第七章
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――――――
すっかり日も落ちて、通り過ぎる人々の顔が見えにくくなった頃。銀時は一人町を歩いていた。紗己を屯所近くまで送ってからいくつかの所用を済ませ、ようやく家路に就こうとしていたところだ。
特別急ぐ用もないので、比較的のんびりと歩く。そんな中銀時は、紗己との会話をぼんやりと思い返していた。
土方との(夜の)夫婦生活について、このまま何もないままでいいのかという不安を抱いていた紗己。しかし自分がどうしたいのか、どうされたいのかという明確な意思や希望は特に無いらしく、その不安に思う感情自体もかなり曖昧なものだった。
決して、嫌というわけではないらしい。かと言って、是非に・・・ということでもないらしい。彼女曰く、「ピンとこない」のだという。
それを聞いた時にはお手上げ状態だった銀時だが、いろいろと話しているうちに理解出来る部分も見つかった。
たった一度しか身体を結んではいないが、それ自体もかなりのイレギュラーだった土方と紗己。
普通なら心通い合う男女の『初めて』というのは、お互いに緊張やときめきといったものがかなりの割合を占めているものだ。
だが、彼らの場合は違う。土方に関しては、泥酔して意識がまともにない状態。加えて、相手を勘違いしてしまっていた。
紗己はと言えば、ときめきや恥じらいを感じる余裕もないうちに、土方の手馴れた行為を受け止めてしまったのだ。
ややもすれば、強姦と言われても仕方の無いような形ではあったが、紗己にはそんな被害意識は微塵も無かった。それもそのはず、彼女にとっては、土方は憧れの人だったのだから。
ならば、そんな憧れの男性に対して、そろそろピンときてもいい頃だろう。銀時だけでなく、誰もが抱きそうな疑問だ。
しかし紗己には、大きすぎる問題点があった。
『妊娠している』――これは、彼女にとって最大の自己防御とも言える逃げ道だ。
妊娠しているから、無理に求められたりはしないだろう。その安心感が、紗己を現実から遠ざけている。新婚生活が始まって一週間経っても、未だピンとこないと言わしめているのはそのせいだ。
「・・・女ってのは、なかなか面倒な生き物だねェ」
首を鳴らしながら独りごちた。相手があの紗己だから、あの土方だからかも知れないが・・・とは思うのだが。
銀時は町を歩きながら、彼女の話してくれたことを一つ一つ頭の中で整理し始めた。
あれでもアイツ、やっぱり女なんだよなー・・・・・・。
そう思ったらなんだか可笑しくなってしまい、思い出し笑いを堪えながら首の後ろを撫でて歩く。
夜の夫婦生活については、取り立てて拒否はないものの、何が何でも積極的にというわけでもないようだ。それならば、もっとハードルの低いところで・・・と、銀時は彼女に質問を投げ掛けた。
キスされるのは、嫌なのか――? その質問に対しての紗己の答えは、「そ、そんなことは・・・ない、です・・・」だった。
実際口付けされそうになったこともあったし、それを嫌がったことはない。むしろ、彼女自身も多少の期待はあるようだ。
しかし彼女にとって、そして二人にとってのファーストキスも、未だ完遂されないまま。
一度目は、式の前に二人別室で待機していた時。その時は、あと少しでというところで彼女の父親が登場して未遂に終わった。
二度目は、先日過労で倒れた時。その時は、あと少しでというところで土方自身が躊躇して未遂に終わった。
そんな詳しい事情までは、銀時の与り知るところではない。しかし、紗己が把握している事実だけを聞いたとしても、二回チャンスがあり、結果何も成されていないということだけは明白だ。
キスくらい、しようと思えばいつでもどこでも、時間や場所などそうは選ばないのでは。そうまでは紗己に言わないものの、多少首を捻りたくなる気持ちもあるにはあった。
けれど、男というのは案外ロマンチストなもの。初めての口付けを、記憶に残る美しいものにしたいという気持ちが働いているのだろう、とも思う。
ここに行き着くまでの経緯を思えば、せめて初めてのキスくらいは最高のシチュエーションで――と考えているであろう、土方の思考を予想してみた。
あの野郎のことだから、あれやこれや考えてきっかけが掴めねーんだろうな。そんな深く考えなくても、紗己はどんなシチュエーションでも十分幸せを感じられる女だって、まだ分かってないのかねェ。
勝手な決めつけではあるものの、大方外れてはいないだろう。変に実直で、それでいて変に消極的な土方に、同じ男として呆れる他ない銀時。
あんなにも紗己は、触れられることを望んでいるのに。そう思うと何だか腹立たしくて、ついつい道端の石ころを軽く蹴飛ばした。
すっかり日も落ちて、通り過ぎる人々の顔が見えにくくなった頃。銀時は一人町を歩いていた。紗己を屯所近くまで送ってからいくつかの所用を済ませ、ようやく家路に就こうとしていたところだ。
特別急ぐ用もないので、比較的のんびりと歩く。そんな中銀時は、紗己との会話をぼんやりと思い返していた。
土方との(夜の)夫婦生活について、このまま何もないままでいいのかという不安を抱いていた紗己。しかし自分がどうしたいのか、どうされたいのかという明確な意思や希望は特に無いらしく、その不安に思う感情自体もかなり曖昧なものだった。
決して、嫌というわけではないらしい。かと言って、是非に・・・ということでもないらしい。彼女曰く、「ピンとこない」のだという。
それを聞いた時にはお手上げ状態だった銀時だが、いろいろと話しているうちに理解出来る部分も見つかった。
たった一度しか身体を結んではいないが、それ自体もかなりのイレギュラーだった土方と紗己。
普通なら心通い合う男女の『初めて』というのは、お互いに緊張やときめきといったものがかなりの割合を占めているものだ。
だが、彼らの場合は違う。土方に関しては、泥酔して意識がまともにない状態。加えて、相手を勘違いしてしまっていた。
紗己はと言えば、ときめきや恥じらいを感じる余裕もないうちに、土方の手馴れた行為を受け止めてしまったのだ。
ややもすれば、強姦と言われても仕方の無いような形ではあったが、紗己にはそんな被害意識は微塵も無かった。それもそのはず、彼女にとっては、土方は憧れの人だったのだから。
ならば、そんな憧れの男性に対して、そろそろピンときてもいい頃だろう。銀時だけでなく、誰もが抱きそうな疑問だ。
しかし紗己には、大きすぎる問題点があった。
『妊娠している』――これは、彼女にとって最大の自己防御とも言える逃げ道だ。
妊娠しているから、無理に求められたりはしないだろう。その安心感が、紗己を現実から遠ざけている。新婚生活が始まって一週間経っても、未だピンとこないと言わしめているのはそのせいだ。
「・・・女ってのは、なかなか面倒な生き物だねェ」
首を鳴らしながら独りごちた。相手があの紗己だから、あの土方だからかも知れないが・・・とは思うのだが。
銀時は町を歩きながら、彼女の話してくれたことを一つ一つ頭の中で整理し始めた。
あれでもアイツ、やっぱり女なんだよなー・・・・・・。
そう思ったらなんだか可笑しくなってしまい、思い出し笑いを堪えながら首の後ろを撫でて歩く。
夜の夫婦生活については、取り立てて拒否はないものの、何が何でも積極的にというわけでもないようだ。それならば、もっとハードルの低いところで・・・と、銀時は彼女に質問を投げ掛けた。
キスされるのは、嫌なのか――? その質問に対しての紗己の答えは、「そ、そんなことは・・・ない、です・・・」だった。
実際口付けされそうになったこともあったし、それを嫌がったことはない。むしろ、彼女自身も多少の期待はあるようだ。
しかし彼女にとって、そして二人にとってのファーストキスも、未だ完遂されないまま。
一度目は、式の前に二人別室で待機していた時。その時は、あと少しでというところで彼女の父親が登場して未遂に終わった。
二度目は、先日過労で倒れた時。その時は、あと少しでというところで土方自身が躊躇して未遂に終わった。
そんな詳しい事情までは、銀時の与り知るところではない。しかし、紗己が把握している事実だけを聞いたとしても、二回チャンスがあり、結果何も成されていないということだけは明白だ。
キスくらい、しようと思えばいつでもどこでも、時間や場所などそうは選ばないのでは。そうまでは紗己に言わないものの、多少首を捻りたくなる気持ちもあるにはあった。
けれど、男というのは案外ロマンチストなもの。初めての口付けを、記憶に残る美しいものにしたいという気持ちが働いているのだろう、とも思う。
ここに行き着くまでの経緯を思えば、せめて初めてのキスくらいは最高のシチュエーションで――と考えているであろう、土方の思考を予想してみた。
あの野郎のことだから、あれやこれや考えてきっかけが掴めねーんだろうな。そんな深く考えなくても、紗己はどんなシチュエーションでも十分幸せを感じられる女だって、まだ分かってないのかねェ。
勝手な決めつけではあるものの、大方外れてはいないだろう。変に実直で、それでいて変に消極的な土方に、同じ男として呆れる他ない銀時。
あんなにも紗己は、触れられることを望んでいるのに。そう思うと何だか腹立たしくて、ついつい道端の石ころを軽く蹴飛ばした。