第六章
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「紗己・・・」
「ご、ごめんなさい! でもあの・・・止められなくて・・・」
言いながら、両手で必死に目元を擦る。幼子が泣きじゃくるようなその様子に、土方はふっと笑みをこぼすと彼女の頭に軽く手を乗せた。
「お前なあ、別に悪くもねェんだから、そう簡単に謝るな」
「は、はい、ごめんなさ・・・あっ」
言ったそばから謝ってしまった紗己は、自分でもしまったと思ったのか、慌てて口を閉じ唇を引き締めた。
その姿はとても彼女らしくそれでいて可愛らしく、土方は喉を鳴らして笑ってしまう。
「おっ前・・・あーいい、無理することねェから。お前はそのままでいい・・・そのままのお前でいい」
何をどう言ったところで、本質は変わりはしない。いつまでもこんな風にあどけない彼女と過ごせるのなら、それほどの幸せなどありはしないのだ。
そう思った土方は、紗己の頭に乗せていた手をそっと動かして、軟らかな髪に指を差し込むとそのまま掻き撫でた。そして大きな背中を少し曲げて、彼女の顔を覗き込む。お互いの視線が絡み合った。
涙の筋が残る紗己の頬が、射し込む月明かりによって常より青白く見え、その儚げな美しさに思わず胸が締め付けられる。
自分の人生を懸けて護り通したい。その強い思いが、不器用な男に甘い言葉を紡がせた。
「なあ紗己。昼にも言ったが、これからの人生の方がよっぽどか長ェんだ。焦らずにじっくりいけばいい。俺はそのままのお前でいて欲しいんだよ」
「土方さん・・・・・・!」
至近距離で囁かれた愛の言葉に紗己は嬉しそうに顔を綻ばせると、弾けるような笑顔で何度も何度も頷いた。
このまま見つめ合っていれば、ややもすれば口付けからそのまま・・・となだれ込んでいきそうな雰囲気。しかし、ようやく心の重石を取り除くことに成功した土方は、深い安堵からか激しい脱力感に襲われた。
まるで倒れ込むように、背中から布団へと寝そべる。乾いたシーツの感触がたまらなく心地良い。濡れた髪も氷枕のような役割を果たしてくれて、頭の奥の熱がスゥッと引いていく。
「あ゛ー、力抜けた・・・」
まさに言葉のままの土方の寛ぎぶり。大きな身体から力を抜くと、控え目な大の字が出来上がった。それを見て紗己は、くすりと笑い軽く腰を上げる。
「土方さん、髪がまだ濡れてますから。そのまま寝てると、風邪引いちゃいますよ」
「ああ? こんなの大したことねェよ。それより紗己・・・」
一人寝は寂しいと、彼女に触れたくて腕を宙に伸ばす。
しかし紗己は、彼のその動作に気付くことなくさっさと立ち上がると、布団の足元に位置する箪笥の引き出しからタオルを取り出した。それを手に、土方の枕元に膝をつく。手のかかる子供のように思えたのだろうか、常よりも口調が母親っぽくなっている。
「さ、早く拭かないと・・・ね?」
タオルを手に持って微笑む紗己に、土方は目配せをすると頭を軽く持ち上げた。
その動きに、彼の意図するところが分かったのだろう。紗己はにっこり微笑み「はい」と答えると、布団と彼の頭の隙間に、タオルを敷いた自身の膝を差し込んだ。
乾いたタオルで、髪に含まれている水分を丁寧に吸い取っていく。紗己の優しい手付きや指の動きに、土方は思わずうっとりと瞼を下ろした。
しかし、このままでは恐らく寝てしまう。ここで寝てしまうわけにはいかないと、一瞬落ちかけた意識を何とか引き戻した。
土方は左手を頭上へと伸ばし、自分の黒髪を拭いてくれている紗己の左手首を軽く掴んだ。そして空いている右手を宙に伸ばし、膝枕をしてくれている彼女の頬に触れる。
「紗己」
「っ・・・は、い・・・」
土方の低い声に、触れられている箇所が熱を帯びる。一瞬体を強張らせた紗己だが、土方は決して手を離さない。
思いの丈を告げ、絆を深め合った二人。しかし土方には、もう一つだけ言っておきたいことがあった。しっかりと頭上の彼女を見据えると、静かな口調で話を切り出す。
「・・・俺は、お前が傷付くと分かった上で全部ぶちまけた。それでもお前は俺のことを見捨てねェ、嫌いになったりしねェって確信してたんだ。俺のこと卑怯な男だって軽蔑するか、紗己」
こうして言っている今でも、彼女は決して自分を軽蔑したりしない。そう自信があるから余計に性質が悪いと、土方は自分でも思う。
「土方さん・・・」
紗己は息を吐くと同時に愛しい夫の名を呟くと、自身の膝の上に視線を落とした。
「・・・軽蔑するって言ったら、どうしますか?」
「え・・・っ!?」
突然降り注がれた言葉に、驚きのあまり土方は頭を跳ね上げ上体を捻ると、布団に片肘をついて後ろを振り返り、網にかかった魚のように口をパクパクとさせた。
その姿がおかしかったのか、紗己は目尻を下げてくすくす笑っている。急転した彼女の様子に、何が何やらわからない土方は、眉を寄せて彼女を見上げた。
「ご、ごめんなさい! でもあの・・・止められなくて・・・」
言いながら、両手で必死に目元を擦る。幼子が泣きじゃくるようなその様子に、土方はふっと笑みをこぼすと彼女の頭に軽く手を乗せた。
「お前なあ、別に悪くもねェんだから、そう簡単に謝るな」
「は、はい、ごめんなさ・・・あっ」
言ったそばから謝ってしまった紗己は、自分でもしまったと思ったのか、慌てて口を閉じ唇を引き締めた。
その姿はとても彼女らしくそれでいて可愛らしく、土方は喉を鳴らして笑ってしまう。
「おっ前・・・あーいい、無理することねェから。お前はそのままでいい・・・そのままのお前でいい」
何をどう言ったところで、本質は変わりはしない。いつまでもこんな風にあどけない彼女と過ごせるのなら、それほどの幸せなどありはしないのだ。
そう思った土方は、紗己の頭に乗せていた手をそっと動かして、軟らかな髪に指を差し込むとそのまま掻き撫でた。そして大きな背中を少し曲げて、彼女の顔を覗き込む。お互いの視線が絡み合った。
涙の筋が残る紗己の頬が、射し込む月明かりによって常より青白く見え、その儚げな美しさに思わず胸が締め付けられる。
自分の人生を懸けて護り通したい。その強い思いが、不器用な男に甘い言葉を紡がせた。
「なあ紗己。昼にも言ったが、これからの人生の方がよっぽどか長ェんだ。焦らずにじっくりいけばいい。俺はそのままのお前でいて欲しいんだよ」
「土方さん・・・・・・!」
至近距離で囁かれた愛の言葉に紗己は嬉しそうに顔を綻ばせると、弾けるような笑顔で何度も何度も頷いた。
このまま見つめ合っていれば、ややもすれば口付けからそのまま・・・となだれ込んでいきそうな雰囲気。しかし、ようやく心の重石を取り除くことに成功した土方は、深い安堵からか激しい脱力感に襲われた。
まるで倒れ込むように、背中から布団へと寝そべる。乾いたシーツの感触がたまらなく心地良い。濡れた髪も氷枕のような役割を果たしてくれて、頭の奥の熱がスゥッと引いていく。
「あ゛ー、力抜けた・・・」
まさに言葉のままの土方の寛ぎぶり。大きな身体から力を抜くと、控え目な大の字が出来上がった。それを見て紗己は、くすりと笑い軽く腰を上げる。
「土方さん、髪がまだ濡れてますから。そのまま寝てると、風邪引いちゃいますよ」
「ああ? こんなの大したことねェよ。それより紗己・・・」
一人寝は寂しいと、彼女に触れたくて腕を宙に伸ばす。
しかし紗己は、彼のその動作に気付くことなくさっさと立ち上がると、布団の足元に位置する箪笥の引き出しからタオルを取り出した。それを手に、土方の枕元に膝をつく。手のかかる子供のように思えたのだろうか、常よりも口調が母親っぽくなっている。
「さ、早く拭かないと・・・ね?」
タオルを手に持って微笑む紗己に、土方は目配せをすると頭を軽く持ち上げた。
その動きに、彼の意図するところが分かったのだろう。紗己はにっこり微笑み「はい」と答えると、布団と彼の頭の隙間に、タオルを敷いた自身の膝を差し込んだ。
乾いたタオルで、髪に含まれている水分を丁寧に吸い取っていく。紗己の優しい手付きや指の動きに、土方は思わずうっとりと瞼を下ろした。
しかし、このままでは恐らく寝てしまう。ここで寝てしまうわけにはいかないと、一瞬落ちかけた意識を何とか引き戻した。
土方は左手を頭上へと伸ばし、自分の黒髪を拭いてくれている紗己の左手首を軽く掴んだ。そして空いている右手を宙に伸ばし、膝枕をしてくれている彼女の頬に触れる。
「紗己」
「っ・・・は、い・・・」
土方の低い声に、触れられている箇所が熱を帯びる。一瞬体を強張らせた紗己だが、土方は決して手を離さない。
思いの丈を告げ、絆を深め合った二人。しかし土方には、もう一つだけ言っておきたいことがあった。しっかりと頭上の彼女を見据えると、静かな口調で話を切り出す。
「・・・俺は、お前が傷付くと分かった上で全部ぶちまけた。それでもお前は俺のことを見捨てねェ、嫌いになったりしねェって確信してたんだ。俺のこと卑怯な男だって軽蔑するか、紗己」
こうして言っている今でも、彼女は決して自分を軽蔑したりしない。そう自信があるから余計に性質が悪いと、土方は自分でも思う。
「土方さん・・・」
紗己は息を吐くと同時に愛しい夫の名を呟くと、自身の膝の上に視線を落とした。
「・・・軽蔑するって言ったら、どうしますか?」
「え・・・っ!?」
突然降り注がれた言葉に、驚きのあまり土方は頭を跳ね上げ上体を捻ると、布団に片肘をついて後ろを振り返り、網にかかった魚のように口をパクパクとさせた。
その姿がおかしかったのか、紗己は目尻を下げてくすくす笑っている。急転した彼女の様子に、何が何やらわからない土方は、眉を寄せて彼女を見上げた。