ぬくもり
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「ダメなわけ、ないじゃない……」
繋がれた手のひらから伝わるジャンの熱を感じながら、なまえはそっと視線を落とした。胸がトクトクと激しく脈打っている。
「私だって……ジャンのことが好きだよ。ライナーの話は、本当に昔の思い出話のつもりだったの。今、一番大切に思ってるのはジャンだよ」
「……っ、なまえ……」
ジャンの目が見開かれ、繋いだ手にさらに力がこもる。けれど、なまえが小さく息を呑んでためらう気配を感じ取ったのか、ジャンは追撃しようとした言葉をぐっと飲み込んだ。
なまえは照れくささと不安が混ざったように、絡めた指先を少しだけ動かす。
「でもね……私、誰かと付き合ったり、恋人になるのも……全部、初めてだから。ジャンとそういう関係になるのが嫌なんじゃなくて……どうしたらいいのか分からなくて、ちょっと怖いの」
正直な気持ちを打ち明けると、ジャンの表情がふっと和らいだ。
さっきまでの嫉妬と焦りに満ちた顔は消え、目の前にいるのは、いつだってなまえを優しく包み込んでくれた、あのジャン・キルシュタインだった。
ジャンは繋いだ手とは反対の手を伸ばし、なまえの頬に優しく触れた。親指でなでる手つきは、どこまでも愛おしそうだ。
「……なんだよ、そんなことかよ。んな不安そうな顔すんなって」
ジャンは少し呆れたように、けれどたまらなく優しく笑った。
「安心しろ。初めてなのは、俺だって似たようなもんだ。かっこいい男でいようとして、空回りしてばっかだけどよ……」
ジャンは立ち上がり、なまえの体を抱き寄せるようにして、その額に優しく自分の額をこつんと当てた。
「急ぐ必要なんてねぇよ。恋人だからこうしなきゃいけないなんて決まりもない。俺たちが、俺たちのペースで……これから作っていけばいいんだ」
呼吸が触れ合うほどの近さで、ジャンの琥珀色の瞳がなまえを温かく見つめる。
「俺に、お前の『初めて』を全部くれよ。なまえ。ゆっくりでいいからさ……俺の恋人になってくれ」
ライナーの静かな寝息が遠くに聞こえる部屋で、ジャンは繋いだ手にギュッと力を込め、なまえの返事を待つように優しく微笑んだ。
