序章
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
癖のある声が狭い室内に響いた。黙って自分を見つめている紗己に、チクリと胸が痛む。
何とか言ってくれよ・・・卑怯だと罵ってくれたって構やしねーんだ。どうしてほしいかなんて訊いておいて、道筋を俺が断ってんだからな・・・・・・。
だが土方の心中とは裏腹に、紗己の表情はそう重たいものではなかった。
「やっぱり大変なんですね、副長さん」
「・・・は?」
思わず、頓狂な声が漏れ出てしまった。コイツ何言ってんだ?
「毎日命を削って働いてるんですね、だからストレス溜まっちゃうんじゃないですか?」
「・・・」
穏やかな表情で話す紗己の言葉に、土方は思わず我が耳を疑った。
なんなんだこの女・・・さっきの俺の台詞からなんでそんな返しがくんだよ!
大体なんか捉え方変じゃねえ? 生きるか死ぬかってのと命を削って働くってのはニュアンスが違・・・っていうか結局ストレスの話に落ち着くのかよ!!
どう切り替えしたらいいものか、唖然としている土方をさして気にすることなく、紗己は持論を貫く。
「そんなにも毎日身を削ってらしたら、お酒に逃げたくなる日もありますよね」
「・・・・・・」
何となくは正解なのか・・・? 土方は眉を寄せて、まるで珍獣でも見るかのように紗己を見つめる。
「ストレスがいっぱいだから、ひどい酔い方しちゃったんですね・・・うん、やっぱりあれは事故です、仕事の重圧が生み出した、事故なんです。だから、私が副長さんのストレスを少しでも和らげる事が出来たんなら、それはそれで良かったと思います」
究極のポジティブっつーか・・・ただの馬鹿か・・・・・・?
とてもじゃないが理解が及ばない紗己の発言に、
「頭痛ェ・・・」
土方は盛大に嘆息すると、がっくりと肩を落とし、骨張った手で額を覆った。
「大丈夫ですか、薬まだありますけど・・・」
「いや、いい・・・・・・」
首の後ろを撫でると、土方は大きく息を吐いた。
「・・・んで、お前結局俺にどうしてほしいんだ?」
「え? 別に何も・・・」
本当に紗己は何も求めていないのだろうかと邪推してみるが、これまでの流れを反芻すると、全くの無欲なのだろうと思う。
「そういうわけにもいかねーだろ、俺に出来る範囲でなんかさせてくれ」
自ら範囲指定してくるやり口を気にすることはないものの、紗己は急に真剣な面持ちになった。
「・・・それなら、私このまま、ここに居てもいいですか?」
言葉の真意が汲み取れず、土方は首を傾げる。
「ああ? 居てもいいって・・・誰かに辞めろって言われたのか?」
「・・・いいえ。でも、副長さんからそう言われるんじゃないかって思って・・・・・・」
そう言うと、紗己はそっと目を伏せた。
なんでそう思うんだよ、変な女だな。自分のされた事は一切重たく受け止めてないくせに、そんなこと気にしてたのか。
頬が緩む。笑いそうになるのを堪えて、土方は軽い調子で言葉を放った。
「言わねーよ。自分都合で真面目に働いてるヤツ追い出すほど、俺は勝手じゃねーからな。それに・・・そんなこと考えてもみなかったよ」
「ほんとですか!?」
「ああ、男に二言はねェよ」
無表情を装いながらも、その口端は緩やかに上がっている。
「良かった、嬉しい・・・・・・」
小さく呟くと、紗己はフワッと笑ってみせた。
その姿を見て土方もまた、眉を寄せながら呆れたように笑う。
ほんと、変な女だ。胸中で呟いた。
胸のあたりがキュッと熱くなったような気もするが、それは隊服を着ているせいだと思い込むことにした。
何とか言ってくれよ・・・卑怯だと罵ってくれたって構やしねーんだ。どうしてほしいかなんて訊いておいて、道筋を俺が断ってんだからな・・・・・・。
だが土方の心中とは裏腹に、紗己の表情はそう重たいものではなかった。
「やっぱり大変なんですね、副長さん」
「・・・は?」
思わず、頓狂な声が漏れ出てしまった。コイツ何言ってんだ?
「毎日命を削って働いてるんですね、だからストレス溜まっちゃうんじゃないですか?」
「・・・」
穏やかな表情で話す紗己の言葉に、土方は思わず我が耳を疑った。
なんなんだこの女・・・さっきの俺の台詞からなんでそんな返しがくんだよ!
大体なんか捉え方変じゃねえ? 生きるか死ぬかってのと命を削って働くってのはニュアンスが違・・・っていうか結局ストレスの話に落ち着くのかよ!!
どう切り替えしたらいいものか、唖然としている土方をさして気にすることなく、紗己は持論を貫く。
「そんなにも毎日身を削ってらしたら、お酒に逃げたくなる日もありますよね」
「・・・・・・」
何となくは正解なのか・・・? 土方は眉を寄せて、まるで珍獣でも見るかのように紗己を見つめる。
「ストレスがいっぱいだから、ひどい酔い方しちゃったんですね・・・うん、やっぱりあれは事故です、仕事の重圧が生み出した、事故なんです。だから、私が副長さんのストレスを少しでも和らげる事が出来たんなら、それはそれで良かったと思います」
究極のポジティブっつーか・・・ただの馬鹿か・・・・・・?
とてもじゃないが理解が及ばない紗己の発言に、
「頭痛ェ・・・」
土方は盛大に嘆息すると、がっくりと肩を落とし、骨張った手で額を覆った。
「大丈夫ですか、薬まだありますけど・・・」
「いや、いい・・・・・・」
首の後ろを撫でると、土方は大きく息を吐いた。
「・・・んで、お前結局俺にどうしてほしいんだ?」
「え? 別に何も・・・」
本当に紗己は何も求めていないのだろうかと邪推してみるが、これまでの流れを反芻すると、全くの無欲なのだろうと思う。
「そういうわけにもいかねーだろ、俺に出来る範囲でなんかさせてくれ」
自ら範囲指定してくるやり口を気にすることはないものの、紗己は急に真剣な面持ちになった。
「・・・それなら、私このまま、ここに居てもいいですか?」
言葉の真意が汲み取れず、土方は首を傾げる。
「ああ? 居てもいいって・・・誰かに辞めろって言われたのか?」
「・・・いいえ。でも、副長さんからそう言われるんじゃないかって思って・・・・・・」
そう言うと、紗己はそっと目を伏せた。
なんでそう思うんだよ、変な女だな。自分のされた事は一切重たく受け止めてないくせに、そんなこと気にしてたのか。
頬が緩む。笑いそうになるのを堪えて、土方は軽い調子で言葉を放った。
「言わねーよ。自分都合で真面目に働いてるヤツ追い出すほど、俺は勝手じゃねーからな。それに・・・そんなこと考えてもみなかったよ」
「ほんとですか!?」
「ああ、男に二言はねェよ」
無表情を装いながらも、その口端は緩やかに上がっている。
「良かった、嬉しい・・・・・・」
小さく呟くと、紗己はフワッと笑ってみせた。
その姿を見て土方もまた、眉を寄せながら呆れたように笑う。
ほんと、変な女だ。胸中で呟いた。
胸のあたりがキュッと熱くなったような気もするが、それは隊服を着ているせいだと思い込むことにした。