ぬくもり
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なまえはクスッと笑うと、机の上にあったボトルの栓を抜き、ジャンのグラスへとワインを注ぎ足した。
一口含んだワインの芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、ふっと身体の力が抜けていく。静かな夜の空気と酒の心地よい酔いが、二人の間の空気をどこまでも優しく溶かしていた。
「いいよ、朝まで付き合う。……で? くだらない昔話って、例えばどんな話?」
「そぉーだな……訓練兵時代、お前が裏で肉を盗もうとしてサシャと揉めてたの、俺は知ってんだぞ」
「ちょっと、ジャン! なんで今その話出すのよ! あれはサシャが勝手に巻き込んできただけでしょ!」
なまえが慌てて反論すると、ジャンは「はいはい、そういうことにしてといてやるよ」と意地悪く笑い、ワイングラスを傾けた。二人で顔を見合わせて吹き出した、その時——。
コンコン、とドアがノックされ、返事をする間もなくガチャリと扉が開いた。
「おいジャン、部屋からやけに楽しそうな声が聞こえると思ったら……なんだ、なまえもいたのか」
入ってきたのは、手酌用の酒瓶を片手に持ったライナーだった。急な来客に、ジャンはあからさまに嫌そうな顔をして眉をひそめる。
「……ライナー。お前、ノックしてすぐ開けるなよ。せっかくなまえとふたりでいい雰囲気で呑んでたってのに」
「いい雰囲気? 悪かったな、お前たちの甘い時間に水を差したみたいで。だが俺も寂しかったんだよ。……ほら、座るぞ」
「断る隙すら与えねぇのかよ……」
ライナーはどこ吹く風で空いている椅子を引き、当然のような顔でドスンと腰掛けた。ジャンは呆れつつも、棚からもうひとつのグラスを取り出してライナーの前に置く。
「ライナーも呑むの?ちょうどジャンが昔の恥ずかしい話をしてたところなの」
なまえがそう声をかけると、ライナーはニヤリと口元を緩めた。
「恥ずかしい話? ジャンの訓練兵時代のポエムの話なら、俺が一番詳しいぞ」
「おいライナー!! 余計なこと喋るな! お前こそ、昔俺たちの前で熱弁ふるってた黒歴史曝露してやろうか!?」
「やめてくれジャン、その話は俺の胸を刺す……」
一瞬で情けない顔になったライナーに、なまえとジャンはたまらず大笑いした。
ライナーが自分の持ってきた酒を三人のグラスに注ぎ足す。澄んだ琥珀色の液体が満ちていく。
「……まあでもさ」
ライナーがグラスを掲げ、少しだけ真面目な顔で二人を見つめた。
「こうしてお前らと、ただのくだらない話で笑いながら酒を呑める日が来るなんてな。あの頃の俺たちに言っても、絶対信じないだろうな」
「本当よね……いろいろあったけど、今こうしていられるのが、なんだか夢みたい」
なまえが胸の内に広がる温かさを口にすると、ジャンは自分のグラスをライナーのグラス、そしてあなたのグラスへとカチャンと重ねた。
「夢じゃねぇよ。俺たちが必死で足掻いて辿り着いた、現実だ。……よし、邪魔が入ったのは解せねぇが、今夜は三人でとことん呑むか!」
「おう。ジャンの奢りならいくらでも付き合うぞ」
「誰が奢るって言ったよ!?」
賑やかな怒号と笑い声が、夜の部屋にいつまでも響いていた。
一口含んだワインの芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、ふっと身体の力が抜けていく。静かな夜の空気と酒の心地よい酔いが、二人の間の空気をどこまでも優しく溶かしていた。
「いいよ、朝まで付き合う。……で? くだらない昔話って、例えばどんな話?」
「そぉーだな……訓練兵時代、お前が裏で肉を盗もうとしてサシャと揉めてたの、俺は知ってんだぞ」
「ちょっと、ジャン! なんで今その話出すのよ! あれはサシャが勝手に巻き込んできただけでしょ!」
なまえが慌てて反論すると、ジャンは「はいはい、そういうことにしてといてやるよ」と意地悪く笑い、ワイングラスを傾けた。二人で顔を見合わせて吹き出した、その時——。
コンコン、とドアがノックされ、返事をする間もなくガチャリと扉が開いた。
「おいジャン、部屋からやけに楽しそうな声が聞こえると思ったら……なんだ、なまえもいたのか」
入ってきたのは、手酌用の酒瓶を片手に持ったライナーだった。急な来客に、ジャンはあからさまに嫌そうな顔をして眉をひそめる。
「……ライナー。お前、ノックしてすぐ開けるなよ。せっかくなまえとふたりでいい雰囲気で呑んでたってのに」
「いい雰囲気? 悪かったな、お前たちの甘い時間に水を差したみたいで。だが俺も寂しかったんだよ。……ほら、座るぞ」
「断る隙すら与えねぇのかよ……」
ライナーはどこ吹く風で空いている椅子を引き、当然のような顔でドスンと腰掛けた。ジャンは呆れつつも、棚からもうひとつのグラスを取り出してライナーの前に置く。
「ライナーも呑むの?ちょうどジャンが昔の恥ずかしい話をしてたところなの」
なまえがそう声をかけると、ライナーはニヤリと口元を緩めた。
「恥ずかしい話? ジャンの訓練兵時代のポエムの話なら、俺が一番詳しいぞ」
「おいライナー!! 余計なこと喋るな! お前こそ、昔俺たちの前で熱弁ふるってた黒歴史曝露してやろうか!?」
「やめてくれジャン、その話は俺の胸を刺す……」
一瞬で情けない顔になったライナーに、なまえとジャンはたまらず大笑いした。
ライナーが自分の持ってきた酒を三人のグラスに注ぎ足す。澄んだ琥珀色の液体が満ちていく。
「……まあでもさ」
ライナーがグラスを掲げ、少しだけ真面目な顔で二人を見つめた。
「こうしてお前らと、ただのくだらない話で笑いながら酒を呑める日が来るなんてな。あの頃の俺たちに言っても、絶対信じないだろうな」
「本当よね……いろいろあったけど、今こうしていられるのが、なんだか夢みたい」
なまえが胸の内に広がる温かさを口にすると、ジャンは自分のグラスをライナーのグラス、そしてあなたのグラスへとカチャンと重ねた。
「夢じゃねぇよ。俺たちが必死で足掻いて辿り着いた、現実だ。……よし、邪魔が入ったのは解せねぇが、今夜は三人でとことん呑むか!」
「おう。ジャンの奢りならいくらでも付き合うぞ」
「誰が奢るって言ったよ!?」
賑やかな怒号と笑い声が、夜の部屋にいつまでも響いていた。
