序章②
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――――――
「何なんですか副長、もおー。いきなり車で迎えに来いって・・・おまけに来たら来たですぐに屯所に戻れって。あのねえ、俺にも一応仕事がある・・・」
「うっせえ! 男がぐちぐち言ってんじゃねーよっ」
運転をしている山崎に一喝すると、土方はまた後部座席に身体を沈めた。
相変わらず横暴な男だと思いながら、山崎はバックミラーで土方の顔色を窺いつつ話を切り出す。
「ところで副長、何しに屯所に戻るんですか? まだ仕事途中でしょ、二人とも」
ハンドルを握ったまま、助手席に座る沖田の顔も横目でチラリと見る。すると後方から、焦りを含んだ声が返ってきた。
「それはっ・・・あれ、あれだちょっと確認にだな・・・」
「確認だ? そりゃ一体何の確認なんでィ」
「仕事に決まってんだろ仕事だ仕事っ」
わざわざ後ろを覗き込んでくる沖田に焦りつつも、土方は仕事を連呼して平静を装う。
部下二人の訝しげな視線を何とか誤魔化そうと、ポケットから煙草を取り出し素早く火を点け、落ち着きなく吸い始めた。
実のところ、土方は紗己が屯所に戻っているのか気になって仕方がない。
無事に帰っているのさえ分かればまた安心して仕事に戻れる、その思いで屯所へと舞い戻ってきたのだ。公私混同この上ないが、本人はほぼ無自覚なのでどうしようもない。
それに実際確認したい案件もあるにはあったので、それを大義名分にしているようだ。
手元の煙草も残り短い。もうじき屯所に着く頃だ。これで終いだと最後に一吸いして、土方は指に挟んだそれを携帯灰皿へと押し込んだ。
そわそわしてしまう気持ちを落ち着かせようと、膝の上で骨ばった指が不規則なリズムを刻む。それを数分繰り返していると、運転席の山崎が声を掛けてきた。
「ほら、着きましたよ副長。ってアレ? あそこにいるのって紗己ちゃんと・・・」
(・・・んん?紗己?)
即座に反応して車から飛び出ると、土方の鋭い双眸に映ったのは、屯所の門のほど近くに立つ紗己と一人の男の姿。
「な、何でお前がここにいるんだ万事屋っ!」
「あー? なんだァ、ニコチン中毒じゃねーか」
本気で煩わしそうに、銀時は土方を一瞥した。
「答えになってねえ! 何でここに・・・ってゆーか紗己! お前何でこんな白髪天パと一緒にいんだよ!?」
頭のてっぺんから怒りが噴き出していそうな程に、語気が荒い。その様子を見て、紗己は困ったように銀時と土方、両者に視線を送る。
「何怒ってんのお前? あれ、もしかしてひょっとしたらひょっとしちゃったりする?」
「なっ・・・阿呆かテメーは!? くだらねーこと言ってんじゃねえっ!」
銀時の発言の意図するところがわかったのか、土方は顔を真っ赤にして反論した。薄闇の中であることが救いだ。
そこに、紗己がようやく口を開く。
「あの・・・お二人ともお知り合いだったんですね。もしかしてお友達でしたか?」
一瞬、場の空気が凍りついた。紗己の見事なまでの空気の読めなさに、傍観していた山崎は開いた口が塞がらない。
おいおい、そりゃマズイって紗己ちゃんっ!! 大体、これのどこをどう見て『友達』て言ってんの!? 君の目は節穴なのか!!?
一瞬の間を置いてから、
「「友達じゃねえっ!」」
静かな通りに響き渡るステレオサウンドに、紗己は驚きの表情を見せる。
気まずさ炸裂の空気の中、これ以上紗己に発言権を与えてはいけないと、山崎は勇気を振り絞って土方に近付いた。
「あ、あのぅ・・・副長? 仕事、いいんですか・・・・・・?」
「あ゛あ゛っ?」
「ひっ」
鬼の形相に睨まれ、瞬時に口を閉じる。すると二人のやりとりを見ていた銀時が、茶化すように言葉を投げた。
「いい身分だねー、仕事しないでもお金貰えちゃうんだから。お役人サマサマだねー、っとに」
「うっせーんだよっ! それよりテメー何でうちの女中と一緒にいるのかちゃんと答えろ!!」
「おいおい、なんでそんな事お前にいちいち答えなきゃなんねーわけ? 真選組の女中さんはプライベートまで監視されちゃうんですかー・・・っむぐ」
わざと大きな声を出す銀時の口を、山崎は慌てて塞ぎにいく。そしてやや後方に銀時を引っ張ると、土方に聞こえないように小さな声で耳打ちをした。
「ちょ・・・っ、頼みますよ旦那! どういうわけで紗己ちゃんと一緒にいるのかは知りませんが、今日のところはこのまま・・・ねっ!?」
「あー?」
一瞬嫌そうな顔をした銀時だったが、彼とて別に土方と関わりたいわけではない。
だが、言われたままに引くのはなんとなく腹が立つので、自らアクションを起こそうと紗己に話し掛けた。
「・・・あーあーめんどくせえ。なあ紗己、お前よくこんな所で働いてられんな・・・あ、金がいいのか?」
土方を無視して紗己の隣に行くと、手にしていた洗剤の入った箱を全て地面にそっと置いて、彼女の気を紛らそうとふざけて見せた。
「もう、銀さんったら。今日はどうもありがとうございました」
前方で怒気を発している土方に気付いていないのか、紗己は笑顔で銀時に礼を言う。
「じゃあ、またな」
「ええ、それじゃあまた」
軽く手を上げると、銀時はすぐに背中を向けて行ってしまった。
「何なんですか副長、もおー。いきなり車で迎えに来いって・・・おまけに来たら来たですぐに屯所に戻れって。あのねえ、俺にも一応仕事がある・・・」
「うっせえ! 男がぐちぐち言ってんじゃねーよっ」
運転をしている山崎に一喝すると、土方はまた後部座席に身体を沈めた。
相変わらず横暴な男だと思いながら、山崎はバックミラーで土方の顔色を窺いつつ話を切り出す。
「ところで副長、何しに屯所に戻るんですか? まだ仕事途中でしょ、二人とも」
ハンドルを握ったまま、助手席に座る沖田の顔も横目でチラリと見る。すると後方から、焦りを含んだ声が返ってきた。
「それはっ・・・あれ、あれだちょっと確認にだな・・・」
「確認だ? そりゃ一体何の確認なんでィ」
「仕事に決まってんだろ仕事だ仕事っ」
わざわざ後ろを覗き込んでくる沖田に焦りつつも、土方は仕事を連呼して平静を装う。
部下二人の訝しげな視線を何とか誤魔化そうと、ポケットから煙草を取り出し素早く火を点け、落ち着きなく吸い始めた。
実のところ、土方は紗己が屯所に戻っているのか気になって仕方がない。
無事に帰っているのさえ分かればまた安心して仕事に戻れる、その思いで屯所へと舞い戻ってきたのだ。公私混同この上ないが、本人はほぼ無自覚なのでどうしようもない。
それに実際確認したい案件もあるにはあったので、それを大義名分にしているようだ。
手元の煙草も残り短い。もうじき屯所に着く頃だ。これで終いだと最後に一吸いして、土方は指に挟んだそれを携帯灰皿へと押し込んだ。
そわそわしてしまう気持ちを落ち着かせようと、膝の上で骨ばった指が不規則なリズムを刻む。それを数分繰り返していると、運転席の山崎が声を掛けてきた。
「ほら、着きましたよ副長。ってアレ? あそこにいるのって紗己ちゃんと・・・」
(・・・んん?紗己?)
即座に反応して車から飛び出ると、土方の鋭い双眸に映ったのは、屯所の門のほど近くに立つ紗己と一人の男の姿。
「な、何でお前がここにいるんだ万事屋っ!」
「あー? なんだァ、ニコチン中毒じゃねーか」
本気で煩わしそうに、銀時は土方を一瞥した。
「答えになってねえ! 何でここに・・・ってゆーか紗己! お前何でこんな白髪天パと一緒にいんだよ!?」
頭のてっぺんから怒りが噴き出していそうな程に、語気が荒い。その様子を見て、紗己は困ったように銀時と土方、両者に視線を送る。
「何怒ってんのお前? あれ、もしかしてひょっとしたらひょっとしちゃったりする?」
「なっ・・・阿呆かテメーは!? くだらねーこと言ってんじゃねえっ!」
銀時の発言の意図するところがわかったのか、土方は顔を真っ赤にして反論した。薄闇の中であることが救いだ。
そこに、紗己がようやく口を開く。
「あの・・・お二人ともお知り合いだったんですね。もしかしてお友達でしたか?」
一瞬、場の空気が凍りついた。紗己の見事なまでの空気の読めなさに、傍観していた山崎は開いた口が塞がらない。
おいおい、そりゃマズイって紗己ちゃんっ!! 大体、これのどこをどう見て『友達』て言ってんの!? 君の目は節穴なのか!!?
一瞬の間を置いてから、
「「友達じゃねえっ!」」
静かな通りに響き渡るステレオサウンドに、紗己は驚きの表情を見せる。
気まずさ炸裂の空気の中、これ以上紗己に発言権を与えてはいけないと、山崎は勇気を振り絞って土方に近付いた。
「あ、あのぅ・・・副長? 仕事、いいんですか・・・・・・?」
「あ゛あ゛っ?」
「ひっ」
鬼の形相に睨まれ、瞬時に口を閉じる。すると二人のやりとりを見ていた銀時が、茶化すように言葉を投げた。
「いい身分だねー、仕事しないでもお金貰えちゃうんだから。お役人サマサマだねー、っとに」
「うっせーんだよっ! それよりテメー何でうちの女中と一緒にいるのかちゃんと答えろ!!」
「おいおい、なんでそんな事お前にいちいち答えなきゃなんねーわけ? 真選組の女中さんはプライベートまで監視されちゃうんですかー・・・っむぐ」
わざと大きな声を出す銀時の口を、山崎は慌てて塞ぎにいく。そしてやや後方に銀時を引っ張ると、土方に聞こえないように小さな声で耳打ちをした。
「ちょ・・・っ、頼みますよ旦那! どういうわけで紗己ちゃんと一緒にいるのかは知りませんが、今日のところはこのまま・・・ねっ!?」
「あー?」
一瞬嫌そうな顔をした銀時だったが、彼とて別に土方と関わりたいわけではない。
だが、言われたままに引くのはなんとなく腹が立つので、自らアクションを起こそうと紗己に話し掛けた。
「・・・あーあーめんどくせえ。なあ紗己、お前よくこんな所で働いてられんな・・・あ、金がいいのか?」
土方を無視して紗己の隣に行くと、手にしていた洗剤の入った箱を全て地面にそっと置いて、彼女の気を紛らそうとふざけて見せた。
「もう、銀さんったら。今日はどうもありがとうございました」
前方で怒気を発している土方に気付いていないのか、紗己は笑顔で銀時に礼を言う。
「じゃあ、またな」
「ええ、それじゃあまた」
軽く手を上げると、銀時はすぐに背中を向けて行ってしまった。