に閉じ込められていた数週間分の淋しさが一気に溢れ出し、なまえもそっと彼の腰に手を回し返した。
「ライナーこそ、素直になるの遅い……」
「うるさい。……もう二度と、あんなこと言うなよ」
頭の上にライナーの顎がぽんと乗せられる。雨の冷たさを完全に忘れてしまうほど、二人の間には温かい体温だけが満ちていた。
