第六章
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――――――
「・・・よし、もうそろそろいいだろ・・・」
ブツブツと呟きながら、寝間着に袖を通す男が一人。
土方は今、脱衣場にいる。湯上がりの火照った体からなかなか熱が引かないのは、風呂場からの熱気を受けているから――だけではない。
今頃アイツ、布団敷いて待ってんだよな・・・そう思うだけで、興奮で血圧がぐんと上がりそうだ。
どんな顔で部屋に戻るのが自然なんだろうかと、いろいろと想像してみては気恥ずかしくなってしまい、なかなか脱衣場から出られずにいる。
昼過ぎからずっと大広間で行われていた宴は、夜になってようやく終わりを迎えた。実はまだ第三陣が大広間で飲み続けているのだが、もうそれは既に祝言ではなくただの宴会だ。
そのばか騒ぎに、新郎新婦がいつまでも付き合ってはいられない。何故ならば、今夜は二人にとって大事な大事な――新婚初夜だからだ。
風呂場からふわふわと漂ってくる石鹸の匂いに、昂る気持ちは治まりそうにない。土方は腰辺りで適当に縛っていた帯をきちんと締め直すと、とりあえず脱衣場を後にした。
自室に戻るために縁側を歩く。火照る身体と頭に秋の夜風は心地良く、ここらで少し落ち着こうと、土方は中庭の辺りで足を止めた。
洗濯物を干す紗己を見るのが好きで、仕事の合間などには遠回りであってもよくここを通ったものだ。
青い空の下、真っ白い洗濯物を干していたあの紗己が、今は白い布団に横たわり自分を待っている――という妄想が脳内で繰り広げられ、土方は一人興奮にその身を震わせる。
初夜、初夜なんだよ初夜! 気兼ねなくヤっても構わねえ、いや、ヤっても許される、いやいやヤって然るべき夜なんだよ初夜!! いいんだよな? やっと、ようやく・・・いいんだよなっ!?
「いいっ・・・ん? あ、そういや・・・」
散々盛り上がっていた頭に、とある現実がふと過ぎる。
今、紗己は妊娠中だ。今夜彼女と夫婦の契りを交わすとなれば、それは即ち妊娠中の彼女を抱くということになる。
以前紗己の実家でも考えていたのだが、戻ってからは忙しくて調べる暇も無かった、『妊娠中の夫婦生活の是非』。これをきちんと確認していない中、このまま今夜彼女を抱いてもいいのだろうか。そんな考えが、土方の興奮を抑えにかかってきた。
駄目、ということはないだろう。もし本当に絶対駄目だと言うなら、産婦人科での初診の際に、医師が何らかの形でそう伝えてきたはずだ。
煙草は駄目だと言われたが、それを駄目だと言われた記憶は無い。思いはするも、自信をもって「大丈夫だ!」と言えるだけの確たるものも無い。
ここんとこ忙しかったし、いろいろありすぎてそこまで考える余裕無かったからな・・・さっさと調べとくべきだったか。
今更思ってみても遅いけどな。土方は中庭を眺めながら嘆息する。
寝室では、先に風呂を上がった紗己が待っている。据え膳食わぬは・・・というわけではないが、単純にその状態で我慢が出来そうにない。
ここは一つ、あくまでも『契り』を交わすという意味合いでならいいだろう。あまり激しくさえしなければ、一回だけならそんなに負荷にもならないだろう。絶対禁止事項なら、もっと世の中にそう広まってるはずだ。
頭の中で散々言い訳を並べて、ようやく最終決断を自らに下した。今夜、初夜らしい夜を過ごす――と。
とはいえ、どうしても紗己が嫌だと言ってきたらその時はまた別だ。肉体の造りからして女は受け身だし、腹に子を宿しているのだから多少は過敏になっても致し方無い。
まァ・・・嫌がられたら、またそん時に考えりゃいいか。とりあえず今夜は極力激しくしねェで、出来るだけ浅く短めに・・・あ、今日のところは中に出さねェ方がいいよな・・・・・・。
なんて生々しくシミュレーションをしていたら、過度な興奮により鼻息が荒くなった。
「中・・・ナカっておいっ」
一人ノリ突っ込みまでしてみせる。誰かが見ていたとしたら、それはそれは異様な光景だろう。湯上がりの男が縁側に佇み庭を眺めながら、赤い顔をしてニヤニヤと笑っているのだ。
だが、いつまでも果てない期待に胸を膨らませ、頬を緩ませているわけにもいかない。あまり遅くなると、紗己も心配してしまうだろう。
そう思った土方は、両手でぱちんと頬を叩き気合いを入れると、気持ち息を整えてから再び歩き始めた。
「・・・よし、もうそろそろいいだろ・・・」
ブツブツと呟きながら、寝間着に袖を通す男が一人。
土方は今、脱衣場にいる。湯上がりの火照った体からなかなか熱が引かないのは、風呂場からの熱気を受けているから――だけではない。
今頃アイツ、布団敷いて待ってんだよな・・・そう思うだけで、興奮で血圧がぐんと上がりそうだ。
どんな顔で部屋に戻るのが自然なんだろうかと、いろいろと想像してみては気恥ずかしくなってしまい、なかなか脱衣場から出られずにいる。
昼過ぎからずっと大広間で行われていた宴は、夜になってようやく終わりを迎えた。実はまだ第三陣が大広間で飲み続けているのだが、もうそれは既に祝言ではなくただの宴会だ。
そのばか騒ぎに、新郎新婦がいつまでも付き合ってはいられない。何故ならば、今夜は二人にとって大事な大事な――新婚初夜だからだ。
風呂場からふわふわと漂ってくる石鹸の匂いに、昂る気持ちは治まりそうにない。土方は腰辺りで適当に縛っていた帯をきちんと締め直すと、とりあえず脱衣場を後にした。
自室に戻るために縁側を歩く。火照る身体と頭に秋の夜風は心地良く、ここらで少し落ち着こうと、土方は中庭の辺りで足を止めた。
洗濯物を干す紗己を見るのが好きで、仕事の合間などには遠回りであってもよくここを通ったものだ。
青い空の下、真っ白い洗濯物を干していたあの紗己が、今は白い布団に横たわり自分を待っている――という妄想が脳内で繰り広げられ、土方は一人興奮にその身を震わせる。
初夜、初夜なんだよ初夜! 気兼ねなくヤっても構わねえ、いや、ヤっても許される、いやいやヤって然るべき夜なんだよ初夜!! いいんだよな? やっと、ようやく・・・いいんだよなっ!?
「いいっ・・・ん? あ、そういや・・・」
散々盛り上がっていた頭に、とある現実がふと過ぎる。
今、紗己は妊娠中だ。今夜彼女と夫婦の契りを交わすとなれば、それは即ち妊娠中の彼女を抱くということになる。
以前紗己の実家でも考えていたのだが、戻ってからは忙しくて調べる暇も無かった、『妊娠中の夫婦生活の是非』。これをきちんと確認していない中、このまま今夜彼女を抱いてもいいのだろうか。そんな考えが、土方の興奮を抑えにかかってきた。
駄目、ということはないだろう。もし本当に絶対駄目だと言うなら、産婦人科での初診の際に、医師が何らかの形でそう伝えてきたはずだ。
煙草は駄目だと言われたが、それを駄目だと言われた記憶は無い。思いはするも、自信をもって「大丈夫だ!」と言えるだけの確たるものも無い。
ここんとこ忙しかったし、いろいろありすぎてそこまで考える余裕無かったからな・・・さっさと調べとくべきだったか。
今更思ってみても遅いけどな。土方は中庭を眺めながら嘆息する。
寝室では、先に風呂を上がった紗己が待っている。据え膳食わぬは・・・というわけではないが、単純にその状態で我慢が出来そうにない。
ここは一つ、あくまでも『契り』を交わすという意味合いでならいいだろう。あまり激しくさえしなければ、一回だけならそんなに負荷にもならないだろう。絶対禁止事項なら、もっと世の中にそう広まってるはずだ。
頭の中で散々言い訳を並べて、ようやく最終決断を自らに下した。今夜、初夜らしい夜を過ごす――と。
とはいえ、どうしても紗己が嫌だと言ってきたらその時はまた別だ。肉体の造りからして女は受け身だし、腹に子を宿しているのだから多少は過敏になっても致し方無い。
まァ・・・嫌がられたら、またそん時に考えりゃいいか。とりあえず今夜は極力激しくしねェで、出来るだけ浅く短めに・・・あ、今日のところは中に出さねェ方がいいよな・・・・・・。
なんて生々しくシミュレーションをしていたら、過度な興奮により鼻息が荒くなった。
「中・・・ナカっておいっ」
一人ノリ突っ込みまでしてみせる。誰かが見ていたとしたら、それはそれは異様な光景だろう。湯上がりの男が縁側に佇み庭を眺めながら、赤い顔をしてニヤニヤと笑っているのだ。
だが、いつまでも果てない期待に胸を膨らませ、頬を緩ませているわけにもいかない。あまり遅くなると、紗己も心配してしまうだろう。
そう思った土方は、両手でぱちんと頬を叩き気合いを入れると、気持ち息を整えてから再び歩き始めた。