序章
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ようやく肩の荷も下りて気を落ち着かせると、土方は先程畳に散らかした煙草を一本取り火を点けた。
その仕草をじっと目で追う紗己を見て人知れずほくそ笑むと、首元のスカーフを指で緩める。完全に寛ぎ体勢だ。
横を向いてフゥッと紫煙を吐きながら、目線だけを紗己に向けた。
「そういや・・・お前なんで俺が来るって分かったんだ?」
「来るって、え、今ですか?」
「いや、そうじゃなくて朝だ、朝」
謝罪をしようとずっと捜し回っていたのに、どうも一足先に逃げられちまってた、と土方は小さく笑う。
その姿に、もう怒ってないんだと理解した紗己は、安心したように口を開いた。
「だって、分かりますよ。匂いがね、するんです」
「あ? 匂い?」
「ええ。煙草の匂いが、副長さんが来ることを教えてくれるんです」
「あー・・・」
紗己の言葉に、土方は小さく唸った。
言われてみれば、そうだよな。自分の居場所を周囲に教え歩いてるようなものだと思うと、少しだけ気恥ずかしい。
これを機に煙草を止めてしまおうかと一瞬思いもしたが、目の前の少女があまりにも嬉しそうに笑うので、その考え自体をやっぱり止めておく。
「そいつは盲点だったな。案外自分のことには気付かねーもんだ」
少しだけ短くなった煙草を、灰皿代わりの器に押し付けると、土方はゆっくりと立ち上がった。
部屋を出る意が伝わったのか、紗己も合わせて腰を上げる。
「それじゃあそろそろ行く。長々と悪かったな」
去ることを惜しむように立ち止まって振り返り、紗己に告げる。
歩きながら言えばいいものを、わざわざ立ち止まってしまう理由が自分でも分からない。いや、分かりたくない。
深い意味なんてないない、こんなのただの形式的な挨拶だろ。別に居心地いいとか思ってねーから!
そう思う事がすでに居心地が良いと感じている証拠なのだが、その考えをも無理やり否定する。
「そ、それじゃあな・・・」
見送る紗己から目を逸らし部屋を出ようとするが、意思とは裏腹にまた足が止まってしまった。
「副長さん?」
「・・・・・・」
これで本当に良かったのか――? 思う自分がいる。
なあ紗己、お前本当にこれでいいのか?俺を許しちまっていいのか?
受け入れることは出来ないと言いながら、後ろ髪を引かれる思いに気が焦る。なんて矛盾した考えなんだろう。
(駄目だ・・・このままじゃ雰囲気に流される!)
紗己ではなく、自分が作り出している雰囲気に自らが呑まれてしまいそうで、土方は頭を振ってそれを拒否する。
「副長さん、どうしたんですか?」
「な、なんでもねえ! それじゃあなっ」
気が急いていたために、部屋を出る瞬間に敷居に躓きつんのめったが、そ知らぬ顔をして足早に去っていった。
――――――
(ああ、何やってんだか俺は・・・・・・)
自室に戻り着替えを済ませると、土方はどてっと畳に寝転がった。今日一日の精神疲労がどっと出てきたようで、書類整理をする気にもならない。
これで・・・良かったんだ。あとは、明日っからアイツがどういう態度で接してくるかだよな。
別に突き放すつもりはない。けれど、受け入れることは出来ないと言った以上、それを覆すつもりもない。
(ありゃァ、物分りがいいか馬鹿かの紙一重だな)
紗己の言動を一から思い出し、呆れ笑いが込み上げる。
・・・ったく、俺なんかに気ィ遣いやがって。もっと自分を大事にしろよ・・・って、俺が言えた義理じゃねーか。
自分の勝手さを思い出し、またも呆れ笑いが込み上げた。
その仕草をじっと目で追う紗己を見て人知れずほくそ笑むと、首元のスカーフを指で緩める。完全に寛ぎ体勢だ。
横を向いてフゥッと紫煙を吐きながら、目線だけを紗己に向けた。
「そういや・・・お前なんで俺が来るって分かったんだ?」
「来るって、え、今ですか?」
「いや、そうじゃなくて朝だ、朝」
謝罪をしようとずっと捜し回っていたのに、どうも一足先に逃げられちまってた、と土方は小さく笑う。
その姿に、もう怒ってないんだと理解した紗己は、安心したように口を開いた。
「だって、分かりますよ。匂いがね、するんです」
「あ? 匂い?」
「ええ。煙草の匂いが、副長さんが来ることを教えてくれるんです」
「あー・・・」
紗己の言葉に、土方は小さく唸った。
言われてみれば、そうだよな。自分の居場所を周囲に教え歩いてるようなものだと思うと、少しだけ気恥ずかしい。
これを機に煙草を止めてしまおうかと一瞬思いもしたが、目の前の少女があまりにも嬉しそうに笑うので、その考え自体をやっぱり止めておく。
「そいつは盲点だったな。案外自分のことには気付かねーもんだ」
少しだけ短くなった煙草を、灰皿代わりの器に押し付けると、土方はゆっくりと立ち上がった。
部屋を出る意が伝わったのか、紗己も合わせて腰を上げる。
「それじゃあそろそろ行く。長々と悪かったな」
去ることを惜しむように立ち止まって振り返り、紗己に告げる。
歩きながら言えばいいものを、わざわざ立ち止まってしまう理由が自分でも分からない。いや、分かりたくない。
深い意味なんてないない、こんなのただの形式的な挨拶だろ。別に居心地いいとか思ってねーから!
そう思う事がすでに居心地が良いと感じている証拠なのだが、その考えをも無理やり否定する。
「そ、それじゃあな・・・」
見送る紗己から目を逸らし部屋を出ようとするが、意思とは裏腹にまた足が止まってしまった。
「副長さん?」
「・・・・・・」
これで本当に良かったのか――? 思う自分がいる。
なあ紗己、お前本当にこれでいいのか?俺を許しちまっていいのか?
受け入れることは出来ないと言いながら、後ろ髪を引かれる思いに気が焦る。なんて矛盾した考えなんだろう。
(駄目だ・・・このままじゃ雰囲気に流される!)
紗己ではなく、自分が作り出している雰囲気に自らが呑まれてしまいそうで、土方は頭を振ってそれを拒否する。
「副長さん、どうしたんですか?」
「な、なんでもねえ! それじゃあなっ」
気が急いていたために、部屋を出る瞬間に敷居に躓きつんのめったが、そ知らぬ顔をして足早に去っていった。
――――――
(ああ、何やってんだか俺は・・・・・・)
自室に戻り着替えを済ませると、土方はどてっと畳に寝転がった。今日一日の精神疲労がどっと出てきたようで、書類整理をする気にもならない。
これで・・・良かったんだ。あとは、明日っからアイツがどういう態度で接してくるかだよな。
別に突き放すつもりはない。けれど、受け入れることは出来ないと言った以上、それを覆すつもりもない。
(ありゃァ、物分りがいいか馬鹿かの紙一重だな)
紗己の言動を一から思い出し、呆れ笑いが込み上げる。
・・・ったく、俺なんかに気ィ遣いやがって。もっと自分を大事にしろよ・・・って、俺が言えた義理じゃねーか。
自分の勝手さを思い出し、またも呆れ笑いが込み上げた。