第四章
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――――――
ここは紗己の実家の客間。
今土方は、座卓を囲んで紗己親子と団らんの時を共にしている。
元々、父娘仲は良好なのだろう。久しぶりの対面とあって、二人は楽しそうに話し込んでいる。
「それにしても、よく帰ってきたねェ。道中の疲れは出てないかい、紗己?」
「ええ、平気よ。列車の中じゃほとんど寝てたんだから。ねえ、副長さん?」
「ん? あ、ああ、そうだな・・・」
湯呑み片手に、軽く相槌を打った。
土方は出された茶で喉を潤しつつ、口元に宛がった湯呑みで表情を隠し、親子の様子を盗み見る。
これが仲の良い親子ってもんなのか・・・・・・。胸中で呟いた。
これまでの自分が知る世界には無かった光景に、少し気後れしてしまう自分に気付く。
時代の流れもあるのだろうが、この父娘の関係性を見る限り、この家庭では身分といったものはあまり重要視されていないようだ。
(都会ではないとは言え、武家じゃなければそんなもんか)
思いながら、隣で楽しげに笑う紗己を見やる。
父親の前でだけ見せる『娘』の表情は、実年齢よりも幼く感じて、また彼女の新たな一面を知ったようで土方はなんだか嬉しくなった。
しかし穏やかな心はすぐに、重たい暗雲に覆われる。
ほんと、読めねェんだよな・・・・・・。見た目通りただただ穏やかな人物にも思えるが、時折見せるあの威圧感・・・どう接していいかいまいちわかんねェ・・・・・・。
土方は、向かい側に座る彼女の父親に視線を移した。
身長は自分とそう変わらない、なかなかの長身だ。
若い頃はもっと違ったのか、年相応の肉が背中や肩に付いていて、それがかえって大柄に見せている。
鳶色の着物を身にまとい微笑んでいる様は、商人というよりは教養人のようだ。
年齢を考えると若白髪か、ロマンスグレーが上品さを醸し出している。
紗己とは顔はあんまり似てねェか。だが、雰囲気はやっぱり親子だな。二人して和みオーラ出っ放しじゃねーか。
笑顔が絶えない父娘に、何故そうまでにこやかにいられるのかと疑問にすら思う。
その視線が強すぎたのか、紗己の父親は腕を組みながら笑顔で土方の方を向いた。
「いやいやァ、それにしてもテレビで見るより男前ですねェ。都会に住む人は、皆こうもシュッとしてるのかい、紗己?」
眉を寄せている表情が、土方を知性的に見せたのだろうか。
紗己の父親は展示品を見定める目付きで土方を見つめ、「私もこうなりたいねェ」と笑っている。
「父さんったら。都会に住んだら、誰もがシュッとするってわけじゃないわよ。副長さんは元々シュッとしてるんですよね、副長さん?」
父親の言葉につられて笑いながら、真意について土方に訊ねてきた。
しかし訊ねられた土方はというと、親子の間で交わされている掴めない会話に、頭を悩ませているようだ。
おいっ! シュッてなんだよ、シュッて!! 何そんな擬音語で会話が成り立ってんの!? 何これ、ついていけてない俺の方が変なのか?
声に出したいところだが、紗己だけならいざ知らず、さすがに初対面の年長者に突っ込みを入れるわけにもいかず。言葉を濁すしかない。
「いや、まあ・・・田舎に居た頃から顔は変わってねえとは思うが・・・・・・」
「ほらあ、ね?」
土方の言葉に、紗己はくすくすと笑って父親を見た。
そんな娘の愛らしい仕草に、父親はそりゃァ残念だと膝を叩いている。
きっと、絶対、和やかなムード。
しかしそこに混じりきれない土方は、何かが心に引っ掛かり首を捻る。
(なんだ、何か気になるぞ? 大事な事を聞き流しちまってるような・・・あっ!!)
パッと目を見開いた。
そうだ、先程の発言が引っ掛かっていたのだと、時間を巻き戻すように親子の会話を思い返し始めた。
『父さんったら、都会に住んだら誰もがシュッとするってわけじゃないわよ』
違う、これよりまだ前だ。
『都会に住む人は、皆こうもシュッとしてるのかい』
こ、れ・・・の前だ! 前!!
『いやいやァ、それにしてもテレビで見るより男前ですねェ』
これ! これだ、これ!! 俺の面知ってたってのが気になったんだよ!
モヤモヤが解けてスッキリしたのはいいが、元より気になっていたのはテレビで自分を知られていたという事実だ。
たまたま見たことがある程度ならいいが・・・と土方は不安を胸に抱きながら、彼女の父に話し掛けた。
「あの、テレビで見るよりって・・・俺の、いや、真選組のニュースをたまたま見たんですか・・・・・・?」
「たまたま? いやいやァ、真選組の皆さんの活躍は、テレビや新聞でいつも拝見させてもらってますよ」
「いつもっ!?」
思わず声に出してしまい、慌てて口元を押さえる。
マジかよ!? マスコミの連中からは俺たちチンピラ扱いされてんのに・・・これ、イメージ悪すぎだろ!!
それでなくとも父親からしてみれば、娘を孕まされたというだけで十分印象が悪いに決まっている。
それに加えて、普段から何かとイメージの良くない真選組。
ここからどうイメージを挽回していけばよいものか、土方は頭を抱えたくなった。
ここは紗己の実家の客間。
今土方は、座卓を囲んで紗己親子と団らんの時を共にしている。
元々、父娘仲は良好なのだろう。久しぶりの対面とあって、二人は楽しそうに話し込んでいる。
「それにしても、よく帰ってきたねェ。道中の疲れは出てないかい、紗己?」
「ええ、平気よ。列車の中じゃほとんど寝てたんだから。ねえ、副長さん?」
「ん? あ、ああ、そうだな・・・」
湯呑み片手に、軽く相槌を打った。
土方は出された茶で喉を潤しつつ、口元に宛がった湯呑みで表情を隠し、親子の様子を盗み見る。
これが仲の良い親子ってもんなのか・・・・・・。胸中で呟いた。
これまでの自分が知る世界には無かった光景に、少し気後れしてしまう自分に気付く。
時代の流れもあるのだろうが、この父娘の関係性を見る限り、この家庭では身分といったものはあまり重要視されていないようだ。
(都会ではないとは言え、武家じゃなければそんなもんか)
思いながら、隣で楽しげに笑う紗己を見やる。
父親の前でだけ見せる『娘』の表情は、実年齢よりも幼く感じて、また彼女の新たな一面を知ったようで土方はなんだか嬉しくなった。
しかし穏やかな心はすぐに、重たい暗雲に覆われる。
ほんと、読めねェんだよな・・・・・・。見た目通りただただ穏やかな人物にも思えるが、時折見せるあの威圧感・・・どう接していいかいまいちわかんねェ・・・・・・。
土方は、向かい側に座る彼女の父親に視線を移した。
身長は自分とそう変わらない、なかなかの長身だ。
若い頃はもっと違ったのか、年相応の肉が背中や肩に付いていて、それがかえって大柄に見せている。
鳶色の着物を身にまとい微笑んでいる様は、商人というよりは教養人のようだ。
年齢を考えると若白髪か、ロマンスグレーが上品さを醸し出している。
紗己とは顔はあんまり似てねェか。だが、雰囲気はやっぱり親子だな。二人して和みオーラ出っ放しじゃねーか。
笑顔が絶えない父娘に、何故そうまでにこやかにいられるのかと疑問にすら思う。
その視線が強すぎたのか、紗己の父親は腕を組みながら笑顔で土方の方を向いた。
「いやいやァ、それにしてもテレビで見るより男前ですねェ。都会に住む人は、皆こうもシュッとしてるのかい、紗己?」
眉を寄せている表情が、土方を知性的に見せたのだろうか。
紗己の父親は展示品を見定める目付きで土方を見つめ、「私もこうなりたいねェ」と笑っている。
「父さんったら。都会に住んだら、誰もがシュッとするってわけじゃないわよ。副長さんは元々シュッとしてるんですよね、副長さん?」
父親の言葉につられて笑いながら、真意について土方に訊ねてきた。
しかし訊ねられた土方はというと、親子の間で交わされている掴めない会話に、頭を悩ませているようだ。
おいっ! シュッてなんだよ、シュッて!! 何そんな擬音語で会話が成り立ってんの!? 何これ、ついていけてない俺の方が変なのか?
声に出したいところだが、紗己だけならいざ知らず、さすがに初対面の年長者に突っ込みを入れるわけにもいかず。言葉を濁すしかない。
「いや、まあ・・・田舎に居た頃から顔は変わってねえとは思うが・・・・・・」
「ほらあ、ね?」
土方の言葉に、紗己はくすくすと笑って父親を見た。
そんな娘の愛らしい仕草に、父親はそりゃァ残念だと膝を叩いている。
きっと、絶対、和やかなムード。
しかしそこに混じりきれない土方は、何かが心に引っ掛かり首を捻る。
(なんだ、何か気になるぞ? 大事な事を聞き流しちまってるような・・・あっ!!)
パッと目を見開いた。
そうだ、先程の発言が引っ掛かっていたのだと、時間を巻き戻すように親子の会話を思い返し始めた。
『父さんったら、都会に住んだら誰もがシュッとするってわけじゃないわよ』
違う、これよりまだ前だ。
『都会に住む人は、皆こうもシュッとしてるのかい』
こ、れ・・・の前だ! 前!!
『いやいやァ、それにしてもテレビで見るより男前ですねェ』
これ! これだ、これ!! 俺の面知ってたってのが気になったんだよ!
モヤモヤが解けてスッキリしたのはいいが、元より気になっていたのはテレビで自分を知られていたという事実だ。
たまたま見たことがある程度ならいいが・・・と土方は不安を胸に抱きながら、彼女の父に話し掛けた。
「あの、テレビで見るよりって・・・俺の、いや、真選組のニュースをたまたま見たんですか・・・・・・?」
「たまたま? いやいやァ、真選組の皆さんの活躍は、テレビや新聞でいつも拝見させてもらってますよ」
「いつもっ!?」
思わず声に出してしまい、慌てて口元を押さえる。
マジかよ!? マスコミの連中からは俺たちチンピラ扱いされてんのに・・・これ、イメージ悪すぎだろ!!
それでなくとも父親からしてみれば、娘を孕まされたというだけで十分印象が悪いに決まっている。
それに加えて、普段から何かとイメージの良くない真選組。
ここからどうイメージを挽回していけばよいものか、土方は頭を抱えたくなった。