第二章
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夕焼けに染まった公園を、夕陽を背に受けた黒い影が走ってくる。草原を駆ける黒豹を彷彿とさせるその姿に、紗己は高鳴る鼓動を抑えようと自身の着物の胸元をギュッと掴んだ。
「副長、さん・・・・・・」
夕陽に照らされた艶めく唇が微かに動き、吐息混じりに愛しい男 を呼ぶ。
走る度に男の黒髪が揺れ、その毛先から飛び散る汗が、いかに彼が必死に紗己を捜し回っていたかを物語っていた。
「紗己っ!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、そのことに自分でも驚いた土方だが、今は恥ずかしがっている余裕すら無い。
肩を上下させながら紗己の前まで辿り着くと、軽く咳をしてから深く深く息を吐いた。
(やっと見つけた・・・・・・! )
ようやく捜し人を見つけることができ、胸を苛んでいた不安は鳴りを潜め、土方は心の底から安堵した。
だが、それを彼女に伝えようにも、二人のそばには銀時がいる。
紗己に伸ばしかけた手を自身の頭に持っていくと、土方は少し苛立った仕草で黒髪をガシガシと掻き乱し語調を強めた。
「・・・テメーは・・・なんでいつもいつも紗己と一緒にいんだよ!万事屋っ」
怒鳴りながら紗己の左肩を掴むと、力加減をしながら後ろに追いやりつつ、自身は半歩前へ出た。
一方の銀時は、一瞬眉をぴくりと動かしたものの、普段とそう変わらない表情を保っている。とは言え、内心は腹を立てているのだが。
悩んでいた紗己を親切心から保護していたのに、こんな扱いを受けるなんて。本来なら食って掛かりたい気分だ。
しかしいつものようにそうしてしまっては、紗己の決心が無駄になってしまうと、彼なりに我慢していたのだ。
苛立ちを露わにする土方を前に、銀時は肘を掻きながら気怠げに嘆息した。
「あー面倒くせえ。何お前、俺に文句言うためにわざわざ髪の毛なびかせてここまで来たの? 何それ、俺への当て付け?」
「テメーの腐れ天パのことなんざ知ったことかっ! それより何でテメーがここに・・・」
「あ、あのっ!」
土方によって背後に押しやられていた紗己が、恐らく今日一番の大きな声を出した。それに驚いた土方が、言いかけた言葉を飲み込んで後ろを振り返る。
「っ、紗己・・・・・・?」
その双眸からは普段の鋭さなどすっかり消えており、何だか不安気に揺れているように思えて、そんな彼を見たのは初めてだと紗己はぼんやりと思った。
そのせいで、何と言おうとしていたのかすっかり忘れてしまった。
「あ、あの・・・私・・・あれ、なんだっけ・・・・・・」
「・・・なんだっけって、何だよ・・・・・・」
二人して首を傾げながら見つめ合う。その姿は非常に滑稽で、また遠回りをしているのかと銀時はやれやれと肩を落とした。
「あのさァ、俺もう行っていい? どうせ今帰るとこだったんだし、迎えも来たから俺はお役御免ってことで」
「おいっ、ちょっと待っ・・・」
「銀さん!」
土方の制止の声を遮り、紗己は背中を向けた銀時の名を呼んだ。その声に立ち止まりはするも、銀時は振り返らない。
それでも紗己は伝えたいのだ。何度伝えても足りない程の、感謝の気持ちを。
「銀さん! あの・・・ほんとに、ありがとうございました!!」
「いいって、そんな大層なことしてねーし」
「そんな・・・あっ! そういえば、仕事の依頼料・・・」
仕事として話し相手になってほしいと依頼したことを、今になって思い出した。勿論、最初に依頼した時に、きちんと依頼料は払うつもりでいたのだが。
すると銀時は背中を向けたまま、
「あー、それいいわ。代わりにそこのニコチン中毒にツケとくからさ」
軽い調子で言った。
その答えに要領の得ない紗己が言葉を返せずにいると、銀時は首だけくるりと振り返ってニヤッと笑った。
「お前の笑った顔でチャラにしてやるよ」
依頼料が紗己の笑顔だとして、結局紗己を本当の笑顔に出来るのは土方だけなのだ。
ツケが溜まらないでくれればいいが。そんな思いを胸に、銀時は来た時よりも軽やかな気分で歩き出した。
事の流れを把握出来ず、土方が訝しげな表情で見つめる中、柔らかいオレンジに髪を染めて銀時は去っていく。
その後ろ姿に、紗己は口中でありがとうと小さく呟いた。
「副長、さん・・・・・・」
夕陽に照らされた艶めく唇が微かに動き、吐息混じりに愛しい
走る度に男の黒髪が揺れ、その毛先から飛び散る汗が、いかに彼が必死に紗己を捜し回っていたかを物語っていた。
「紗己っ!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、そのことに自分でも驚いた土方だが、今は恥ずかしがっている余裕すら無い。
肩を上下させながら紗己の前まで辿り着くと、軽く咳をしてから深く深く息を吐いた。
(やっと見つけた・・・・・・! )
ようやく捜し人を見つけることができ、胸を苛んでいた不安は鳴りを潜め、土方は心の底から安堵した。
だが、それを彼女に伝えようにも、二人のそばには銀時がいる。
紗己に伸ばしかけた手を自身の頭に持っていくと、土方は少し苛立った仕草で黒髪をガシガシと掻き乱し語調を強めた。
「・・・テメーは・・・なんでいつもいつも紗己と一緒にいんだよ!万事屋っ」
怒鳴りながら紗己の左肩を掴むと、力加減をしながら後ろに追いやりつつ、自身は半歩前へ出た。
一方の銀時は、一瞬眉をぴくりと動かしたものの、普段とそう変わらない表情を保っている。とは言え、内心は腹を立てているのだが。
悩んでいた紗己を親切心から保護していたのに、こんな扱いを受けるなんて。本来なら食って掛かりたい気分だ。
しかしいつものようにそうしてしまっては、紗己の決心が無駄になってしまうと、彼なりに我慢していたのだ。
苛立ちを露わにする土方を前に、銀時は肘を掻きながら気怠げに嘆息した。
「あー面倒くせえ。何お前、俺に文句言うためにわざわざ髪の毛なびかせてここまで来たの? 何それ、俺への当て付け?」
「テメーの腐れ天パのことなんざ知ったことかっ! それより何でテメーがここに・・・」
「あ、あのっ!」
土方によって背後に押しやられていた紗己が、恐らく今日一番の大きな声を出した。それに驚いた土方が、言いかけた言葉を飲み込んで後ろを振り返る。
「っ、紗己・・・・・・?」
その双眸からは普段の鋭さなどすっかり消えており、何だか不安気に揺れているように思えて、そんな彼を見たのは初めてだと紗己はぼんやりと思った。
そのせいで、何と言おうとしていたのかすっかり忘れてしまった。
「あ、あの・・・私・・・あれ、なんだっけ・・・・・・」
「・・・なんだっけって、何だよ・・・・・・」
二人して首を傾げながら見つめ合う。その姿は非常に滑稽で、また遠回りをしているのかと銀時はやれやれと肩を落とした。
「あのさァ、俺もう行っていい? どうせ今帰るとこだったんだし、迎えも来たから俺はお役御免ってことで」
「おいっ、ちょっと待っ・・・」
「銀さん!」
土方の制止の声を遮り、紗己は背中を向けた銀時の名を呼んだ。その声に立ち止まりはするも、銀時は振り返らない。
それでも紗己は伝えたいのだ。何度伝えても足りない程の、感謝の気持ちを。
「銀さん! あの・・・ほんとに、ありがとうございました!!」
「いいって、そんな大層なことしてねーし」
「そんな・・・あっ! そういえば、仕事の依頼料・・・」
仕事として話し相手になってほしいと依頼したことを、今になって思い出した。勿論、最初に依頼した時に、きちんと依頼料は払うつもりでいたのだが。
すると銀時は背中を向けたまま、
「あー、それいいわ。代わりにそこのニコチン中毒にツケとくからさ」
軽い調子で言った。
その答えに要領の得ない紗己が言葉を返せずにいると、銀時は首だけくるりと振り返ってニヤッと笑った。
「お前の笑った顔でチャラにしてやるよ」
依頼料が紗己の笑顔だとして、結局紗己を本当の笑顔に出来るのは土方だけなのだ。
ツケが溜まらないでくれればいいが。そんな思いを胸に、銀時は来た時よりも軽やかな気分で歩き出した。
事の流れを把握出来ず、土方が訝しげな表情で見つめる中、柔らかいオレンジに髪を染めて銀時は去っていく。
その後ろ姿に、紗己は口中でありがとうと小さく呟いた。