第二章
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予想もしなかった紗己の涙と言葉。銀時は真剣な面持ちで彼女を見据えた。
「お前・・・それ誰に聞いたの」
「・・・沖田さんから、聞きました」
ズッと鼻をすすって着物の袖で涙を拭うと、紗己は赤く充血した両眼で空を仰いだ。
隣に座る銀時は、その横顔を眺めて「そっか・・・」と小さく呟く。
(沖田の野郎、あれだけ紗己を巻き込むなっつったのに・・・・・・!)
内心腹立たしさはある。しかし、沖田がどうしてこうまでも紗己と土方の邪魔をしたかったのか、ようやく理由が分かった。
だが、今問題なのは沖田ではなく紗己だ。
「あのさ、紗己・・・「私・・・っ」
銀時の言葉を遮り、紗己は空を見上げたまま震える声で言う。
「私・・・その人の身代わりだって・・・っ、その人、の命日にっ、副長さ・・・酔っぱらってて・・・だから・・・っ」
途中、嗚咽が混じってもうそれ以上は話せない。
銀時は眉根を寄せて嘆息すると、しゃくり上げながら声を殺して泣いている紗己の、震える肩を力強く抱き寄せた。
突然身体が右方向に引っ張られ、一瞬息を呑んだ紗己。だが、触れられた肩の力強い温もりに何かを思い出したのか、両手で自身の顔を覆うと、銀時の硬い胸に側頭部を当てた状態でまた泣き続けた。
そんな彼女の頭に銀時は顎を軽く乗せると、移ろいやすい秋の空を眺めながら、
「もういいから、もういい・・・」
静かにそう言った。
――――――
運転席の窓も助手席の窓も全開にして、流れる町並みを睨み付ける。
土方は今、紗己を捜すためにパトカーを走らせている。交通ルールを守りながら人捜しをしているため、一瞬の気も抜けず、その鋭い双眸は常よりもはるかに気迫を帯びていた。
手当たり次第江戸の町中を走るつもりでいるけれど、未だ紗己の姿は見つからない。普段町に出るとしたら彼女のテリトリーがどこなのか、屯所外の紗己を全く把握していない自分に気付き、土方は苛立ちを隠せない。
「ちっ・・・」
信号がぎりぎりで赤に変わり、思わず舌打ちが漏れる。
紗己の行方が分からないことは土方にとっては緊急事態だが、警察として緊急事態だと扱うことは出来ないので、パトランプを点けて進入するわけにもいかないのだ。
運転席でじたばたしたところでどうにもならないことは分かっているが、一分一秒が惜しい。早く信号が変わらないかと、貧乏ゆすりは激しさを増す。
(どこにいるんだ、紗己! )
「頼む、無事でいてくれ・・・・・・!」
駆け出したい気持ちを抑えるように絞り出された言葉。ハンドルを握る手にも力が入る。
信号が青に変わった。土方は祈るような気持ちで、アクセルを踏み込んだ。
――――――
また通りを行く人々の中に紗己の姿を捜しながら走行していると。
――ピ・・・ガ、ガーッ
無線特有のノイズ音が車内に響いた。土方は運転しながら無線機のスピーカーマイクを左手で取ると、すぐさまスイッチ入れた。聞こえてきたのは山崎の声だった。
『副長、聞こえますか!』
「ああ聞こえてる。どうした、何かあったか」
『局長からの指令で、全隊に呼びかけたんです! そしたら巡回中の五番隊が、一時間ほど前に公園で紗己ちゃんらしき人物を見かけたって・・・』
「なにっ! ほんとかそれ!!」
『ちょ、副長! 話してる最中に通話切り替えないでくださ・・・』
「うるせえ! どこの公園か早く言えっ!!」
逸る気持ちを抑えきれずに、マイクの切り替えボタンをめいっぱい押した。
――ベキッ
「あ? ・・・ああ゛ーっ!!?」
親指に響く破壊音。スピーカーマイクを握る自身の左手に目をやると、無情にも切り替えボタンは凹んで割れてしまっている。どうやら親指にとんでもなく力を入れ過ぎていたらしい。
こんな時に何やってんだ俺は! 自分自身にも腹が立つが、
「・・・ちゃちィモン載せやがってくそっ!」
スピーカーマイクを助手席に叩きつけ、ひとまず八つ当たりは終了。
だが、今は何より紗己の情報を得るのが先だ。気を取り直して車を路肩に寄せて停車すると、土方は急いで胸ポケットから携帯電話を取り出した。
とりあえず、文明の利器に感謝だ。
「お前・・・それ誰に聞いたの」
「・・・沖田さんから、聞きました」
ズッと鼻をすすって着物の袖で涙を拭うと、紗己は赤く充血した両眼で空を仰いだ。
隣に座る銀時は、その横顔を眺めて「そっか・・・」と小さく呟く。
(沖田の野郎、あれだけ紗己を巻き込むなっつったのに・・・・・・!)
内心腹立たしさはある。しかし、沖田がどうしてこうまでも紗己と土方の邪魔をしたかったのか、ようやく理由が分かった。
だが、今問題なのは沖田ではなく紗己だ。
「あのさ、紗己・・・「私・・・っ」
銀時の言葉を遮り、紗己は空を見上げたまま震える声で言う。
「私・・・その人の身代わりだって・・・っ、その人、の命日にっ、副長さ・・・酔っぱらってて・・・だから・・・っ」
途中、嗚咽が混じってもうそれ以上は話せない。
銀時は眉根を寄せて嘆息すると、しゃくり上げながら声を殺して泣いている紗己の、震える肩を力強く抱き寄せた。
突然身体が右方向に引っ張られ、一瞬息を呑んだ紗己。だが、触れられた肩の力強い温もりに何かを思い出したのか、両手で自身の顔を覆うと、銀時の硬い胸に側頭部を当てた状態でまた泣き続けた。
そんな彼女の頭に銀時は顎を軽く乗せると、移ろいやすい秋の空を眺めながら、
「もういいから、もういい・・・」
静かにそう言った。
――――――
運転席の窓も助手席の窓も全開にして、流れる町並みを睨み付ける。
土方は今、紗己を捜すためにパトカーを走らせている。交通ルールを守りながら人捜しをしているため、一瞬の気も抜けず、その鋭い双眸は常よりもはるかに気迫を帯びていた。
手当たり次第江戸の町中を走るつもりでいるけれど、未だ紗己の姿は見つからない。普段町に出るとしたら彼女のテリトリーがどこなのか、屯所外の紗己を全く把握していない自分に気付き、土方は苛立ちを隠せない。
「ちっ・・・」
信号がぎりぎりで赤に変わり、思わず舌打ちが漏れる。
紗己の行方が分からないことは土方にとっては緊急事態だが、警察として緊急事態だと扱うことは出来ないので、パトランプを点けて進入するわけにもいかないのだ。
運転席でじたばたしたところでどうにもならないことは分かっているが、一分一秒が惜しい。早く信号が変わらないかと、貧乏ゆすりは激しさを増す。
(どこにいるんだ、紗己! )
「頼む、無事でいてくれ・・・・・・!」
駆け出したい気持ちを抑えるように絞り出された言葉。ハンドルを握る手にも力が入る。
信号が青に変わった。土方は祈るような気持ちで、アクセルを踏み込んだ。
――――――
また通りを行く人々の中に紗己の姿を捜しながら走行していると。
――ピ・・・ガ、ガーッ
無線特有のノイズ音が車内に響いた。土方は運転しながら無線機のスピーカーマイクを左手で取ると、すぐさまスイッチ入れた。聞こえてきたのは山崎の声だった。
『副長、聞こえますか!』
「ああ聞こえてる。どうした、何かあったか」
『局長からの指令で、全隊に呼びかけたんです! そしたら巡回中の五番隊が、一時間ほど前に公園で紗己ちゃんらしき人物を見かけたって・・・』
「なにっ! ほんとかそれ!!」
『ちょ、副長! 話してる最中に通話切り替えないでくださ・・・』
「うるせえ! どこの公園か早く言えっ!!」
逸る気持ちを抑えきれずに、マイクの切り替えボタンをめいっぱい押した。
――ベキッ
「あ? ・・・ああ゛ーっ!!?」
親指に響く破壊音。スピーカーマイクを握る自身の左手に目をやると、無情にも切り替えボタンは凹んで割れてしまっている。どうやら親指にとんでもなく力を入れ過ぎていたらしい。
こんな時に何やってんだ俺は! 自分自身にも腹が立つが、
「・・・ちゃちィモン載せやがってくそっ!」
スピーカーマイクを助手席に叩きつけ、ひとまず八つ当たりは終了。
だが、今は何より紗己の情報を得るのが先だ。気を取り直して車を路肩に寄せて停車すると、土方は急いで胸ポケットから携帯電話を取り出した。
とりあえず、文明の利器に感謝だ。