第六章
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――――――
――新婚初夜に寝ちゃうなんて・・・信じられない!
こんな人とは到底やっていけません、私と別れてください。
短い間でしたが、お世話になりました。マヨネーズと煙草の摂り過ぎは、体に毒ですよ――
え、ちょっとおい紗己? 何言ってんだよ、冗談だろ・・・・・・? ちょ、ちょっと待ってくれ! 悪かった、俺が悪かったから!! だから行くな、行かないでくれっ! 頼むから行かないでくれ――!!
「っ・・・!」
がバッと布団を剥いで飛び起きると、土方は必死の形相で部屋の中を見回した。障子の向こうからは柔らかな光が差し込んでいて、鳥のさえずりも聴こえてくる。そうか、もう朝なのか・・・・・・。
だが、まだ目が霞んでいるために、時計の針までは確認出来ない。それらの情報を整理しながら、左側に視線をやると。そこにあるはずの、新妻の布団が無い。
途端、目覚める直前に見ていた夢がフラッシュバックして、激しい焦燥感に襲われる。
あり得ない、あれは夢だ! 起き抜けでまともに思考が働かない中、ただただ口が勝手に妻の名を呼ぶ。
「・・・紗己!紗己っ」
すると、続き間の襖がスッと開き、
「はい、呼びましたか?」
焦る土方の耳に、柔らかな優しい声が届いた。
「・・・っ!?」
居ないと思い込んでいたために、突然の声に驚き振り向くと、そこにはいつもと変わらぬ笑顔を見せる紗己の姿が。土方は情けなくも溜め息をつくと、髪を掻き上げながら肩を落とした。
「・・・夢・・・そうか、そりゃそうだよな・・・・・・」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
項垂れながらチラッと紗己に目を向ければ、彼女は既に着物に前掛けという格好だ。隣の部屋には朝食の用意が整っていて、その気配を感じて彼女が夢に出てきたのだろう。
だからといって、何もあんな夢を見なくても・・・と自分に対して土方は不満を抱く。
しかし、夢とは深層心理が影響するもの。新婚初夜に寝落ちしてしまったことの申し訳なさと不甲斐無さが、彼に情けない夢を見させたのだろう。
土方はややばつが悪そうに、首の後ろを撫でながらぽつり呟く。
「その・・・昨夜は悪かったな、先に寝ちまって・・・」
寝るつもりはなかったし、断然夜の営みにも期待はしていた。しかし、彼女との心の触れ合いを前に、欲望は鳴りを潜めてしまった。
据え膳食わぬは・・・とは言うものの、何が何でも体を欲しているわけではない。当然、心も体も一つになれれば、何も言うことはないのだが。
しかしながら、いくらガツガツしていないとはいえ、この一大イベントにまさか寝てしまうとは。正常な成人男子として、これってどうなんだと土方は頭を抱えたくなる。
だが、彼の葛藤ぶりも当の紗己は全く気にしていない。不思議そうに首を傾げて、項垂れる夫に声を掛けた。
「どうして謝るんですか? お疲れだったんですから、寝るのは当然ですよ」
「え・・・いやまァそうなんだが・・・いや・・・」
口ごもる土方に、紗己は穏やかな笑みを浮かべる。
「ゆっくり眠れましたか?」
「あー・・・ゆっくり、そうだな。睡眠は取れた、な」
「そうですか、良かったです。朝食、もう食べますか?」
「お、おう」
何も気にしていないように見える彼女に、土方はぎこちなく返事をする。
本当に何も意識してないのか? 邪推してみるものの、機嫌良さげに箸を並べる姿は、昨夜何も無かったことを気にしているようには思えない。
少しばかり寂しい気もするが、それでも彼女のこの鈍感さに救われる。布団から出て居間へと移ると、座布団の上に腰を下ろし、人知れず胸を撫で下ろす土方だった。
――新婚初夜に寝ちゃうなんて・・・信じられない!
こんな人とは到底やっていけません、私と別れてください。
短い間でしたが、お世話になりました。マヨネーズと煙草の摂り過ぎは、体に毒ですよ――
え、ちょっとおい紗己? 何言ってんだよ、冗談だろ・・・・・・? ちょ、ちょっと待ってくれ! 悪かった、俺が悪かったから!! だから行くな、行かないでくれっ! 頼むから行かないでくれ――!!
「っ・・・!」
がバッと布団を剥いで飛び起きると、土方は必死の形相で部屋の中を見回した。障子の向こうからは柔らかな光が差し込んでいて、鳥のさえずりも聴こえてくる。そうか、もう朝なのか・・・・・・。
だが、まだ目が霞んでいるために、時計の針までは確認出来ない。それらの情報を整理しながら、左側に視線をやると。そこにあるはずの、新妻の布団が無い。
途端、目覚める直前に見ていた夢がフラッシュバックして、激しい焦燥感に襲われる。
あり得ない、あれは夢だ! 起き抜けでまともに思考が働かない中、ただただ口が勝手に妻の名を呼ぶ。
「・・・紗己!紗己っ」
すると、続き間の襖がスッと開き、
「はい、呼びましたか?」
焦る土方の耳に、柔らかな優しい声が届いた。
「・・・っ!?」
居ないと思い込んでいたために、突然の声に驚き振り向くと、そこにはいつもと変わらぬ笑顔を見せる紗己の姿が。土方は情けなくも溜め息をつくと、髪を掻き上げながら肩を落とした。
「・・・夢・・・そうか、そりゃそうだよな・・・・・・」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。
項垂れながらチラッと紗己に目を向ければ、彼女は既に着物に前掛けという格好だ。隣の部屋には朝食の用意が整っていて、その気配を感じて彼女が夢に出てきたのだろう。
だからといって、何もあんな夢を見なくても・・・と自分に対して土方は不満を抱く。
しかし、夢とは深層心理が影響するもの。新婚初夜に寝落ちしてしまったことの申し訳なさと不甲斐無さが、彼に情けない夢を見させたのだろう。
土方はややばつが悪そうに、首の後ろを撫でながらぽつり呟く。
「その・・・昨夜は悪かったな、先に寝ちまって・・・」
寝るつもりはなかったし、断然夜の営みにも期待はしていた。しかし、彼女との心の触れ合いを前に、欲望は鳴りを潜めてしまった。
据え膳食わぬは・・・とは言うものの、何が何でも体を欲しているわけではない。当然、心も体も一つになれれば、何も言うことはないのだが。
しかしながら、いくらガツガツしていないとはいえ、この一大イベントにまさか寝てしまうとは。正常な成人男子として、これってどうなんだと土方は頭を抱えたくなる。
だが、彼の葛藤ぶりも当の紗己は全く気にしていない。不思議そうに首を傾げて、項垂れる夫に声を掛けた。
「どうして謝るんですか? お疲れだったんですから、寝るのは当然ですよ」
「え・・・いやまァそうなんだが・・・いや・・・」
口ごもる土方に、紗己は穏やかな笑みを浮かべる。
「ゆっくり眠れましたか?」
「あー・・・ゆっくり、そうだな。睡眠は取れた、な」
「そうですか、良かったです。朝食、もう食べますか?」
「お、おう」
何も気にしていないように見える彼女に、土方はぎこちなく返事をする。
本当に何も意識してないのか? 邪推してみるものの、機嫌良さげに箸を並べる姿は、昨夜何も無かったことを気にしているようには思えない。
少しばかり寂しい気もするが、それでも彼女のこの鈍感さに救われる。布団から出て居間へと移ると、座布団の上に腰を下ろし、人知れず胸を撫で下ろす土方だった。