すれ違い
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すれ違いの日常から溜め込んだ寂しさ、限界を迎えて零れ落ちた言葉。
『一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね。』
ライナー・ブラウン
毎晩、疲れ切った背中だけを見せられて眠る日々。話しかけても「ああ、また今度でいいか?」と気のない返事が返るだけ。飲み会で朝帰りされることも増え、いつしかあなたはソファで眠るようになっていた。触れられないまま隣にいるより、離れていた方がずっと楽だった。それをライナーが追及してこないことが、何より切なかった。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」と家を飛び出した。ライナーは呆然と立ち尽くしていた。
「……やっちゃった。呆れられちゃったかな……帰ったら、ちゃんと謝らなきゃ」
冷え込む夜の公園。ベンチで星空を見上げながら、自分勝手な行動を後悔していたあなたの耳に、荒い息遣いが届く。
「……ハッ……ハッ……お前、こんなところで何してんだ……!」
大きな肩を激しく上下させ、顔を歪めたライナーが立っていた。上着すら羽織らず飛び出してきたらしく、吐く息が真っ白だ。
「呆れるわけねぇだろ……! 呆れてたのはお前の方だろ!? 俺が……俺が最近お前を蔑ろにして、最低な態度取ってたから……!」
ライナーはベンチの前に膝をつき、あなたの両手を包み込んだ。その手は冷たく震えていた。
「追いかける資格もねぇって分かってた……けど、お前がいなくなるなんて絶対に嫌だ。頼む、俺を見捨てないでくれ……」
余裕の欠片もない男の顔で、彼はすがるようにあなたを見つめていた。
ベルトルト・フーバー
返ってくるのはいつも短い相槌だけ。食事の時間も合わなくなり、会話すら途切れた日常。ソファで寝るようになったあなたに、ベルトルトはどこか気まずそうな顔を向けながらも、理由を尋ねてはこなかった。自分なんて必要ないのだと痛感する日々。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」
言葉を残して飛び出したあなたの背中を、彼はその時、追うことができなかった。
暗い公園のベンチで、「言わなきゃよかった……嫌われちゃったかな。帰ったらなんて言おう……」と膝を抱えて涙を拭っていた時、暗がりから足音が近づいてくる。
「……見つけた……」
ベルトルトが息を切らし、消え入りそうな声であなたの名前を呼んだ。
「ごめんね……追いかけるのが遅くなって……。僕、君が家を出て行って初めて、自分がどれだけ愚かなことをしていたか気づいたんだ」
彼はゆっくり歩み寄ると、あなたと同じ目線になるようにその場にしゃがみ込んだ。
「話を聞いてくれなかったのも、寂しい思いをさせたのも、全部僕のせいだ。君がいなくていいわけない……! 僕には、君が必要なんだ」
穏やかな面影は消え、必死に情熱と後悔を訴える瞳が、あなたをまっすぐ捉えていた。
エレン・イェーガー
「後でいいか」と目を合わせずに流される毎日。朝帰りの理由すら聞けず、別々のベッドで眠る夜が当たり前になっていた。求めても拒まれるのが怖くてソファに逃げたあなたを、エレンは引き止めもしなかった。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」
涙を流して家を飛び出したあなたを、エレンは怒りと困惑の入り交じった表情で見送るしか出来なかった。
夜風が吹き抜ける公園のベンチ。
「重いって思われたかな……帰ったら謝って、荷物まとめなきゃ……」と星空を見上げながら不安に押し潰されそうになっていたその時、遠くから強い足音が響いた。
「おい……っ!」
腕を強く引っ張られ、振り返る間もなく固い胸の中に抱きしめられる。エレンの体温と、乱れた鼓動がダイレクトに伝わってきた。
「勝手にいなくなってんじゃねぇよ……! 意味が分かんねぇだろ!」
「エレン……?」
「お前がいなくてもいいわけねぇだろ! 忙しくて頭が回らなくて……お前に甘えて、酷いことしてんの気づいてなかった……っ! 俺が悪かったから……勝手に消えようとすんな!」
頭の後ろを強く抑え込まれ、二度と離さないと言わんばかりの力で抱きしめ続けられた。
ジャン・キルシュタイン
「また今度」と背を向けられるたび、胸が締め付けられた。飲み会で朝帰りされても何も言えない。せめてこれ以上傷つかないためにソファで寝ることを選んだのに、ジャンは何も言ってこなかった。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」
その一言を吐き捨てて飛び出したあなた。残されたジャンは一瞬息を呑み、言葉を失っていた。
夜の公園のベンチで、ぽつりと星を仰ぐ。「あんな言い方、怒らせちゃったよね……帰ったら謝って、ちゃんと話し合わなきゃ……」と後悔が押し寄せる。
「……はぁ……探させんじゃねぇよ、馬鹿……」
少し離れた場所で、ジャンが肩を大きく揺らしながら息を整えていた。髪は乱れ、靴紐すら解けかけた状態だった。
「……怒ってなんかねぇよ。怒ってんのは、自分自身にだ」
ジャンは歩み寄ると、乱暴に自分のジャケットを脱いであなたの肩に深く掛けた。そのままの勢いでベンチに隣り合わせで腰掛け、頭を抱える。
「……お前がソファで寝始めた時、追いかけなきゃいけなかったんだ。お前が話そうとしてた時、ちゃんと向き合うべきだったんだよ……全部俺の怠慢だ」
組んだ手に深く顔を埋めたまま、ジャンは消え入りそうな声で言葉を絞り出した。
「頼むから……勝手に一人で諦めないでくれよ。俺にはお前が必要なんだからさ……」
リヴァイ・アッカーマン
疲労を理由に会話を切り上げられ、背中を向けられる毎日。すれ違う生活に耐えかねてソファで眠るようになっても、リヴァイはただ無言で見つめるだけだった。その沈黙が、何よりも答えのように思えた。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」
涙を溢れさせて飛び出したあなたを、リヴァイは引き止める手を伸ばしかけ、そのまま止めてしまった。
静まり返った公園のベンチ。
「……私、何やってるんだろ。あんなこと言ったら、本当に出ていけって言われちゃうかも……帰ったら謝らなきゃ……」
静かに流れる涙を拭おうとした瞬間、上空から影が落ちた。
「……こんなところにいやがったか」
見上げると、リヴァイが静かな圧力を纏って立っていた。息は乱れていないが、その瞳には酷く深く、暗い色が宿っている。
「……出ていけ、だと? ふざけたことを考えるな」
リヴァイはあなたの前に膝をつき、目線を合わせると、そっと頬の涙を親指で拭った。
「お前を放置し、逃げ場を作らせ、挙句にこんな思いをさせたのは俺だ。……お前がいなくていいはずがないだろう」
低い声に混ざる微かな震えが、彼がどれほど焦ってあなたを探し回っていたかを物語っていた。
エルヴィン・スミス
責務に追われ、「また今度にしよう」と柔らかく、けれど確実にあなたを遠ざけていた日々。朝帰りの理由も告げられず、ソファで寝るようになったあなたを、エルヴィンは深く追及しなかった。その優しさこそが、壁のように感じられた。
「一緒にいてもいなくても同じなら、私がいなくてもいいよね」
感情を爆発させて家を飛び出したあなたを、エルヴィンは息を呑んで見つめることしか出来なかった。
誰もいない公園のベンチで星を見上げる。「……困らせちゃったな。エルヴィンは忙しいのに、私ばっかり我が儘で……帰ったらちゃんと謝ろう……」
悲しみに暮れていると、穏やかだが確かな足音が近づいてきた。
「……ここにいたんだね」
エルヴィンがあなたの目の前で足を止めた。いつもの完璧な身なりは乱れ、胸元が大きく上下している。
「謝る必要などどこにもないよ。謝るべきなのは、すべて私だ」
エルヴィンは静かに胸元へ手を当て、深く頭を下げた。そしてゆっくりと顔を上げると、あなたの両手を温かい手で包み込んだ。
「君の寂しさに気づきながら、甘え、目を背けていた。君という存在を失う恐怖を、今この瞬間に痛感している……」
包容力に満ちていた彼の瞳には、失うことを恐れる一人の男性としての強い感情が揺れていた。
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