第七章
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「私、そこまで深く考えてませんでした。ただ土方さんのお役に立てればって、それしか考えてなかったです・・・・・・。これじゃ駄目ですよね、もっと深く考えるようにしないといけないですよね!」
これからまた頑張ります、と言って大きく頷く紗己に、銀時は困ったように頭を掻く。
「いや、だからそう頑張らなくても・・・」
「え?」
呆れて漏れ出た呟きが、彼女の耳に届くことはなかったようだ。しかしこれ以上は、言い直す気にはなれない。ここでまた訂正を入れれば、素直すぎる彼女は更に頭を悩ませるだろう。
悩むだけならまだいいが、ひょっとしたら挽回しようとまた無理をしてしまうかもしれない。その可能性も考慮して、銀時はこの話題から離れようと試みた。
「ま、まあアレだな、元気になったんならそれにこしたこたァねーよな! 過労と寝不足で倒れたなんて言うからさー、すっかり勘違いしてたわ」
「勘違い?」
「そうそう勘違い。あのニコチン野郎が激しすぎて、夜も寝かせてくれないくらいに頑張っちゃってんのかってな」
言いながら、ニタニタと笑っている。
聞いてすぐには、銀時が何のことを言っているのか分からなかった紗己。しかし、彼のその表情と言葉を思い返し、ようやくそれが何を指しているのか理解した。瞬時に顔を林檎のように真っ赤にして、恥ずかしそうに目線を逸らす。
「えっ、あ・・・あのそんなっ! や、やだもう銀さんてばっ」
「照れちゃってまあ、おいおいこっちまで恥ずかしくなってくるじゃねーか。いいねェいいねェ、羨ましい限りだよまったく」
尚もしつこく冷やかしてみると、隣に座る紗己はちらり銀時を横目で見た。
「そんな全然あの・・・ち、違いますから!」
「まあまあいいじゃないの、新婚なんだからさー。いやほんと羨ましいよね、ほんとアイツ羨ましいよね」
やけにしみじみと、ここには居ない土方を羨ましがっている。そんな彼に対して紗己は、羞恥に瞳を潤ませながらも必死に首を横に振る。
「ほ、本当に全然そんな・・・まったくあの・・・そういうのはほんとにその・・・私たち全然・・・」
「あ?」
「まだ・・・その、あの・・・」
なかなかはっきりと言い出せない。もじもじとつま先を擦り合わせている紗己に、彼女が何を言いたいのか分からず銀時は怪訝な顔をする。
「なになに、どうしたんだよ? 何が全然でまだな・・・・・・ん?」
自分で言ってみて、とある引っ掛かりを覚えた。
眉を寄せたまま紗己に視線を合わせてみれば、途端に照れと困惑の混じった複雑な表情を見せてくれる。それら全てを勘案してみると、そこに導き出される答えはそう多くはない。
銀時はまさかと思いつつ、缶ジュースを握る手に力を込めて紗己の顔を覗き込んだ。
「え、ちょっと待てよ・・・え? あのー・・・紗己ちゃん? つかぬ事をお訊ねしますが、ひょっとして君たちまさか・・・」
ごくり息を呑んで、言葉を続ける。
「まだ・・・ヤッてねーの・・・・・・?」
すると紗己は、しばらくの間を置いてから、控え目に小さく頷いた。元々赤くなっていたその顔は、みるみるうちに更に赤みを増していく。
「え、ちょっと待てよ・・・え? いや、そりゃァお前妊婦なわけだし? 多少は気を遣うところもあるだろうが、いくらなんでも・・・求められて断ったとか、じゃなくて?」
ここまで突っ込んで訊くのは下世話だと思うものの、やはり訊かずにはいられない。
新婚ホヤホヤという最高に幸せな時期でありながら、未だ何もしていないという事実は、納得がいく答えを知りたいと銀時に思わせるには十分だった。
銀時の無遠慮な質問に対しても、彼に全幅の信頼を寄せる紗己は、素直すぎるほど正直に答える。
「断るっていうか・・・本当にまだ何も・・・そんな・・・」
「・・・まじでか。よく我慢できるよなァ、あの野郎も。流れだってあるだろうに、ほんとよく途中で止められるねー」
「流れ? 途中・・・・・・?」
あまり抑揚のない声で、銀時が発した言葉を復唱する紗己。その様子では、今の発言の意味を理解しているとはとてもじゃないが思えない。
となると、流れを途中で止めるような『そういう』経験をしていないのでは――という結論に至るのが自然だろう。
なにコレ、え、なにコレ? なにこの反応、もしかして・・・いやいやまさか、それはさすがにありえねーだろ・・・でも・・・いやまさか・・・・・・。
「・・・いや、だからね? 男ってのはさァ、一旦火がついちゃうとなかなか興奮を抑えるのに苦労するモンなんだけど、それを土方くんはちゃーんと抑制できててスゴイねって俺は感心してたんだけど・・・」
「抑制? 火がつくって・・・え?」
まだまだ理解しきれていない様子の紗己に、銀時は仕方なく噛み砕いて説明する。
「だーからァ! キスしたらそのままの流れで最後までやりたくなるだろうが・・・って、なんでこんな事細かに説明しなくちゃなんねーんだよ!! 俺の方が恥ずかしくなっちまっただろーがっ」
真っ昼間の町中とあって、人通りはかなり多い。いきなり聞こえてきたキスだのなんだのといった会話に、行き交う人々の視線が痛いくらいだ。
さすがに恥ずかしくなった銀時は、乱暴な手付きで自身の髪を掻き乱すと、わざとらしい咳を数度繰り返した。
これからまた頑張ります、と言って大きく頷く紗己に、銀時は困ったように頭を掻く。
「いや、だからそう頑張らなくても・・・」
「え?」
呆れて漏れ出た呟きが、彼女の耳に届くことはなかったようだ。しかしこれ以上は、言い直す気にはなれない。ここでまた訂正を入れれば、素直すぎる彼女は更に頭を悩ませるだろう。
悩むだけならまだいいが、ひょっとしたら挽回しようとまた無理をしてしまうかもしれない。その可能性も考慮して、銀時はこの話題から離れようと試みた。
「ま、まあアレだな、元気になったんならそれにこしたこたァねーよな! 過労と寝不足で倒れたなんて言うからさー、すっかり勘違いしてたわ」
「勘違い?」
「そうそう勘違い。あのニコチン野郎が激しすぎて、夜も寝かせてくれないくらいに頑張っちゃってんのかってな」
言いながら、ニタニタと笑っている。
聞いてすぐには、銀時が何のことを言っているのか分からなかった紗己。しかし、彼のその表情と言葉を思い返し、ようやくそれが何を指しているのか理解した。瞬時に顔を林檎のように真っ赤にして、恥ずかしそうに目線を逸らす。
「えっ、あ・・・あのそんなっ! や、やだもう銀さんてばっ」
「照れちゃってまあ、おいおいこっちまで恥ずかしくなってくるじゃねーか。いいねェいいねェ、羨ましい限りだよまったく」
尚もしつこく冷やかしてみると、隣に座る紗己はちらり銀時を横目で見た。
「そんな全然あの・・・ち、違いますから!」
「まあまあいいじゃないの、新婚なんだからさー。いやほんと羨ましいよね、ほんとアイツ羨ましいよね」
やけにしみじみと、ここには居ない土方を羨ましがっている。そんな彼に対して紗己は、羞恥に瞳を潤ませながらも必死に首を横に振る。
「ほ、本当に全然そんな・・・まったくあの・・・そういうのはほんとにその・・・私たち全然・・・」
「あ?」
「まだ・・・その、あの・・・」
なかなかはっきりと言い出せない。もじもじとつま先を擦り合わせている紗己に、彼女が何を言いたいのか分からず銀時は怪訝な顔をする。
「なになに、どうしたんだよ? 何が全然でまだな・・・・・・ん?」
自分で言ってみて、とある引っ掛かりを覚えた。
眉を寄せたまま紗己に視線を合わせてみれば、途端に照れと困惑の混じった複雑な表情を見せてくれる。それら全てを勘案してみると、そこに導き出される答えはそう多くはない。
銀時はまさかと思いつつ、缶ジュースを握る手に力を込めて紗己の顔を覗き込んだ。
「え、ちょっと待てよ・・・え? あのー・・・紗己ちゃん? つかぬ事をお訊ねしますが、ひょっとして君たちまさか・・・」
ごくり息を呑んで、言葉を続ける。
「まだ・・・ヤッてねーの・・・・・・?」
すると紗己は、しばらくの間を置いてから、控え目に小さく頷いた。元々赤くなっていたその顔は、みるみるうちに更に赤みを増していく。
「え、ちょっと待てよ・・・え? いや、そりゃァお前妊婦なわけだし? 多少は気を遣うところもあるだろうが、いくらなんでも・・・求められて断ったとか、じゃなくて?」
ここまで突っ込んで訊くのは下世話だと思うものの、やはり訊かずにはいられない。
新婚ホヤホヤという最高に幸せな時期でありながら、未だ何もしていないという事実は、納得がいく答えを知りたいと銀時に思わせるには十分だった。
銀時の無遠慮な質問に対しても、彼に全幅の信頼を寄せる紗己は、素直すぎるほど正直に答える。
「断るっていうか・・・本当にまだ何も・・・そんな・・・」
「・・・まじでか。よく我慢できるよなァ、あの野郎も。流れだってあるだろうに、ほんとよく途中で止められるねー」
「流れ? 途中・・・・・・?」
あまり抑揚のない声で、銀時が発した言葉を復唱する紗己。その様子では、今の発言の意味を理解しているとはとてもじゃないが思えない。
となると、流れを途中で止めるような『そういう』経験をしていないのでは――という結論に至るのが自然だろう。
なにコレ、え、なにコレ? なにこの反応、もしかして・・・いやいやまさか、それはさすがにありえねーだろ・・・でも・・・いやまさか・・・・・・。
「・・・いや、だからね? 男ってのはさァ、一旦火がついちゃうとなかなか興奮を抑えるのに苦労するモンなんだけど、それを土方くんはちゃーんと抑制できててスゴイねって俺は感心してたんだけど・・・」
「抑制? 火がつくって・・・え?」
まだまだ理解しきれていない様子の紗己に、銀時は仕方なく噛み砕いて説明する。
「だーからァ! キスしたらそのままの流れで最後までやりたくなるだろうが・・・って、なんでこんな事細かに説明しなくちゃなんねーんだよ!! 俺の方が恥ずかしくなっちまっただろーがっ」
真っ昼間の町中とあって、人通りはかなり多い。いきなり聞こえてきたキスだのなんだのといった会話に、行き交う人々の視線が痛いくらいだ。
さすがに恥ずかしくなった銀時は、乱暴な手付きで自身の髪を掻き乱すと、わざとらしい咳を数度繰り返した。