序章③
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紗己が銀時に何かされそうになっていたわけではないと分かった事は良かったが、それとは別に今のこの現状を受け入れるのには勇気がいる。
血相を変えて飛び込んできて、刀にまで手を伸ばしたというのに、まさかこんなオチが待っているとは。
銀時にもだが、紗己には自分がここまで必死になってしまった事を土方は絶対に知られたくない。
しかしこうなってしまうと、何をどう言っても言い訳に聞こえそうで、何と切り出せばよいか土方は内心焦りながら考えていた。
そんな中、銀時がいつもの憎まれ口を叩く。
「おいおい土方くーん。短気は損気だよ、そんなんじゃあ紗己に嫌われちまうぜ」
ソファの背に身体を凭れさせながら、ニヤニヤとした笑いを浮かべている。
すると、その様に土方は、
「やかましいっ! 大体なんでお前コイツとこんな所にいんだよ!!」
銀時の発言が助け舟となり、すぐにいつもの調子を取り戻した。
一方、二人の様子を土方の背後から見ている紗己は、どうすればこの場が落ち着くのかと頭を悩ませていた。
土方の心情までは量れないものの、自分が銀時とここで会っていた事に対して、彼がこれほどまでに激高しているということは分かっている。今しがた、土方本人がそう言っていたのを聞いたからだ。
ならば、ここで銀時と会っていたのは、決して示し合わせたものではないのだと、真実を告げようと意を決して口を開いた。
「ふ、副長さん! その・・・」
「俺が誘ったんだよ」
紗己の言葉を遮るように、銀時がいやにはっきりとした口調で言った。
困惑に満ちた表情の紗己と一瞬目が合ったが、頭をガリガリと掻きながら話を続ける。
「俺が誘ったんだよ。偶然すぐそこで会ってな、ちょうどパチンコで勝ったから奢ってやるって言ったんだよ。他意はねーから安心しな」
やる気の無さそうな双眸で土方を一瞥すると、気怠げにのそっと立ち上がった。
「なっ、なんで俺が安心しなきゃなんねェんだよっ」
眉をしかめつつも頬を染める土方に、銀時もまた思いっきり顔をしかめる。
「うわ、何このめんどくせー反応。あーもう付き合いきれねえ、俺ァ帰らせてもらうぜ。あ、ここ払っといてくれな」
本当にそう思ったのだろう、うっとうしそうな表情で二人の前を横切ると、銀時は首を鳴らしながら店を出て行ってしまった。
カランカラン・・・と出入口の扉に付けられているベルの音が止んだ。
呆然と銀時を見送ってしまっていた土方だったが、ふと我に返った途端に怒りが再燃する。
「なんなんだアイツは・・・って、ああっ!? あのヤローほんとに払わねェで行きやがった!!」
先程まで銀時と紗己が使っていたテーブルの上には、伝票がそのまま残されている。
土方は心底悔しそうに舌打ちをすると、それを睨みつけながら掴み取った。
――――――
「なんでェ旦那、もう出てきちまったんですか。しかも一人じゃねーか」
「・・・やっぱりテメーの差し金か、沖田」
銀時が店を出ると、通りの向かい側の建物の隙間から、沖田が近付いてきた。
「もうちょっとうまくやってくれると踏んでたんですがねィ。あの鈍感娘じゃ、さすがの旦那も落としきれず、か」
いつも通りの飄々とした沖田の姿に、銀時は眉をひそめて言った。
「別に俺は端からアイツを落とす気なんてサラサラねーよ。つーかさあ、お前一体何がしたいの」
「何って、土方のヤローの邪魔したいだけでさァ」
「・・・・・・」
あからさまに嫌な顔を見せる銀時を無視して、沖田は言葉を続ける。
「まあ見てな、あの野郎は短気だから、紗己を問い詰めて泣かせるかも知れねェ」
そうなってほしいという願望か、沖田は腕を組んだままファミレスの入り口をじっと見張っている。
その姿に、銀時はもう何も言うまいと口を閉ざした。
――――――
沖田が今まさに自分の不幸を願っているとは知らない土方が、憮然とした表情で会計をするためにレジ前に立っている。
忌々しそうに伝票を持つ土方に気兼ねして、「私が払います!」と紗己が言ってきたのだが、銀時の飲食分を彼女に払わせるのもそれはそれで不愉快なので、「いい」とだけ言うと、やや強引に紗己を背後に押しやったのだ。
胸ポケットから財布を取り出すと、土方は不愉快そうに金を支払う。
くそ、紗己のは全然構わねーが、なんで俺があの馬鹿のために・・・・・・! いい年した男がいちごパフェ3つも食ってんじゃねえよっ!!
苛立つものの、それをまた口にして紗己に小さい男だと思われたくないので黙っている。
レジ係の娘から釣りを受け取ると、
「あ、忘れてた」
土方は何かを思い出したように、ズボンのポケットに手を差し込んだ。
そこから取り出されたのは、くしゃくしゃになってしまっている数枚の紙。それはこのファミレスに配布しようとしていた手配書だった。
怒りに任せてここに来た際、無意識にズボンのポケットに突っ込んでいたのだ。
「これ、見えるところに貼っとけ」
言いながら、カウンターに手配書を置く。
店内に掲示しなければいけない物がそんなくしゃくしゃの状態になっていることに、レジ係の娘が少し困った顔を見せるのだが、早くここから立ち去りたい土方は、
「裏からアイロンでもかけりゃマシになる」と言い放ってさっさと扉に向かって歩き出した。
血相を変えて飛び込んできて、刀にまで手を伸ばしたというのに、まさかこんなオチが待っているとは。
銀時にもだが、紗己には自分がここまで必死になってしまった事を土方は絶対に知られたくない。
しかしこうなってしまうと、何をどう言っても言い訳に聞こえそうで、何と切り出せばよいか土方は内心焦りながら考えていた。
そんな中、銀時がいつもの憎まれ口を叩く。
「おいおい土方くーん。短気は損気だよ、そんなんじゃあ紗己に嫌われちまうぜ」
ソファの背に身体を凭れさせながら、ニヤニヤとした笑いを浮かべている。
すると、その様に土方は、
「やかましいっ! 大体なんでお前コイツとこんな所にいんだよ!!」
銀時の発言が助け舟となり、すぐにいつもの調子を取り戻した。
一方、二人の様子を土方の背後から見ている紗己は、どうすればこの場が落ち着くのかと頭を悩ませていた。
土方の心情までは量れないものの、自分が銀時とここで会っていた事に対して、彼がこれほどまでに激高しているということは分かっている。今しがた、土方本人がそう言っていたのを聞いたからだ。
ならば、ここで銀時と会っていたのは、決して示し合わせたものではないのだと、真実を告げようと意を決して口を開いた。
「ふ、副長さん! その・・・」
「俺が誘ったんだよ」
紗己の言葉を遮るように、銀時がいやにはっきりとした口調で言った。
困惑に満ちた表情の紗己と一瞬目が合ったが、頭をガリガリと掻きながら話を続ける。
「俺が誘ったんだよ。偶然すぐそこで会ってな、ちょうどパチンコで勝ったから奢ってやるって言ったんだよ。他意はねーから安心しな」
やる気の無さそうな双眸で土方を一瞥すると、気怠げにのそっと立ち上がった。
「なっ、なんで俺が安心しなきゃなんねェんだよっ」
眉をしかめつつも頬を染める土方に、銀時もまた思いっきり顔をしかめる。
「うわ、何このめんどくせー反応。あーもう付き合いきれねえ、俺ァ帰らせてもらうぜ。あ、ここ払っといてくれな」
本当にそう思ったのだろう、うっとうしそうな表情で二人の前を横切ると、銀時は首を鳴らしながら店を出て行ってしまった。
カランカラン・・・と出入口の扉に付けられているベルの音が止んだ。
呆然と銀時を見送ってしまっていた土方だったが、ふと我に返った途端に怒りが再燃する。
「なんなんだアイツは・・・って、ああっ!? あのヤローほんとに払わねェで行きやがった!!」
先程まで銀時と紗己が使っていたテーブルの上には、伝票がそのまま残されている。
土方は心底悔しそうに舌打ちをすると、それを睨みつけながら掴み取った。
――――――
「なんでェ旦那、もう出てきちまったんですか。しかも一人じゃねーか」
「・・・やっぱりテメーの差し金か、沖田」
銀時が店を出ると、通りの向かい側の建物の隙間から、沖田が近付いてきた。
「もうちょっとうまくやってくれると踏んでたんですがねィ。あの鈍感娘じゃ、さすがの旦那も落としきれず、か」
いつも通りの飄々とした沖田の姿に、銀時は眉をひそめて言った。
「別に俺は端からアイツを落とす気なんてサラサラねーよ。つーかさあ、お前一体何がしたいの」
「何って、土方のヤローの邪魔したいだけでさァ」
「・・・・・・」
あからさまに嫌な顔を見せる銀時を無視して、沖田は言葉を続ける。
「まあ見てな、あの野郎は短気だから、紗己を問い詰めて泣かせるかも知れねェ」
そうなってほしいという願望か、沖田は腕を組んだままファミレスの入り口をじっと見張っている。
その姿に、銀時はもう何も言うまいと口を閉ざした。
――――――
沖田が今まさに自分の不幸を願っているとは知らない土方が、憮然とした表情で会計をするためにレジ前に立っている。
忌々しそうに伝票を持つ土方に気兼ねして、「私が払います!」と紗己が言ってきたのだが、銀時の飲食分を彼女に払わせるのもそれはそれで不愉快なので、「いい」とだけ言うと、やや強引に紗己を背後に押しやったのだ。
胸ポケットから財布を取り出すと、土方は不愉快そうに金を支払う。
くそ、紗己のは全然構わねーが、なんで俺があの馬鹿のために・・・・・・! いい年した男がいちごパフェ3つも食ってんじゃねえよっ!!
苛立つものの、それをまた口にして紗己に小さい男だと思われたくないので黙っている。
レジ係の娘から釣りを受け取ると、
「あ、忘れてた」
土方は何かを思い出したように、ズボンのポケットに手を差し込んだ。
そこから取り出されたのは、くしゃくしゃになってしまっている数枚の紙。それはこのファミレスに配布しようとしていた手配書だった。
怒りに任せてここに来た際、無意識にズボンのポケットに突っ込んでいたのだ。
「これ、見えるところに貼っとけ」
言いながら、カウンターに手配書を置く。
店内に掲示しなければいけない物がそんなくしゃくしゃの状態になっていることに、レジ係の娘が少し困った顔を見せるのだが、早くここから立ち去りたい土方は、
「裏からアイロンでもかけりゃマシになる」と言い放ってさっさと扉に向かって歩き出した。