序章③
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――――――
「おーい、誰かいるかィ」
何度か声を掛けたが、誰も出てくる気配が無い。留守なのかとも思ったが、玄関引き戸に手を掛けると鍵がかかっていなかった。
「不用心だねェ・・・」
呟きながら中に入ると、奥から怠そうな足音が近付いてくる。
「・・・なんだァ、何の用だよ」
ボサボサの銀髪をわしゃわしゃと掻きながら、分かりやすく眠たそうな顔をした男が姿を現した。
「ああ、旦那。居たんですかィ」
「ああ? 居るよ、居たよ寝てたんだよ・・・ったく。お前らお巡りさんは本当に暇そうだね、おい」
靴を脱いで上がってくる沖田を一瞥すると、銀時はやる気のない表情で首をポキポキと鳴らしながら、また部屋へと戻っていく。
「こんな真っ昼間から寝てるアンタも、十分暇人じゃねェですか旦那」
「うっせーよ。今日は新八も神楽もいねーから、昼のひと時を満喫してたんだよ」
気怠げに言いながらソファにドカッと腰を下ろすと、大きな欠伸を一つした。銀時の後に続いていた沖田も、向かい合うように反対側のソファに座る。
「そりゃァ良かった。うるせーガキが居なくて、こっちも助かったぜ」
「・・・何が? ああ! テメーまさか面倒な問題でも持ち込む気じゃあねえだろうな?」
半開きの目で睨み付けると、沖田は珍しくにこやかな笑顔を可愛らしい造作の顔に貼り付けて話を切り出した。
「アンタに会いたがってる女をファミレスに待たせてんでさァ。だから旦那、ちょっくら行ってきてくれやせんか」
「はぁ? 女ァ?」
片眉を上げて頓狂な声を出す銀時に、沖田はファミレスで紗己が待っていることを告げた。本当は沖田が待たせているのだが。
いまいち話が読めない銀時は、怪訝な表情でソファの背もたれから身体を起こし、向かいに座る沖田に昨日の出来事について訊ねる。
「おい、何で紗己が俺のこと待ってんだよ。つーかさあ、昨日大丈夫だったのアイツ?」
「大丈夫かどうかは、今から会って確かめなせェ」
そう言うと沖田は一枚の紙を胸ポケットから取り出し、銀時の目の前にスッと差し出した。
「なんだこれ・・・ファミレスの無料券じゃねーか」
「それで好きなだけ糖分摂取して、ついでに紗己に・・・ああ違った。糖分の方がついででしたか」
沖田の含みのある言葉とやけに嘘くさい笑顔が引っ掛かり、そこに見え隠れする企てに銀時は警戒心を露わにする。
「・・・おい沖田、テメー何企んでやがる」
「企むなんて、人聞き悪ィこと言わねーでください。俺はただ、アンタに紗己の相談に乗ってもらおうと思いましてね」
「相談って、何の相談だよ」
顔色一つ変えず飄々とのたまう沖田の言葉に、銀時は律儀に反応を示す。
「そりゃ、本人に聞いてくればいいじゃないですか。あれくらいの年頃の娘なら、悩みの一つや二つありまさァ。何せ土方のヤローには、アンタに会うなって言われてんだからね」
「ああ? なんであのマヨネーズ馬鹿にそんな事言われなきゃなんねーんだよ!」
「あの男はそーいう身勝手な野郎でさァ。なんなら旦那、アンタが紗己を落としてやりゃァいいじゃねーですか」
うら若い娘を落とすなんざ赤子の手を捻るより簡単でしょう、と後に付け足す。
随分と遠慮のない沖田の発言に、銀時は思いきり顔をしかめた。
「おい。テメーが何企んでんのかは知らねーが、紗己をダシに使うな」
「俺は別に、旦那の方が似合いだと思っただけでさァ」
悪びれもせずに言うと、沖田はすくっと立ち上がり一歩二歩と玄関へと歩き出した。
「ちょっと待ておい・・・」
「あんまり女を待たすもんじゃねーぜ、旦那。早く行ってあげなせェ」
銀時の言葉をわざと遮るように被せて言う。
沖田はそのまま足を止めずスタスタと玄関へと向かうと、さっと靴を履いて出て行ってしまった。微妙な表情を浮かべた銀時を残したまま。
「おーい、誰かいるかィ」
何度か声を掛けたが、誰も出てくる気配が無い。留守なのかとも思ったが、玄関引き戸に手を掛けると鍵がかかっていなかった。
「不用心だねェ・・・」
呟きながら中に入ると、奥から怠そうな足音が近付いてくる。
「・・・なんだァ、何の用だよ」
ボサボサの銀髪をわしゃわしゃと掻きながら、分かりやすく眠たそうな顔をした男が姿を現した。
「ああ、旦那。居たんですかィ」
「ああ? 居るよ、居たよ寝てたんだよ・・・ったく。お前らお巡りさんは本当に暇そうだね、おい」
靴を脱いで上がってくる沖田を一瞥すると、銀時はやる気のない表情で首をポキポキと鳴らしながら、また部屋へと戻っていく。
「こんな真っ昼間から寝てるアンタも、十分暇人じゃねェですか旦那」
「うっせーよ。今日は新八も神楽もいねーから、昼のひと時を満喫してたんだよ」
気怠げに言いながらソファにドカッと腰を下ろすと、大きな欠伸を一つした。銀時の後に続いていた沖田も、向かい合うように反対側のソファに座る。
「そりゃァ良かった。うるせーガキが居なくて、こっちも助かったぜ」
「・・・何が? ああ! テメーまさか面倒な問題でも持ち込む気じゃあねえだろうな?」
半開きの目で睨み付けると、沖田は珍しくにこやかな笑顔を可愛らしい造作の顔に貼り付けて話を切り出した。
「アンタに会いたがってる女をファミレスに待たせてんでさァ。だから旦那、ちょっくら行ってきてくれやせんか」
「はぁ? 女ァ?」
片眉を上げて頓狂な声を出す銀時に、沖田はファミレスで紗己が待っていることを告げた。本当は沖田が待たせているのだが。
いまいち話が読めない銀時は、怪訝な表情でソファの背もたれから身体を起こし、向かいに座る沖田に昨日の出来事について訊ねる。
「おい、何で紗己が俺のこと待ってんだよ。つーかさあ、昨日大丈夫だったのアイツ?」
「大丈夫かどうかは、今から会って確かめなせェ」
そう言うと沖田は一枚の紙を胸ポケットから取り出し、銀時の目の前にスッと差し出した。
「なんだこれ・・・ファミレスの無料券じゃねーか」
「それで好きなだけ糖分摂取して、ついでに紗己に・・・ああ違った。糖分の方がついででしたか」
沖田の含みのある言葉とやけに嘘くさい笑顔が引っ掛かり、そこに見え隠れする企てに銀時は警戒心を露わにする。
「・・・おい沖田、テメー何企んでやがる」
「企むなんて、人聞き悪ィこと言わねーでください。俺はただ、アンタに紗己の相談に乗ってもらおうと思いましてね」
「相談って、何の相談だよ」
顔色一つ変えず飄々とのたまう沖田の言葉に、銀時は律儀に反応を示す。
「そりゃ、本人に聞いてくればいいじゃないですか。あれくらいの年頃の娘なら、悩みの一つや二つありまさァ。何せ土方のヤローには、アンタに会うなって言われてんだからね」
「ああ? なんであのマヨネーズ馬鹿にそんな事言われなきゃなんねーんだよ!」
「あの男はそーいう身勝手な野郎でさァ。なんなら旦那、アンタが紗己を落としてやりゃァいいじゃねーですか」
うら若い娘を落とすなんざ赤子の手を捻るより簡単でしょう、と後に付け足す。
随分と遠慮のない沖田の発言に、銀時は思いきり顔をしかめた。
「おい。テメーが何企んでんのかは知らねーが、紗己をダシに使うな」
「俺は別に、旦那の方が似合いだと思っただけでさァ」
悪びれもせずに言うと、沖田はすくっと立ち上がり一歩二歩と玄関へと歩き出した。
「ちょっと待ておい・・・」
「あんまり女を待たすもんじゃねーぜ、旦那。早く行ってあげなせェ」
銀時の言葉をわざと遮るように被せて言う。
沖田はそのまま足を止めずスタスタと玄関へと向かうと、さっと靴を履いて出て行ってしまった。微妙な表情を浮かべた銀時を残したまま。