第六章
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「・・・なあ紗己。お前のそれは、完全に勘違いだ」
「そう、なんですか・・・・・・?」
「ああ。まず第一に、俺はお前を身代わりだと思ったことは一度もない」
どうしてこんな形で・・・と思いつつ、土方は懺悔の内容を噛み砕いて説明し始める。そうでもしないと、彼女には到底自分の本心が伝わらないだろうとの確信があるからだ。
「あの夜酔っ払ってた俺はその、昔の女を抱いた夢を見た。でも実際は、俺はお前を・・・・・・。ずっと後悔してた、お前の大切な初めてを・・・結果的に人違いで、記憶も無いまま抱いちまったんだからな」
「土方さん・・・・・・」
「お前を穢しちまったみたいで、苦しかったんだよ。お前に本気になればなるほど、俺はお前にはふさわしくない男なんじゃねえかって・・・・・・。今更だとは思うが、こうやって正直に全部ぶちまけて、お前に許してほしかったんだ」
言いながら、本当に身勝手な男だと土方は自分でも思う。しかし、全てを知った上で自分を愛してくれている彼女に、結局は甘えてしまう。自分はなんて情けない男なのだろうと、軽く頭を横に振った。
今更ながら罪の意識に苛まれている土方に、紗己は優しく彼の名を呼ぶ。
「土方さん」
「ん・・・」
「私、そんなにまで土方さんが苦しんでるなんて、思ってませんでした」
紗己は二人の心の距離を詰めるように布団の上を膝で歩くと、項垂れる土方と膝がぶつかるくらいまで近付き、彼の顔を覗き込んで柔らかく微笑んだ。
「私、全然怒ってなんかないですよ。だから、許すも許さないもないです。ごめんなさい、苦しかったでしょう・・・気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
決して彼女が悪いわけではないのに。むしろ傷付けられたのは彼女のほうだ。それなのに、己の痛みはそっちのけで自分を気遣ってくれる。
そんな紗己の胸が詰まるほどの優しさに、震える心をぐっと堪えて彼女の細い肩に手を乗せた。
「お前が謝ることねェだろうが・・・っ」
「でも・・・」
「お前は本当に・・・変な女だな・・・」
消え入りそうな声が紗己の耳に届いた。
肩に乗せられた土方の右手は力強く、大切なものを手放さないようにと紗己の身体の自由を奪う。
秒針が時を刻む音と、自分の体内で時を刻む心音を重ねる。そのリズムと呼吸を合わせるといくらか気が和らいだのか、土方は目の前に大人しく座る紗己に視線を落とした。
土方に肩を掴まれているため、ジッとしているしかない紗己。だがそれを嫌だと思うこともなく、自分を見つめてくる土方に柔らかな笑みを湛えている。
その彼女の表情に、土方はホッと胸を撫で下ろした。心にずっと蔓延っていた罪悪感を、ようやく払拭できたのだ。
土方は紗己の肩を掴んでいた手から力を抜くと、その手を滑らせて柔らかな二の腕をそっと撫でた。その動きがこそばゆかったのか、紗己がぴくりと肩を震わせると、骨張った大きな手は二の腕を離れ、行儀よく膝の上に添えられている彼女の両手をしっかりと包み込んだ。
「・・・なあ紗己。お前は身代わりなんかじゃねェからな」
「・・・はい」
「確かに始まりこそ人違いだったが、あの時からお前はずっと特別だよ。俺はずっとお前だけを見てきた。身代わりだと思ったことは一度もねえ」
それだけは分かってほしいと、土方は紗己に告げる。そしてまだ愛の言葉を囁き足らないのか、彼女の手を優しく握ると言葉を続けた。
「それからお前さっき言ってたよな、いつか自分のことを好きになってくれって。なんでそんな勘違いしてんだよ・・・ったく」
「・・・はあ、でも・・・」
「でも、なんだよ?」
「一度も・・・好きだって言われてないから・・・だから・・・・・・」
もごもごと口の中で小さく呟く。それを聞いた土方は、半ば呆れたような表情で肩を落として嘆息した。
「ハァ・・・気付くだろ普通。俺の態度とかでも分かるだろうが・・・」
言ってはみるが、それが分からないからこその紗己のあの発言だ。多少の気恥ずかしさはあるが、ここでハッキリと伝えておかなければ、またどんな勘違いをされるか分かったものではない。
そう思った土方は、握っていた紗己の手から自分の手を離すと、自身の頬から顎にかけてを擦り撫でた。
「あー・・・俺はそういうことをしょっちゅう口にしたりはしねェ。だから、言葉は足らないのかもしれねえが・・・」
恥ずかしさを誤魔化すために、一度大きく咳払いをしてから言葉を繋げる。
「・・・好きだよ、お前のことが。誰よりも何よりも、大切だと思ってる」
「っ・・・本当、ですか・・・・・・?」
震える声で訊き返す紗己に、土方は照れ臭いのかそっぽを向いてぶっきらぼうに答える。
「なんでこんな嘘つくんだよ、本当に決まってんだろうが! 大体、好きでもねえ女に自分の子供産んでくれなんて頼むわけねーだろ!!」
少し語気を強めて言ってから、彼女がどんな顔をしているのかが気になり、ちらり視線を向けた。
すると紗己は、瞳いっぱいに涙を浮かべていた。
「そう、なんですか・・・・・・?」
「ああ。まず第一に、俺はお前を身代わりだと思ったことは一度もない」
どうしてこんな形で・・・と思いつつ、土方は懺悔の内容を噛み砕いて説明し始める。そうでもしないと、彼女には到底自分の本心が伝わらないだろうとの確信があるからだ。
「あの夜酔っ払ってた俺はその、昔の女を抱いた夢を見た。でも実際は、俺はお前を・・・・・・。ずっと後悔してた、お前の大切な初めてを・・・結果的に人違いで、記憶も無いまま抱いちまったんだからな」
「土方さん・・・・・・」
「お前を穢しちまったみたいで、苦しかったんだよ。お前に本気になればなるほど、俺はお前にはふさわしくない男なんじゃねえかって・・・・・・。今更だとは思うが、こうやって正直に全部ぶちまけて、お前に許してほしかったんだ」
言いながら、本当に身勝手な男だと土方は自分でも思う。しかし、全てを知った上で自分を愛してくれている彼女に、結局は甘えてしまう。自分はなんて情けない男なのだろうと、軽く頭を横に振った。
今更ながら罪の意識に苛まれている土方に、紗己は優しく彼の名を呼ぶ。
「土方さん」
「ん・・・」
「私、そんなにまで土方さんが苦しんでるなんて、思ってませんでした」
紗己は二人の心の距離を詰めるように布団の上を膝で歩くと、項垂れる土方と膝がぶつかるくらいまで近付き、彼の顔を覗き込んで柔らかく微笑んだ。
「私、全然怒ってなんかないですよ。だから、許すも許さないもないです。ごめんなさい、苦しかったでしょう・・・気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
決して彼女が悪いわけではないのに。むしろ傷付けられたのは彼女のほうだ。それなのに、己の痛みはそっちのけで自分を気遣ってくれる。
そんな紗己の胸が詰まるほどの優しさに、震える心をぐっと堪えて彼女の細い肩に手を乗せた。
「お前が謝ることねェだろうが・・・っ」
「でも・・・」
「お前は本当に・・・変な女だな・・・」
消え入りそうな声が紗己の耳に届いた。
肩に乗せられた土方の右手は力強く、大切なものを手放さないようにと紗己の身体の自由を奪う。
秒針が時を刻む音と、自分の体内で時を刻む心音を重ねる。そのリズムと呼吸を合わせるといくらか気が和らいだのか、土方は目の前に大人しく座る紗己に視線を落とした。
土方に肩を掴まれているため、ジッとしているしかない紗己。だがそれを嫌だと思うこともなく、自分を見つめてくる土方に柔らかな笑みを湛えている。
その彼女の表情に、土方はホッと胸を撫で下ろした。心にずっと蔓延っていた罪悪感を、ようやく払拭できたのだ。
土方は紗己の肩を掴んでいた手から力を抜くと、その手を滑らせて柔らかな二の腕をそっと撫でた。その動きがこそばゆかったのか、紗己がぴくりと肩を震わせると、骨張った大きな手は二の腕を離れ、行儀よく膝の上に添えられている彼女の両手をしっかりと包み込んだ。
「・・・なあ紗己。お前は身代わりなんかじゃねェからな」
「・・・はい」
「確かに始まりこそ人違いだったが、あの時からお前はずっと特別だよ。俺はずっとお前だけを見てきた。身代わりだと思ったことは一度もねえ」
それだけは分かってほしいと、土方は紗己に告げる。そしてまだ愛の言葉を囁き足らないのか、彼女の手を優しく握ると言葉を続けた。
「それからお前さっき言ってたよな、いつか自分のことを好きになってくれって。なんでそんな勘違いしてんだよ・・・ったく」
「・・・はあ、でも・・・」
「でも、なんだよ?」
「一度も・・・好きだって言われてないから・・・だから・・・・・・」
もごもごと口の中で小さく呟く。それを聞いた土方は、半ば呆れたような表情で肩を落として嘆息した。
「ハァ・・・気付くだろ普通。俺の態度とかでも分かるだろうが・・・」
言ってはみるが、それが分からないからこその紗己のあの発言だ。多少の気恥ずかしさはあるが、ここでハッキリと伝えておかなければ、またどんな勘違いをされるか分かったものではない。
そう思った土方は、握っていた紗己の手から自分の手を離すと、自身の頬から顎にかけてを擦り撫でた。
「あー・・・俺はそういうことをしょっちゅう口にしたりはしねェ。だから、言葉は足らないのかもしれねえが・・・」
恥ずかしさを誤魔化すために、一度大きく咳払いをしてから言葉を繋げる。
「・・・好きだよ、お前のことが。誰よりも何よりも、大切だと思ってる」
「っ・・・本当、ですか・・・・・・?」
震える声で訊き返す紗己に、土方は照れ臭いのかそっぽを向いてぶっきらぼうに答える。
「なんでこんな嘘つくんだよ、本当に決まってんだろうが! 大体、好きでもねえ女に自分の子供産んでくれなんて頼むわけねーだろ!!」
少し語気を強めて言ってから、彼女がどんな顔をしているのかが気になり、ちらり視線を向けた。
すると紗己は、瞳いっぱいに涙を浮かべていた。