マッチングアプリ
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喧嘩をしたあの日から、もう三週間が経とうとしていた。
校内ですれ違っても、ライナーは視線をそらして通り過ぎる。部活帰りのいつもの通学路も、今は一人で歩くのが当たり前になっていた。
(……なんで私、あんな言い方しちゃったんだろう)
スマホの画面を開いても、通知欄にライナーの名前はない。あのマッチングアプリは喧嘩した日の夜にすぐ消したけれど、そんなこと、気まずくて今さら本人に言えるはずもなかった。
「ただの幼なじみ」なんて言葉で線を引いたのは自分だ。あんな悲しそうな顔をさせておいて、どの面下げて話しかければいいというのか。
一方のライナーもまた、地獄のような日々を過ごしていた。
「おいライナー、今日の練習えらい気合入ってんな」
「……そうか? 普通だ」
部活の練習でグラウンドをがむしゃらに走り込みながら、ライナーは荒い息を吐き出す。
汗を拭う振りをして向けた視線の先、校舎の二階からふと下に目をやったなまえと、一瞬だけ目が合った。
——ハッとして、お互いに慌てて視線を逸らす。
(……クソッ、何やってんだ俺は)
頭では分かっている。
あの日、感情に任せて怒鳴り散らした自分が悪い。幼なじみという立場を盾にして、自分の独占欲を「心配」なんて綺麗な言葉で包み隠そうとしたのが間違いだったのだ。
謝りたい。今すぐにでも引き止めて、アプリなんてやるな、俺だけを見てくれと抱きしめたい。
けれど、一度突きつけられた「ただの幼なじみ」という言葉が、ライナーの踏み出す足を重く縛り付けていた。
お互いに「自分から話しかけたら負けだ」と意地を張り、同時に「もう嫌われたかもしれない」と怖がっている。
その日の放課後、季節外れの強い雨が降り出した。
傘を持っていなかったなまえは、誰もいなくなった昇降口でぽつんと立ち尽くしていた。薄暗い下駄箱の陰から、そっと様子をうかがう大きな影があることにも気づかずに。
「……傘、持っていかなかったのか」
ライナーは自分の持っていた大きなビニール傘を握りしめ、胸の奥で渦巻く意地と、込み上げる愛おしさの間で葛藤していた。
気まずい沈黙が流れる昇降口で、雨音だけが激しく響いている。
校内ですれ違っても、ライナーは視線をそらして通り過ぎる。部活帰りのいつもの通学路も、今は一人で歩くのが当たり前になっていた。
(……なんで私、あんな言い方しちゃったんだろう)
スマホの画面を開いても、通知欄にライナーの名前はない。あのマッチングアプリは喧嘩した日の夜にすぐ消したけれど、そんなこと、気まずくて今さら本人に言えるはずもなかった。
「ただの幼なじみ」なんて言葉で線を引いたのは自分だ。あんな悲しそうな顔をさせておいて、どの面下げて話しかければいいというのか。
一方のライナーもまた、地獄のような日々を過ごしていた。
「おいライナー、今日の練習えらい気合入ってんな」
「……そうか? 普通だ」
部活の練習でグラウンドをがむしゃらに走り込みながら、ライナーは荒い息を吐き出す。
汗を拭う振りをして向けた視線の先、校舎の二階からふと下に目をやったなまえと、一瞬だけ目が合った。
——ハッとして、お互いに慌てて視線を逸らす。
(……クソッ、何やってんだ俺は)
頭では分かっている。
あの日、感情に任せて怒鳴り散らした自分が悪い。幼なじみという立場を盾にして、自分の独占欲を「心配」なんて綺麗な言葉で包み隠そうとしたのが間違いだったのだ。
謝りたい。今すぐにでも引き止めて、アプリなんてやるな、俺だけを見てくれと抱きしめたい。
けれど、一度突きつけられた「ただの幼なじみ」という言葉が、ライナーの踏み出す足を重く縛り付けていた。
お互いに「自分から話しかけたら負けだ」と意地を張り、同時に「もう嫌われたかもしれない」と怖がっている。
その日の放課後、季節外れの強い雨が降り出した。
傘を持っていなかったなまえは、誰もいなくなった昇降口でぽつんと立ち尽くしていた。薄暗い下駄箱の陰から、そっと様子をうかがう大きな影があることにも気づかずに。
「……傘、持っていかなかったのか」
ライナーは自分の持っていた大きなビニール傘を握りしめ、胸の奥で渦巻く意地と、込み上げる愛おしさの間で葛藤していた。
気まずい沈黙が流れる昇降口で、雨音だけが激しく響いている。
