第七章
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「紗己・・・・・・?」
「・・・・・・」
呼び掛けてみても、彼女は何も答えない。だが、潤んだ瞳は確実に目の前の男に向けられている。
そんなふうに見つめられたら、このままジッとしているなんて出来るはずもなく、いつの間にか赤みを取り戻した紗己の頬に、土方の右手がぎこちなく添えられた。
非常にゆっくりとした動作で、少しだけ彼女との距離を詰めるように背中を曲げる。すると紗己は、一瞬ビクッと肩を強張らせ視線を逸らしたが、またすぐに土方を見つめ返した。
その艶を帯びた視線を受けて、激しく口付けたい衝動に駆られた土方は、大きな手の平で紗己の頬を包み込むと、親指で彼女の柔らかな唇をそっとなぞった。指の腹から伝わった感触の何と瑞々しいことか。途端、雷に打たれたように甘い熱が土方の全身を駆け巡った。
当然キス以上のことをするつもりはない。しかし、芯から熱くなるような甘美な刺激に、見事肉体の一部分が反応を示してしまった。
そうなっては、理性は弱まる一方だ。土方はごくりと息を呑んで、厚みのある背中を更に曲げるようにして、徐々に紗己に顔を近付ける。
「紗己・・・」
吐息混じりに名を呼ぶと、紗己は更に頬を赤く染め上げた。そして答えはしないが、睫毛を震わせながら瞼を下ろす。
いいの、か? これは『いい』って合図なのか!?
勿論キスまでしかする気はないが、この流れに身を任せてしまいたい気にもなる。もし紗己が今日倒れていなければ、最後までやり遂げるつもりだったのだ。昼間仕事中に飲んだ栄養ドリンクが、今頃になって彼を元気にさせる。
どうする、どうしたらいい――? 欲望に従うか、なけなしの理性で性欲に抗うか。まさに究極の二択だ。
いやいやいやいや待て待て待て待て、キスだけ! キスだけにしとけ俺!! やっぱり駄目だろこれは駄目だろ、俺がここで無理させてどうすんだ!
脳内で欲望と理性を戦わせてみたが、結局は双方の共存を選んだようだ。
少しだけ気持ちが落ち着いたところで、再度行動に移ろうと紗己に目を向ける。だが、小刻みに睫毛を揺らして身体を緊張させている紗己を前に、土方はぴたりと動きを止めてしまった。そのまま盛大に溜め息を落とすと、黒髪を揺らして項垂れてしまう。
やっぱり駄目だ! 今下手に手ェ出したら、止められる自信がねえ・・・・・・。
やはり共存は無理だったようだ。とは言え、こんなにも待ち望んできたのだ。口付けくらいはしたいとの思いは当然ある。
けれど、ありとあらゆるモノが溜まりに溜まった今の状態では、到底途中で抑えが効かなくなってしまうだろう。土方は悔しそうに苦しそうに眉間に皺を寄せると、もう一度深く吐息した。
「仕方ないだろ・・・今日は仕方ない・・・」
聞き取れないほどの小さな声で、呪文のように低く呟く。すると今まできつく目を閉じていた紗己が、眼前の只ならぬ気配に恐る恐る目を開けた。
「土、方さん・・・・・・?」
「・・・えっ、ああいや・・・」
やや不安げな表情の彼女に、どう答えたらいいか迷ってしまう。身体を支配していた熱も、まだ完全には治まっていないのだ。
土方はとりあえずとばかりに、紗己の頬と彼女の左手から自身の手を離した。そしてその手で、今もまだ存在の主張が目立つ肉体の一部分を隠すようにする。
多少の気まずさの中、ちらり目線を紗己に合わせると、彼女は土方をジッと見つめている。決して彼の胸中に気付いているわけでもないし、その肉体の変化に気付いているわけでもないのだが。
だが見られている側の土方にとっては、今のこの状況は非常に居心地が悪い。かと言って、すぐに立ち上がり隣の部屋に退散するわけにもいかない。
言葉に詰まりながらも、土方は何とか作り笑いを浮かべる。
「あー・・・あれだその、ゆっくり・・・休まねえと、な」
出来るだけ穏やかな声音でそう言うと、紗己はしばらくの間を置いてから、少し寂しそうに問い掛けた。
「・・・もう、行っちゃいますか・・・・・・?」
「いや、行かねーよ。心配すんな、お前が寝るまでここにいるっつったろ」
控え目ながらも心細さを隠し切れない紗己に、土方は優しく笑う。すると、その表情に安心した紗己が、遠慮がちに言葉を続けた。
「あの・・・土方さん・・・」
「ん? どうした」
「私が寝るまで、その・・・手を、繋いでもらえますか・・・・・・?」
今までには決して見せることの無かった、紗己の小さなわがまま。
相当心細いのか、それとも彼女もまた土方に触れたいと思っているのか。相も変わらず可愛いことを連発してくれる妻に、土方はまたむくむくと顔を出そうとする欲望を抑え込むのに必死だ。
なんだって今日はこんなにも大胆なんだ、コイツは! こんなこと、今までに一度も無かったぞ!? なんでこんな時に限って・・・蛇の生殺しじゃねえか!!
そう思いはするも、そばに居たいのも触れていたいのも、それは彼とて同じ想いだ。土方は右手をスッと彼女の方に伸ばすと、何も言わずに軽く頷いた。それに応えるように、紗己もまたそっと手を伸ばす。
白く柔らかな手。それを力強い男の手がしっかりと握り締めると、その温もりに安心したように紗己はゆっくりと瞳を閉じた。その姿に、土方もまた安心したように深く息をつく。
はあ・・・こりゃァ朝まで我慢大会だな。自分の理性を試されている気分ではあるものの、それでも紗己の穏やかな寝顔を拝めることを幸せに思う土方だった。
「・・・・・・」
呼び掛けてみても、彼女は何も答えない。だが、潤んだ瞳は確実に目の前の男に向けられている。
そんなふうに見つめられたら、このままジッとしているなんて出来るはずもなく、いつの間にか赤みを取り戻した紗己の頬に、土方の右手がぎこちなく添えられた。
非常にゆっくりとした動作で、少しだけ彼女との距離を詰めるように背中を曲げる。すると紗己は、一瞬ビクッと肩を強張らせ視線を逸らしたが、またすぐに土方を見つめ返した。
その艶を帯びた視線を受けて、激しく口付けたい衝動に駆られた土方は、大きな手の平で紗己の頬を包み込むと、親指で彼女の柔らかな唇をそっとなぞった。指の腹から伝わった感触の何と瑞々しいことか。途端、雷に打たれたように甘い熱が土方の全身を駆け巡った。
当然キス以上のことをするつもりはない。しかし、芯から熱くなるような甘美な刺激に、見事肉体の一部分が反応を示してしまった。
そうなっては、理性は弱まる一方だ。土方はごくりと息を呑んで、厚みのある背中を更に曲げるようにして、徐々に紗己に顔を近付ける。
「紗己・・・」
吐息混じりに名を呼ぶと、紗己は更に頬を赤く染め上げた。そして答えはしないが、睫毛を震わせながら瞼を下ろす。
いいの、か? これは『いい』って合図なのか!?
勿論キスまでしかする気はないが、この流れに身を任せてしまいたい気にもなる。もし紗己が今日倒れていなければ、最後までやり遂げるつもりだったのだ。昼間仕事中に飲んだ栄養ドリンクが、今頃になって彼を元気にさせる。
どうする、どうしたらいい――? 欲望に従うか、なけなしの理性で性欲に抗うか。まさに究極の二択だ。
いやいやいやいや待て待て待て待て、キスだけ! キスだけにしとけ俺!! やっぱり駄目だろこれは駄目だろ、俺がここで無理させてどうすんだ!
脳内で欲望と理性を戦わせてみたが、結局は双方の共存を選んだようだ。
少しだけ気持ちが落ち着いたところで、再度行動に移ろうと紗己に目を向ける。だが、小刻みに睫毛を揺らして身体を緊張させている紗己を前に、土方はぴたりと動きを止めてしまった。そのまま盛大に溜め息を落とすと、黒髪を揺らして項垂れてしまう。
やっぱり駄目だ! 今下手に手ェ出したら、止められる自信がねえ・・・・・・。
やはり共存は無理だったようだ。とは言え、こんなにも待ち望んできたのだ。口付けくらいはしたいとの思いは当然ある。
けれど、ありとあらゆるモノが溜まりに溜まった今の状態では、到底途中で抑えが効かなくなってしまうだろう。土方は悔しそうに苦しそうに眉間に皺を寄せると、もう一度深く吐息した。
「仕方ないだろ・・・今日は仕方ない・・・」
聞き取れないほどの小さな声で、呪文のように低く呟く。すると今まできつく目を閉じていた紗己が、眼前の只ならぬ気配に恐る恐る目を開けた。
「土、方さん・・・・・・?」
「・・・えっ、ああいや・・・」
やや不安げな表情の彼女に、どう答えたらいいか迷ってしまう。身体を支配していた熱も、まだ完全には治まっていないのだ。
土方はとりあえずとばかりに、紗己の頬と彼女の左手から自身の手を離した。そしてその手で、今もまだ存在の主張が目立つ肉体の一部分を隠すようにする。
多少の気まずさの中、ちらり目線を紗己に合わせると、彼女は土方をジッと見つめている。決して彼の胸中に気付いているわけでもないし、その肉体の変化に気付いているわけでもないのだが。
だが見られている側の土方にとっては、今のこの状況は非常に居心地が悪い。かと言って、すぐに立ち上がり隣の部屋に退散するわけにもいかない。
言葉に詰まりながらも、土方は何とか作り笑いを浮かべる。
「あー・・・あれだその、ゆっくり・・・休まねえと、な」
出来るだけ穏やかな声音でそう言うと、紗己はしばらくの間を置いてから、少し寂しそうに問い掛けた。
「・・・もう、行っちゃいますか・・・・・・?」
「いや、行かねーよ。心配すんな、お前が寝るまでここにいるっつったろ」
控え目ながらも心細さを隠し切れない紗己に、土方は優しく笑う。すると、その表情に安心した紗己が、遠慮がちに言葉を続けた。
「あの・・・土方さん・・・」
「ん? どうした」
「私が寝るまで、その・・・手を、繋いでもらえますか・・・・・・?」
今までには決して見せることの無かった、紗己の小さなわがまま。
相当心細いのか、それとも彼女もまた土方に触れたいと思っているのか。相も変わらず可愛いことを連発してくれる妻に、土方はまたむくむくと顔を出そうとする欲望を抑え込むのに必死だ。
なんだって今日はこんなにも大胆なんだ、コイツは! こんなこと、今までに一度も無かったぞ!? なんでこんな時に限って・・・蛇の生殺しじゃねえか!!
そう思いはするも、そばに居たいのも触れていたいのも、それは彼とて同じ想いだ。土方は右手をスッと彼女の方に伸ばすと、何も言わずに軽く頷いた。それに応えるように、紗己もまたそっと手を伸ばす。
白く柔らかな手。それを力強い男の手がしっかりと握り締めると、その温もりに安心したように紗己はゆっくりと瞳を閉じた。その姿に、土方もまた安心したように深く息をつく。
はあ・・・こりゃァ朝まで我慢大会だな。自分の理性を試されている気分ではあるものの、それでも紗己の穏やかな寝顔を拝めることを幸せに思う土方だった。