第二章
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ようやく普段通りの笑みを取り戻した紗己に、銀時は安心したように小さく笑う。
「少しは落ち着いたみてーだな」
「はい、ありがとうございます。銀さん・・・私、帰ります」
穏やかな眼差しで夕陽を見つめる紗己は、スゥッと息を吸うと、はっきりとした口調でそう告げた。
「おお」
腕を頭の後ろで組み短く答えると、夕陽に染め上げられた紗己の頬を、斜め後ろからジッと見つめてみる。
(もしも妹とかいたら、こんな気持ちになんのかねー)
ふと思う。どうしてか守ってやりたくなる危なっかしさ。だがそれを受け止めてくれる者が他にいると思うと、寂しい反面大きな安心感を得る。
ここで寂しさが上回らないのは、紗己の気持ちがあまりにも真っ直ぐに土方に向けられているからだろう。
そしてその真っ直ぐな気持ちは、時にとんでもない方向へ真っ直ぐ向かおうとすることに、銀時はすぐ気付くことになる。
銀時の励ましの甲斐あって、いつもの調子を取り戻した紗己は、スッキリとした面持ちで話し出す。
「副長さんがどうしたいのか、ちゃんと聞かなきゃ駄目ですよね。何も言わせないまま、私が勝手にいなくなったら、副長さんはものすごく後味悪いですもんね」
「・・・・・・」
呆れて言葉も出てこないとは、まさにこのことだ。自身の発言に頷きながら一人納得している紗己の姿にも、何故だか哀れみすら覚えてしまう。
銀時は緩慢な動作で足を組み直すと、聞こえよがしに溜息をついた。
「・・・あれか、お前は一歩進んで一歩半下がるタイプか?」
「一歩・・・え? 一歩半ですか?」
「だーからさァ! なんで自分の気持ちがないがしろにされてんだよ・・・ったく。紗己さあ、お前別にアイツの母親じゃねーんだから、お前はもっと自分の気持ちをぶちまけていいんだって」
「ぶちまけて・・・・・・」
口にしてから小首を傾げた。母性本能でもなんでもなく、元来こういう性格なのだ。
自分の感情に鈍感なところも彼女らしさと言えるのだが、時には自分の気持ちを優先することも必要だろう。
そう考えた銀時は、頬をぽりぽりと掻きながら紗己を見つめた。真意が伝わるようにと願いながら。
「そういう性格なんだろうけどさー。普段控え目な女のたまのワガママってのに、男は案外弱いもんなんだぜ?」
特にあーゆーお堅いヤツほどな。口端を上げて見せると、紗己は少し眉を寄せて微笑んだ。
――――――
「さ、そろそろ行くか。一人じゃ帰りづれーだろ、また倒れられても困るしな」
言いながら腰を上げた銀時に合わせて、紗己もゆっくりと立ち上がった。
尻の部分を軽く払うと、触れた自分の体温をやけに高く感じた。
思った以上に冷えている指先。公園に長居するには、季節は行き過ぎていたらしい。
紗己は冷えきってしまった指を、軽く曲げ伸ばししてから銀時を見やった。
「本当にありがとうございます、銀さん。私、一人じゃどうしようもなくて・・・・・・。昨日もだけど、助けてもらってばっかりですね、私」
「あー・・・まあ、気にすんな。どうせ乗りかかった船だ、最後まで見届けてやるさ。だからさァ、お前もちゃんと言いたいこと言えよ」
「うーん・・・頑張ってはみます」
「やれるだけやってみな。んで何か困ったことあったら、遠慮しねーでいつでも訪ねて来いよ。仕事なんて水クセーこと言わねェでさ」
少しだけ照れたように、片方のつま先で地面をトントンと蹴った。そんな銀時の姿に、紗己は肩をすくめ目を細める。
とても和やかな空気が流れる中、何度目かの礼を受けた銀時は、ベンチの上のボストンバックに手を伸ばした。
「そんじゃ、行くとしよーぜ。早くしねえと、今頃あの野郎・・・」
「・・・銀さん?」
突然言葉を切った銀時を、どうかしたのかと紗己が不思議そうに見つめる中、銀時は掴みかけた革の持ち手からスッと手を放した。
「必死になって・・・血眼で捜してるよ、お前のこと」
気怠げな表情の奥に僅かな驚きを滲ませ、やけに真剣な声で銀時が言う。
まるで見てきたかのような発言がなんだか可笑しくて、
「銀さんが言うと、それ、本当みたいに聞こえちゃうっ」
思わず吹き出してしまった紗己に、銀時はいつになく真面目な表情で静かに答えた。
「いや、なんつーか・・・見たっつーか、見えてるからね」
「・・・?」
自分の頭の向こう側に視線を向けられ、紗己がくるりと後ろを振り返る。
「少しは落ち着いたみてーだな」
「はい、ありがとうございます。銀さん・・・私、帰ります」
穏やかな眼差しで夕陽を見つめる紗己は、スゥッと息を吸うと、はっきりとした口調でそう告げた。
「おお」
腕を頭の後ろで組み短く答えると、夕陽に染め上げられた紗己の頬を、斜め後ろからジッと見つめてみる。
(もしも妹とかいたら、こんな気持ちになんのかねー)
ふと思う。どうしてか守ってやりたくなる危なっかしさ。だがそれを受け止めてくれる者が他にいると思うと、寂しい反面大きな安心感を得る。
ここで寂しさが上回らないのは、紗己の気持ちがあまりにも真っ直ぐに土方に向けられているからだろう。
そしてその真っ直ぐな気持ちは、時にとんでもない方向へ真っ直ぐ向かおうとすることに、銀時はすぐ気付くことになる。
銀時の励ましの甲斐あって、いつもの調子を取り戻した紗己は、スッキリとした面持ちで話し出す。
「副長さんがどうしたいのか、ちゃんと聞かなきゃ駄目ですよね。何も言わせないまま、私が勝手にいなくなったら、副長さんはものすごく後味悪いですもんね」
「・・・・・・」
呆れて言葉も出てこないとは、まさにこのことだ。自身の発言に頷きながら一人納得している紗己の姿にも、何故だか哀れみすら覚えてしまう。
銀時は緩慢な動作で足を組み直すと、聞こえよがしに溜息をついた。
「・・・あれか、お前は一歩進んで一歩半下がるタイプか?」
「一歩・・・え? 一歩半ですか?」
「だーからさァ! なんで自分の気持ちがないがしろにされてんだよ・・・ったく。紗己さあ、お前別にアイツの母親じゃねーんだから、お前はもっと自分の気持ちをぶちまけていいんだって」
「ぶちまけて・・・・・・」
口にしてから小首を傾げた。母性本能でもなんでもなく、元来こういう性格なのだ。
自分の感情に鈍感なところも彼女らしさと言えるのだが、時には自分の気持ちを優先することも必要だろう。
そう考えた銀時は、頬をぽりぽりと掻きながら紗己を見つめた。真意が伝わるようにと願いながら。
「そういう性格なんだろうけどさー。普段控え目な女のたまのワガママってのに、男は案外弱いもんなんだぜ?」
特にあーゆーお堅いヤツほどな。口端を上げて見せると、紗己は少し眉を寄せて微笑んだ。
――――――
「さ、そろそろ行くか。一人じゃ帰りづれーだろ、また倒れられても困るしな」
言いながら腰を上げた銀時に合わせて、紗己もゆっくりと立ち上がった。
尻の部分を軽く払うと、触れた自分の体温をやけに高く感じた。
思った以上に冷えている指先。公園に長居するには、季節は行き過ぎていたらしい。
紗己は冷えきってしまった指を、軽く曲げ伸ばししてから銀時を見やった。
「本当にありがとうございます、銀さん。私、一人じゃどうしようもなくて・・・・・・。昨日もだけど、助けてもらってばっかりですね、私」
「あー・・・まあ、気にすんな。どうせ乗りかかった船だ、最後まで見届けてやるさ。だからさァ、お前もちゃんと言いたいこと言えよ」
「うーん・・・頑張ってはみます」
「やれるだけやってみな。んで何か困ったことあったら、遠慮しねーでいつでも訪ねて来いよ。仕事なんて水クセーこと言わねェでさ」
少しだけ照れたように、片方のつま先で地面をトントンと蹴った。そんな銀時の姿に、紗己は肩をすくめ目を細める。
とても和やかな空気が流れる中、何度目かの礼を受けた銀時は、ベンチの上のボストンバックに手を伸ばした。
「そんじゃ、行くとしよーぜ。早くしねえと、今頃あの野郎・・・」
「・・・銀さん?」
突然言葉を切った銀時を、どうかしたのかと紗己が不思議そうに見つめる中、銀時は掴みかけた革の持ち手からスッと手を放した。
「必死になって・・・血眼で捜してるよ、お前のこと」
気怠げな表情の奥に僅かな驚きを滲ませ、やけに真剣な声で銀時が言う。
まるで見てきたかのような発言がなんだか可笑しくて、
「銀さんが言うと、それ、本当みたいに聞こえちゃうっ」
思わず吹き出してしまった紗己に、銀時はいつになく真面目な表情で静かに答えた。
「いや、なんつーか・・・見たっつーか、見えてるからね」
「・・・?」
自分の頭の向こう側に視線を向けられ、紗己がくるりと後ろを振り返る。