序章
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――――――
「う゛・・・痛っつー・・・・・・」
こめかみを押さえながら上体を起こす。激しい頭痛と容赦なく射し込む朝日に、土方はその端正な顔を歪めた。
(やっぱり夢じゃなかったか・・・・・・)
下半身に感じる緩い倦怠感に、盛大に嘆息する。
治まらない頭痛に辟易するも、仕事は待ってはくれない。土方は重たい身体を引きずって、顔を洗いに行こうと障子戸を開けた。
「・・・なんだ?」
視界の端に何かを捉えて立ち止まる。ちょうど部屋を出てすぐの所に、盆に載せられた水差しと、小さな薬袋が置かれてあった。腰を屈めて手に取ると、それは今の土方には天の救い。頭痛薬だ。
「紗己か・・・・・・」
数時間前に見た泣きそうな作り笑顔を思い出し、胸の奥がチクリと痛む。
(ったく、人の心配ばっかりしやがって)
土方は盆を片手に部屋に戻ると、畳に腰を下ろして粉薬の袋を開けた。そのまま中身を口に含むと、水差しの水をコップに移し入れ、薬も胸のつかえも一緒に喉奥へと流し込んだ。
――――――
なんでいねーんだ! イライラしながら膝を揺する。
土方は眉間に皺を寄せ、腕組みをしながら今朝からの出来事を脳内で振り返る。
朝、食事を取りに食堂に行ったが、そこに紗己の姿は無かった。
身体が辛くて休んでいるのだろうか。そう思い当番表に目を向けると、彼女の札はしっかりと掛けられてあった。
当日勤務する際、自身で掛ける事になっている名札。それがあるということは、紗己が今日働いているという証拠だ。
なんとか謝罪をしなければと周囲を気にしつつ彼女を捜すも、一向に見つけられない。というよりも、どうにも逃げられている気がする。
食堂、洗濯場、中庭――少し前まで確かに誰かが居た様子なのだが、土方が足を踏み入れるとそこには誰も見当たらない。
ならば他の隊士や女中に彼女の居所を訊けばいいのだが、今日まで名前すらあやふやだったこともあり、なんとなくだが訊きづらい。
仕事中だ。もう時間も押し迫っているし、いつまでも屯所内を彷徨いている訳にもいかない。仕方なく土方は、憮然とした表情のまま朝礼へと向かった。
――――――
「土方さん、何かあったんですかィ?」
「ああ? 何かって何だよ、何もねーよ」
「そうですか。やけに貧乏揺すりが激しいから、気になっちまってね」
あっさりとした言い方に似合わない、鋭い視線を向けてくる沖田の発した言葉に、土方は知らぬ間に動いていた足を止めた。
(こいつは・・・なんでいつもいつも目敏いんだ!)
しかし、ここで狼狽えては怪しまれる――と考える時点で相当後ろ暗いのだが、実際それだけの事を仕出かしている土方は、変に勘ぐられないようにとポーカーフェイスを気取ると、一日のスケジュールを淡々と読み上げた。
「う゛・・・痛っつー・・・・・・」
こめかみを押さえながら上体を起こす。激しい頭痛と容赦なく射し込む朝日に、土方はその端正な顔を歪めた。
(やっぱり夢じゃなかったか・・・・・・)
下半身に感じる緩い倦怠感に、盛大に嘆息する。
治まらない頭痛に辟易するも、仕事は待ってはくれない。土方は重たい身体を引きずって、顔を洗いに行こうと障子戸を開けた。
「・・・なんだ?」
視界の端に何かを捉えて立ち止まる。ちょうど部屋を出てすぐの所に、盆に載せられた水差しと、小さな薬袋が置かれてあった。腰を屈めて手に取ると、それは今の土方には天の救い。頭痛薬だ。
「紗己か・・・・・・」
数時間前に見た泣きそうな作り笑顔を思い出し、胸の奥がチクリと痛む。
(ったく、人の心配ばっかりしやがって)
土方は盆を片手に部屋に戻ると、畳に腰を下ろして粉薬の袋を開けた。そのまま中身を口に含むと、水差しの水をコップに移し入れ、薬も胸のつかえも一緒に喉奥へと流し込んだ。
――――――
なんでいねーんだ! イライラしながら膝を揺する。
土方は眉間に皺を寄せ、腕組みをしながら今朝からの出来事を脳内で振り返る。
朝、食事を取りに食堂に行ったが、そこに紗己の姿は無かった。
身体が辛くて休んでいるのだろうか。そう思い当番表に目を向けると、彼女の札はしっかりと掛けられてあった。
当日勤務する際、自身で掛ける事になっている名札。それがあるということは、紗己が今日働いているという証拠だ。
なんとか謝罪をしなければと周囲を気にしつつ彼女を捜すも、一向に見つけられない。というよりも、どうにも逃げられている気がする。
食堂、洗濯場、中庭――少し前まで確かに誰かが居た様子なのだが、土方が足を踏み入れるとそこには誰も見当たらない。
ならば他の隊士や女中に彼女の居所を訊けばいいのだが、今日まで名前すらあやふやだったこともあり、なんとなくだが訊きづらい。
仕事中だ。もう時間も押し迫っているし、いつまでも屯所内を彷徨いている訳にもいかない。仕方なく土方は、憮然とした表情のまま朝礼へと向かった。
――――――
「土方さん、何かあったんですかィ?」
「ああ? 何かって何だよ、何もねーよ」
「そうですか。やけに貧乏揺すりが激しいから、気になっちまってね」
あっさりとした言い方に似合わない、鋭い視線を向けてくる沖田の発した言葉に、土方は知らぬ間に動いていた足を止めた。
(こいつは・・・なんでいつもいつも目敏いんだ!)
しかし、ここで狼狽えては怪しまれる――と考える時点で相当後ろ暗いのだが、実際それだけの事を仕出かしている土方は、変に勘ぐられないようにとポーカーフェイスを気取ると、一日のスケジュールを淡々と読み上げた。