第七章
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
銀時が拾い上げた、土方が食い入るように読みいっていた雑誌には、『実録・夫婦の性活第一弾! 勝手過ぎる夫!!』という見出しが誌面を飾っていた。
一際目を引く見出しに、ついつい特集の内容を追ってしまう。そこに書かれてある記事に、銀時は思わず固まってしまった。
それはまるで暴露大会。妻たちの、夫への不満が盛大に書き綴られている。その中でも真っ先に銀時の目に留まったのが、『妊娠中でもお構い無しに求めてくる夫』という告白文だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
双方とも、黙ったまま。気まずい土方はともかく、いつもは口達者な銀時も、これには頭を悩ませる。
おいおいマジかよ・・・こりゃァ、思ってたよりも重症だな。
不特定多数が訪れるコンビニという場所で、腰に刀を携えた男が読むには、色んな意味で人目が気になる雑誌だろう。しかも、流し読みという雰囲気ではない。周囲にどう見られるか、それさえも気にならないほど切羽詰まっていたのだろうか。
まさかこれほどまでに、紗己との夫婦『性』活に苦悶していたとは。呆れる気持ちもあるが、むしろ哀れみの方が勝っている。
銀時は拾い上げた週刊誌をぱたり閉じると、わざとらしく咳をしながら土方に差し出した。
「あー・・・なんつうかアレだよね、情報が・・・満載だよね、ウン」
「・・・おい、なんで目ェ逸らすんだよ・・・」
「いや、別にそんなコトねーよ?」
目を逸らしたことを指摘されたため、今度は言い訳をしながらきちんと土方に目を合わせる。しかし、その目は口ほどにものを言っているようで、土方に向けられた銀時の双眸はこの上なく生暖かいものだ。
当然土方は、銀時のその『物言わぬ』態度が気に食わない。ここが店内であることも忘れ、声を荒らげて噛み付いた。
「何だよ! 言いたいことがあんなら口で言えっ」
「いやいや、別に言いたいことなんてねーよ? つーか、何も言う気になれねーよ」
困惑に満ちた表情で、首やら脇腹やらを空いている方の手で擦る。その彼の動作から、自分が読み耽っていた特集がなんなのか気付かれたと理解した土方は、何とか誤魔化そうと、上体を捻って背後の雑誌たちを整頓し始めた。
「ち、違うからな! 勘違いすんなよ!? 俺はだな、ここの雑誌の並びが乱れてたから整えようとだな・・・」
「ハイハイわかったわかった。ほら、買うんだろ?」
言いながら、土方が受け取らないため未だ持ったままの雑誌を、早く受け取れとばかりに彼の胸に押し付ける。
「ち、違うっつってんだろうが! 誰が買うかこんなモン!!」
押し付けられ仕方なく手に持った週刊誌を、土方は乱暴な手付きでラックに押し込んだ。瞬間、クシャッと紙の擦れる音が響いた。やたらに存在感のある音だ。
気まずさもあってか会話が続かない。元より、会話らしい会話はしていないのだが。
額に汗かく土方を一瞥して、銀時はくるりと背中を向けた。
「まァあの、これは見なかったことにしとくわ。じゃ」
そう言って、土方の前から立ち去ろうとする。しかしそれを良しとしない土方は、声をひっくり返して銀時を呼び止めた。
「ちょ・・・っ、待てオイちょっと待て! 違うから、ほんとそういうんじゃねーからっ」
「いや、ほんとそんな必死にならなくてもいいし。じゃ」
「必死になんてなってねーよ!」
ムキになって言い返してしまう。しかし銀時は、熱くなっている土方とは違ってやけに冷静に言葉を返した。
「それならいいじゃねェか。じゃ」
もう三度目、この場を去る意を告げる。だが、
「っ・・・ちょ、ちょっと待てって!」
やはり、背後から制止を求められた。
いくら見なかったことにすると言われても、見られた事実は何も変わらない。ならばいっそ、思っていることをはっきりと言われた方がまだマシだと土方は考えた。
「ま、まま待てよまァあれだ・・・ちょっとくらいなら聞いてやってもいいぞ?」
「は?」
土方の突然の言い分に、銀時は意味がわからないといった風に眉をしかめる。すると土方は、手持ち無沙汰の両手をポケットに突っ込んで言葉を投げた。
「何か・・・言いたそうだったろうが。と、特別に聞いてやるっつってんだよ」
これ以上ないというくらいに上から目線だ。普段の銀時ならば、こんな言い方をされたらさぞや憤ることだろう。
しかし今日の銀時は同情心からか、多少土方に対して心が広い。とはいえ、何でもかんでも許容するというわけではなく、単に声を荒らげたりしないだけなのだが。
勝手な物言いを繰り返す土方に、銀時は嘆息してから彼を見やった。
「別に言いたいことなんかねーよ。なに、俺に何か言って欲しいのか?」
とんだ構って欲しがりだねェ、と薄く笑って言ってみる。すると土方は、早くも我慢出来なくなってしまったようだ。
「ふざけんな! 誰が構って欲しがりだ!! 用がねえんならさっさと帰りやがれっ」
「はあ!? テメーがずっと呼び止めてたんだろうがっ」
土方のあまりにも勝手な言い分に、とうとう銀時も我慢が効かなくなってしまった。
一際目を引く見出しに、ついつい特集の内容を追ってしまう。そこに書かれてある記事に、銀時は思わず固まってしまった。
それはまるで暴露大会。妻たちの、夫への不満が盛大に書き綴られている。その中でも真っ先に銀時の目に留まったのが、『妊娠中でもお構い無しに求めてくる夫』という告白文だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
双方とも、黙ったまま。気まずい土方はともかく、いつもは口達者な銀時も、これには頭を悩ませる。
おいおいマジかよ・・・こりゃァ、思ってたよりも重症だな。
不特定多数が訪れるコンビニという場所で、腰に刀を携えた男が読むには、色んな意味で人目が気になる雑誌だろう。しかも、流し読みという雰囲気ではない。周囲にどう見られるか、それさえも気にならないほど切羽詰まっていたのだろうか。
まさかこれほどまでに、紗己との夫婦『性』活に苦悶していたとは。呆れる気持ちもあるが、むしろ哀れみの方が勝っている。
銀時は拾い上げた週刊誌をぱたり閉じると、わざとらしく咳をしながら土方に差し出した。
「あー・・・なんつうかアレだよね、情報が・・・満載だよね、ウン」
「・・・おい、なんで目ェ逸らすんだよ・・・」
「いや、別にそんなコトねーよ?」
目を逸らしたことを指摘されたため、今度は言い訳をしながらきちんと土方に目を合わせる。しかし、その目は口ほどにものを言っているようで、土方に向けられた銀時の双眸はこの上なく生暖かいものだ。
当然土方は、銀時のその『物言わぬ』態度が気に食わない。ここが店内であることも忘れ、声を荒らげて噛み付いた。
「何だよ! 言いたいことがあんなら口で言えっ」
「いやいや、別に言いたいことなんてねーよ? つーか、何も言う気になれねーよ」
困惑に満ちた表情で、首やら脇腹やらを空いている方の手で擦る。その彼の動作から、自分が読み耽っていた特集がなんなのか気付かれたと理解した土方は、何とか誤魔化そうと、上体を捻って背後の雑誌たちを整頓し始めた。
「ち、違うからな! 勘違いすんなよ!? 俺はだな、ここの雑誌の並びが乱れてたから整えようとだな・・・」
「ハイハイわかったわかった。ほら、買うんだろ?」
言いながら、土方が受け取らないため未だ持ったままの雑誌を、早く受け取れとばかりに彼の胸に押し付ける。
「ち、違うっつってんだろうが! 誰が買うかこんなモン!!」
押し付けられ仕方なく手に持った週刊誌を、土方は乱暴な手付きでラックに押し込んだ。瞬間、クシャッと紙の擦れる音が響いた。やたらに存在感のある音だ。
気まずさもあってか会話が続かない。元より、会話らしい会話はしていないのだが。
額に汗かく土方を一瞥して、銀時はくるりと背中を向けた。
「まァあの、これは見なかったことにしとくわ。じゃ」
そう言って、土方の前から立ち去ろうとする。しかしそれを良しとしない土方は、声をひっくり返して銀時を呼び止めた。
「ちょ・・・っ、待てオイちょっと待て! 違うから、ほんとそういうんじゃねーからっ」
「いや、ほんとそんな必死にならなくてもいいし。じゃ」
「必死になんてなってねーよ!」
ムキになって言い返してしまう。しかし銀時は、熱くなっている土方とは違ってやけに冷静に言葉を返した。
「それならいいじゃねェか。じゃ」
もう三度目、この場を去る意を告げる。だが、
「っ・・・ちょ、ちょっと待てって!」
やはり、背後から制止を求められた。
いくら見なかったことにすると言われても、見られた事実は何も変わらない。ならばいっそ、思っていることをはっきりと言われた方がまだマシだと土方は考えた。
「ま、まま待てよまァあれだ・・・ちょっとくらいなら聞いてやってもいいぞ?」
「は?」
土方の突然の言い分に、銀時は意味がわからないといった風に眉をしかめる。すると土方は、手持ち無沙汰の両手をポケットに突っ込んで言葉を投げた。
「何か・・・言いたそうだったろうが。と、特別に聞いてやるっつってんだよ」
これ以上ないというくらいに上から目線だ。普段の銀時ならば、こんな言い方をされたらさぞや憤ることだろう。
しかし今日の銀時は同情心からか、多少土方に対して心が広い。とはいえ、何でもかんでも許容するというわけではなく、単に声を荒らげたりしないだけなのだが。
勝手な物言いを繰り返す土方に、銀時は嘆息してから彼を見やった。
「別に言いたいことなんかねーよ。なに、俺に何か言って欲しいのか?」
とんだ構って欲しがりだねェ、と薄く笑って言ってみる。すると土方は、早くも我慢出来なくなってしまったようだ。
「ふざけんな! 誰が構って欲しがりだ!! 用がねえんならさっさと帰りやがれっ」
「はあ!? テメーがずっと呼び止めてたんだろうがっ」
土方のあまりにも勝手な言い分に、とうとう銀時も我慢が効かなくなってしまった。