序章③
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――――――
沖田の案内のもと、共に町へと足を運んだ土方の目に飛び込んできたのは、手配書の束を手にした数人の隊士達の姿だった。皆、隊長の帰還を待っていたらしい。
「遅いじゃないですかー沖田隊長・・・あれ? 副長が来てくれたんですか!」
「ありがとうございます副長!」
どうやら本当に人手が足りなかったようで、一番隊の隊士達は助っ人土方の参上に喜び顔だ。
「悪ィな、遅くなっちまって。それじゃあ土方さん、これアンタの分」
待たせていた部下達に声を掛けると、沖田は近くにいた隊士から受け取った手配書の束を土方に渡した。
自分が受け取った分と、他の隊士達が手にしている分とをざっと見て、思っていた以上に枚数が多いことに土方は訝しげに首を捻ると、すぐ近くにいた隊士に話し掛けた。
「結構枚数あるじゃねーか。なんだ、多く刷りすぎたか?」
「いえ。沖田隊長が配布は午後からでいいって言うもんですから、まだ全然配り終わってないんです」
しかも、見回り中に引ったくりを捕まえたために、取調べに人員が取られてしまい、人手が不足したのだと言う。
土方は「そうか」とだけ返事をすると、一番隊の指揮を執っている沖田を一瞥しながら吐息した。
(なんだ総悟のヤツ、珍しく要領悪ィじゃねーか)
いつもなら、やる気無さそうに見えても手際よく仕事をこなしていく男だと、土方は認識している。
手配書の配布なら、巡回中に同時にしてしまえばいいものを。そう思いはするが、いちいち揚げ足をとるような事は言いたくないので、黙っておくことにした。
事務仕事を後回しにしてまで駆り出されたという事実は、もうすっかり脳内から消え去っているらしい。案外お人好しだ。
「それじゃァ、お前らはあっちの通りを回ってくれ。さ、土方さん。俺たちも行きましょう」
隊の指揮も執り終え、両手をズボンのポケットに入れて歩き出した沖田は、早くしろと言わんばかりに土方に向けて顎をしゃくった。
その様子に若干イラっとしたものの、土方は持っていた紙束を軽く筒状にして、首辺りをポンポンと叩きながら歩き出す。
「おい総悟」
「なんですかィ」
「俺ァ、仕事には優先順位をつけるべきだとは思ってるが、どうやら目先の敵を斬ることにばっか神経使ってたらしい」
どうも、手配書の配布を『そんなの』扱いしたと言われたのを気にして、僅かながら考えを改めたらしい。
そんな律儀すぎる男の発言に、沖田はいつもの淡々とした口調で「そうですかィ」とだけ返事した。
(馬鹿な上に、ほんとウゼェ野郎だ)
隣を歩く男に気付かれないように、胸中で毒づいて。
――――――
「土方さん、あとはあそこの一軒だけでさァ」
そう言って立ち止まった沖田の視線の先には、一軒のファミリーレストラン。大量だった手配書も残り僅かになっていた。
「意外と早く終わったな。つーかこれ、別に俺が来なくても良かったんじゃねえのか?」
「何言ってんですかィ、アンタが忙しいだろうと思って、他の奴らにこっちの分負担させたんですぜ」
やたらと恩着せがましく言ってみせる。これでは、土方が何のために助っ人に来たのか。他の隊士達の文句が聞こえてきそうだ。
まあ、仕事が早くに終わるのは忙しい自分にとっては好都合なので、これ以上何か言って余計な仕事を増やしたくない土方は、早く終わらせてしまおうとファミレスへと歩き始めた。
「それじゃ、さっさと済ませるぞ・・・おい、何してんだ総悟」
先程まで隣に居た男が、何故か突然通りの端へと移動して、物陰に身を潜ませている。
「おい総悟! 何やってんだテメー、早く行・・・」
「あれ、土方さん。ちょっとこっちに来てくだせェ」
「ああ?」
面倒そうに舌打ちをして、それでも一応沖田のもとへと歩いていく。
土方がそばに来ると、沖田は彼の腕を小突いて愉しそうに口端を上げた。
「なかなか面白いモン見つけましたぜ、ほらあそこ」
自分の見ている方向に指を指し、そちらに顔を向けさせる。
邪魔臭そうに一度前髪を掻き上げて、沖田の指差す方に向けた土方の鋭い双眸に、よく見知った人物が映った。
沖田の案内のもと、共に町へと足を運んだ土方の目に飛び込んできたのは、手配書の束を手にした数人の隊士達の姿だった。皆、隊長の帰還を待っていたらしい。
「遅いじゃないですかー沖田隊長・・・あれ? 副長が来てくれたんですか!」
「ありがとうございます副長!」
どうやら本当に人手が足りなかったようで、一番隊の隊士達は助っ人土方の参上に喜び顔だ。
「悪ィな、遅くなっちまって。それじゃあ土方さん、これアンタの分」
待たせていた部下達に声を掛けると、沖田は近くにいた隊士から受け取った手配書の束を土方に渡した。
自分が受け取った分と、他の隊士達が手にしている分とをざっと見て、思っていた以上に枚数が多いことに土方は訝しげに首を捻ると、すぐ近くにいた隊士に話し掛けた。
「結構枚数あるじゃねーか。なんだ、多く刷りすぎたか?」
「いえ。沖田隊長が配布は午後からでいいって言うもんですから、まだ全然配り終わってないんです」
しかも、見回り中に引ったくりを捕まえたために、取調べに人員が取られてしまい、人手が不足したのだと言う。
土方は「そうか」とだけ返事をすると、一番隊の指揮を執っている沖田を一瞥しながら吐息した。
(なんだ総悟のヤツ、珍しく要領悪ィじゃねーか)
いつもなら、やる気無さそうに見えても手際よく仕事をこなしていく男だと、土方は認識している。
手配書の配布なら、巡回中に同時にしてしまえばいいものを。そう思いはするが、いちいち揚げ足をとるような事は言いたくないので、黙っておくことにした。
事務仕事を後回しにしてまで駆り出されたという事実は、もうすっかり脳内から消え去っているらしい。案外お人好しだ。
「それじゃァ、お前らはあっちの通りを回ってくれ。さ、土方さん。俺たちも行きましょう」
隊の指揮も執り終え、両手をズボンのポケットに入れて歩き出した沖田は、早くしろと言わんばかりに土方に向けて顎をしゃくった。
その様子に若干イラっとしたものの、土方は持っていた紙束を軽く筒状にして、首辺りをポンポンと叩きながら歩き出す。
「おい総悟」
「なんですかィ」
「俺ァ、仕事には優先順位をつけるべきだとは思ってるが、どうやら目先の敵を斬ることにばっか神経使ってたらしい」
どうも、手配書の配布を『そんなの』扱いしたと言われたのを気にして、僅かながら考えを改めたらしい。
そんな律儀すぎる男の発言に、沖田はいつもの淡々とした口調で「そうですかィ」とだけ返事した。
(馬鹿な上に、ほんとウゼェ野郎だ)
隣を歩く男に気付かれないように、胸中で毒づいて。
――――――
「土方さん、あとはあそこの一軒だけでさァ」
そう言って立ち止まった沖田の視線の先には、一軒のファミリーレストラン。大量だった手配書も残り僅かになっていた。
「意外と早く終わったな。つーかこれ、別に俺が来なくても良かったんじゃねえのか?」
「何言ってんですかィ、アンタが忙しいだろうと思って、他の奴らにこっちの分負担させたんですぜ」
やたらと恩着せがましく言ってみせる。これでは、土方が何のために助っ人に来たのか。他の隊士達の文句が聞こえてきそうだ。
まあ、仕事が早くに終わるのは忙しい自分にとっては好都合なので、これ以上何か言って余計な仕事を増やしたくない土方は、早く終わらせてしまおうとファミレスへと歩き始めた。
「それじゃ、さっさと済ませるぞ・・・おい、何してんだ総悟」
先程まで隣に居た男が、何故か突然通りの端へと移動して、物陰に身を潜ませている。
「おい総悟! 何やってんだテメー、早く行・・・」
「あれ、土方さん。ちょっとこっちに来てくだせェ」
「ああ?」
面倒そうに舌打ちをして、それでも一応沖田のもとへと歩いていく。
土方がそばに来ると、沖田は彼の腕を小突いて愉しそうに口端を上げた。
「なかなか面白いモン見つけましたぜ、ほらあそこ」
自分の見ている方向に指を指し、そちらに顔を向けさせる。
邪魔臭そうに一度前髪を掻き上げて、沖田の指差す方に向けた土方の鋭い双眸に、よく見知った人物が映った。