第七章
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「な・・・っ、何知った風な口利きやがって! お前にアイツの何がわか・・・」
言いながら、途中で言葉を切ってしまう。銀時の紗己擁護ともとれる発言に、土方は違和感を覚えずにはいられない。
ちょっと待てよ、今日のコイツ変じゃねェか? いつもならもっと腹立つことばっかり言ってくるのに、今日はいやに親切・・・いやいや違う! この男に限って、親切なんてあり得ねえ!!
自分の脳内に浮かび上がった考えを追い払うが如く、派手にかぶりを振る。そうすることで少しは気が紛れたのか、土方は真っ直ぐ前に向き直り銀時を睨み付けた。
「・・・おい。テメー何か知ってんだろ」
「何かって、なに」
具体性に欠ける土方の問いには、銀時のこの切り返しも当然だ。
だがそう切り返されたところで、土方自身、追求していることはあくまでも抽象的なニュアンスでしかない。それでは相手には到底伝わらないだろうに、すぐさま望む返答がないことに苛立ちを露わにする。
「知るか! それが何か分かんねーから訊いてんだろうがっ」
「んなもん俺にだって分かるかっ」
二人して、そう広くはない店内で怒鳴りあう。レジにいる店員が迷惑そうな顔で遠巻きに見ているのに、大人二人は気付きそうにない。
銀時の当然の反応に、それでも自分勝手に苛立っている土方だったが、さすがに言葉足らずだったことは自覚したらしい。これではいつまでたっても話が進まないと、質問内容に少しだけ色付けをしてみた。
「人の弱みに付け込んで揚げ足とってからかうのがテメーの仕事なんだろ、万事屋。それが今日に限って、えらく控え目じゃねーか。何か知ってて隠してんのか、それとも何か企んでんのか?」
ポケットから両手を取り出すと、その手を胸の前で組んで高圧的なポーズを取ってみせる。
一方の銀時は、これには心底呆れてしまったようで。ポリポリと頭を掻くと、盛大に嘆息した。
「ほんっと失礼な男だねー、誰も彼もが裏があるって決め付けんじゃねーよ・・・ったく。なんだってこんな男がいいんだか、俺にはさっぱりわかんねェ」
「ああ?」
最後に付け足された言葉の裏側に、引っ掛かりを覚える。それが紗己のことを言っているのは分かったし、これと同じようなことは以前にも言われたことがある。祝言の前日、公園で会った時だ。
その時も色々と思い悩むことがあったが、偶然現れた銀時は今と同じような態度だったと記憶している。
あの時は確か・・・ちょっと前に紗己と会ったって言ってやがったよな・・・・・・。
今にして思えば、紗己は相談を持ち掛けていたのかもしれない。そういえば結婚する前にも、アイツはこの男に悩み事を打ち明けていたか。過去の出来事を思い返せば、今と状況が似ているとも言える。
ならば今日も――。
「・・・ひょっとして、紗己から何か聞いてんのか」
顎を引いて目の前の男を見据える。その視線を受け銀時は、一瞬の間を見せた。どう答えるべきか躊躇ったのだろうか。
「いや、特に大したことは聞いてねーけど?」
「その言い方じゃ、いくらかは話をしたってことだな? おい、いつアイツと会った」
本気で隠そうと思えば、しらをきり通すことも十分に可能だった。だが心のどこかで、紗己の思いを代弁してやった方がいいのではと思っていたために、あっさりと裏をかかれてしまった。
知られてしまったのなら仕方が無いと、彼女と会ったことに関しては素直に白状してしまおうと銀時は質問に答える。
「今日の昼間、偶然な」
「・・・それ、どこでだ?」
「ああ? どこって・・・町でだけど」
「んなこたわかってんだよ! 町以外で会うなんて冗談じゃねーよ!! 俺は町のどこで会ったんだって訊いてんだっ」
もしどこか屋内で、人気の無いところで逢引していたら・・・なんて考えたくもない。そんな土方の思いが伝わったのだろう、銀時は少しニヤつきながら言葉を返す。
「まァなー、この町には男女がひっそりと人目を忍んで逢引するには、うってつけの場所が多いからねー」
「な・・・っ!? どういう意味だそれ!!」
「え? どういう意味かって? そりゃァお前、こんなところじゃ言うに憚られるような所?」
くだけた口調で言ってから、口笛まで吹いてみせる。するとその言葉を聞いた土方の表情が、みるみるうちに鬼の形相に変わり始めた。組んでいた腕も解き、彼の左手は刀の鍔に触れている。
しかし銀時は、そんな土方を目の前にしても落ち着き払ったままだ。
「ばーかお前、こんなところでんな物騒なモンに触れてんじゃねーよ。何信じちゃってんの? 冗談に決まってんだろうが。自分の女房が信じられねェの?」
そこまで言うのなら何も嘘をつかなくても良かったのだが、ついつい悪戯心を働かせてしまった銀時。怒りだす寸前の土方に嘘だったことを告げると、ついでとばかりに会ったのは町の広場だと告白する。
それを聞いた土方は、憮然とした表情ではあるものの、刀から手を下ろした。
「っ・・・馬鹿はテメーだろうが! くだらねェ嘘ついてんじゃねーよっ」
「はいはい悪かったですねー。まァ、こんな分かりやすい嘘を簡単に信じる方もどうかと思うけど?」
「やかましいわ! どうせならもっと笑える嘘にしやがれ!!」
「なんで俺が、わざわざお前を笑わさなきゃなんねーんだよ」
全くもって、その通りだと言うしかない。土方は銀時の言葉に悔しそうに舌打ちをすると、ラックに並べられた雑誌の表紙を指先で弾きながらぼやく。
言いながら、途中で言葉を切ってしまう。銀時の紗己擁護ともとれる発言に、土方は違和感を覚えずにはいられない。
ちょっと待てよ、今日のコイツ変じゃねェか? いつもならもっと腹立つことばっかり言ってくるのに、今日はいやに親切・・・いやいや違う! この男に限って、親切なんてあり得ねえ!!
自分の脳内に浮かび上がった考えを追い払うが如く、派手にかぶりを振る。そうすることで少しは気が紛れたのか、土方は真っ直ぐ前に向き直り銀時を睨み付けた。
「・・・おい。テメー何か知ってんだろ」
「何かって、なに」
具体性に欠ける土方の問いには、銀時のこの切り返しも当然だ。
だがそう切り返されたところで、土方自身、追求していることはあくまでも抽象的なニュアンスでしかない。それでは相手には到底伝わらないだろうに、すぐさま望む返答がないことに苛立ちを露わにする。
「知るか! それが何か分かんねーから訊いてんだろうがっ」
「んなもん俺にだって分かるかっ」
二人して、そう広くはない店内で怒鳴りあう。レジにいる店員が迷惑そうな顔で遠巻きに見ているのに、大人二人は気付きそうにない。
銀時の当然の反応に、それでも自分勝手に苛立っている土方だったが、さすがに言葉足らずだったことは自覚したらしい。これではいつまでたっても話が進まないと、質問内容に少しだけ色付けをしてみた。
「人の弱みに付け込んで揚げ足とってからかうのがテメーの仕事なんだろ、万事屋。それが今日に限って、えらく控え目じゃねーか。何か知ってて隠してんのか、それとも何か企んでんのか?」
ポケットから両手を取り出すと、その手を胸の前で組んで高圧的なポーズを取ってみせる。
一方の銀時は、これには心底呆れてしまったようで。ポリポリと頭を掻くと、盛大に嘆息した。
「ほんっと失礼な男だねー、誰も彼もが裏があるって決め付けんじゃねーよ・・・ったく。なんだってこんな男がいいんだか、俺にはさっぱりわかんねェ」
「ああ?」
最後に付け足された言葉の裏側に、引っ掛かりを覚える。それが紗己のことを言っているのは分かったし、これと同じようなことは以前にも言われたことがある。祝言の前日、公園で会った時だ。
その時も色々と思い悩むことがあったが、偶然現れた銀時は今と同じような態度だったと記憶している。
あの時は確か・・・ちょっと前に紗己と会ったって言ってやがったよな・・・・・・。
今にして思えば、紗己は相談を持ち掛けていたのかもしれない。そういえば結婚する前にも、アイツはこの男に悩み事を打ち明けていたか。過去の出来事を思い返せば、今と状況が似ているとも言える。
ならば今日も――。
「・・・ひょっとして、紗己から何か聞いてんのか」
顎を引いて目の前の男を見据える。その視線を受け銀時は、一瞬の間を見せた。どう答えるべきか躊躇ったのだろうか。
「いや、特に大したことは聞いてねーけど?」
「その言い方じゃ、いくらかは話をしたってことだな? おい、いつアイツと会った」
本気で隠そうと思えば、しらをきり通すことも十分に可能だった。だが心のどこかで、紗己の思いを代弁してやった方がいいのではと思っていたために、あっさりと裏をかかれてしまった。
知られてしまったのなら仕方が無いと、彼女と会ったことに関しては素直に白状してしまおうと銀時は質問に答える。
「今日の昼間、偶然な」
「・・・それ、どこでだ?」
「ああ? どこって・・・町でだけど」
「んなこたわかってんだよ! 町以外で会うなんて冗談じゃねーよ!! 俺は町のどこで会ったんだって訊いてんだっ」
もしどこか屋内で、人気の無いところで逢引していたら・・・なんて考えたくもない。そんな土方の思いが伝わったのだろう、銀時は少しニヤつきながら言葉を返す。
「まァなー、この町には男女がひっそりと人目を忍んで逢引するには、うってつけの場所が多いからねー」
「な・・・っ!? どういう意味だそれ!!」
「え? どういう意味かって? そりゃァお前、こんなところじゃ言うに憚られるような所?」
くだけた口調で言ってから、口笛まで吹いてみせる。するとその言葉を聞いた土方の表情が、みるみるうちに鬼の形相に変わり始めた。組んでいた腕も解き、彼の左手は刀の鍔に触れている。
しかし銀時は、そんな土方を目の前にしても落ち着き払ったままだ。
「ばーかお前、こんなところでんな物騒なモンに触れてんじゃねーよ。何信じちゃってんの? 冗談に決まってんだろうが。自分の女房が信じられねェの?」
そこまで言うのなら何も嘘をつかなくても良かったのだが、ついつい悪戯心を働かせてしまった銀時。怒りだす寸前の土方に嘘だったことを告げると、ついでとばかりに会ったのは町の広場だと告白する。
それを聞いた土方は、憮然とした表情ではあるものの、刀から手を下ろした。
「っ・・・馬鹿はテメーだろうが! くだらねェ嘘ついてんじゃねーよっ」
「はいはい悪かったですねー。まァ、こんな分かりやすい嘘を簡単に信じる方もどうかと思うけど?」
「やかましいわ! どうせならもっと笑える嘘にしやがれ!!」
「なんで俺が、わざわざお前を笑わさなきゃなんねーんだよ」
全くもって、その通りだと言うしかない。土方は銀時の言葉に悔しそうに舌打ちをすると、ラックに並べられた雑誌の表紙を指先で弾きながらぼやく。