第六章
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どうしたトシ、紗己ちゃんがあんまりにも綺麗だから声も出ないか!」
声のする方、視界の端に映った男の姿に、土方は顔を引き攣らせた。
「え゛っ、近藤さん!?」
ガハハと豪快に笑いながら、紗己と土方の間に歩を進めてきたのは近藤だった。正装に身を包んだ彼は、土方が入ってくる前から既にここに居たらしい。
紗己しか視界に入っておらず、近藤が居たことにも全く気付かなかった土方は、思わぬ展開に呆然としている。だが、自分の存在が土方に言葉を失わせているとは露程も思わない近藤は、なおも嬉しそうに土方に笑いかけた。
「なんだなんだ、こんなに綺麗な紗己ちゃんに何か言ってやらんか!」
ガシガシと笑顔で肩を叩かれ、土方は何とも複雑な面持ちで近藤を一瞥した。何よりもまず、何故自分よりも先にこの部屋に入っていたのかそこを突っ込みたい。
「・・・何でアンタがここに居るんだ・・・・・・」
「え、俺? いやぁハハハ、早く紗己ちゃんの花嫁姿が見たくてなあ。お前も来てるだろうと思ってたんだが、まだだったんで中で待ってたんだよ!」
「・・・そうか・・・・・・」
あまりに明るく言われ、土方は頷かざるを得ない。
こういう時って、普通俺が一番最初にここに・・・ハァ・・・もういいか・・・・・・。
自分が一番に彼女の花嫁姿を見たかったし、当然見れるものと思っていたのに。そのため、彼女が着替えをしている間は一旦自室に戻っていたのだ。淡い夢を見事に打ち砕かれ、土方はがっくりと肩を落とした。
けれど相手は大切な仲間だ。悪気があるような人間ではないと誰よりもよく知っているし、今回のことでは心から感謝している。何せ、彼が『結婚』と言い出し進めてくれなければ、今このようにはなっていなかったかもしれないのだ。
土方は小さく吐息すると、
「近藤さん、ありがとな」
少しはにかんで言った。唐突に礼を言われ、意味がわからない近藤だったが、またも土方の肩を叩いて豪快に笑った。
「うわぁ、すごい綺麗だよ紗己ちゃん!」
土方より後に入ってきた山崎が、三白眼を輝かせて彼女の元へと近寄る。すると、土方の肩から手を下ろした近藤が、今度はそばに来た山崎の背中をバシバシと叩いた。
「そうだろそうだろ! そうなんだよ、本当に綺麗だろ彼女!!」
「あ゛だっ、痛い局長! ちょっ・・・力強すぎますって!」
「おお、すまんすまん」
詫びながらも、何故かご満悦な様子の近藤。その姿はまるで、娘を誉められ目を細める父親のようだ。
非常に和気あいあいとした雰囲気。その中で、まだ紗己に対し賛辞を贈っていない上司の存在に気付いた山崎は、にまにまと笑いながら彼の脇腹を肘で軽くつついた。
「副長、何黙ってんですかー。ほら、すごい綺麗ですよね! ねっ!!」
「ちょっ、ばっ・・・テメッ」
やもすれば、酷い返り討ちに遭いそうな山崎の迂闊な行為。しかし今の土方は、新妻を前に大いに照れているため、普段のような迫力は鳴りを潜めている。それを分かった上での確信的行動だ。
部下の態度に若干腹立たしさを覚えるも、この幸せなムードにすっかり流され、怒りよりも恥ずかしさが上回っている。やや強引とも言える誘導に、まんまと引っ掛かってしまった。
「あー、いやあの、その・・・」
二人のやり取りをジッと見ていた紗己と目が合い、少し気まずそうに頬を掻く。
「そそ、そのっ・・・き・・・キレ・・・・・・・・・・・・・・・似合ってる、ぞ」
一部、訂正したらしい。
驚くほど長い間を置いて言い放った言葉は、一番肝心な部分がかなり聞き取りにくい、低い呟きとなった。だが、彼のその声の特性もすっかり耳に馴染んでいる紗己には、しっかりと聞こえていたようだ。
「副長さん・・・・・・!」
どれだけ大勢に誉めあげられようと、ただ一人、愛する男からの不器用な賛辞は絶大な効果。紗己は嬉しそうに頬を染め、膝の上で自身の手をキュッと握った。
何とも甘い空気が流れている。見ている方が照れてしまうような光景に、それを茶化すように山崎が口を挟んだ。
「ちょっとちょっと紗己ちゃん! もう籍も入れたんだし、『副長さん』は無しにしたら?」
「え、でっでも・・・」
いつの間にか、誰も気付かぬうちにごく自然に変えていくのならいざ知らず、言い慣れた呼び名をいきなり変更出来るほど器用ではない紗己は、山崎の言葉に困惑を隠せない。確かに、『副長さん』はどこかよそよそしい雰囲気が漂う呼び名だけども。
山崎が言うように、二人は今朝のうちに入籍を済ませてきた。
土方は明日も非番なのだが、どうせなら今日一日で全部済ませてしまった方が気が落ち着くと、彼の意思のもと二人で役所へと足を運んだのだ。
さすがに大安吉日とあって、役所は朝から結構な混み具合だった。人目も憚らずイチャつくカップルなどもいて、隣の土方がいつ苛立ちを爆発させるかと気が気ではなかった紗己だったが、彼は時折鬱陶しそうに眉をしかめるだけにとどまっていた。
一生の記念になる日だ、彼女のためにもここは堪えなければ――と、沸き立つ不快感を抑制することに集中していた土方。粗暴な割には、案外フェミニストなところもあるのだ。
声のする方、視界の端に映った男の姿に、土方は顔を引き攣らせた。
「え゛っ、近藤さん!?」
ガハハと豪快に笑いながら、紗己と土方の間に歩を進めてきたのは近藤だった。正装に身を包んだ彼は、土方が入ってくる前から既にここに居たらしい。
紗己しか視界に入っておらず、近藤が居たことにも全く気付かなかった土方は、思わぬ展開に呆然としている。だが、自分の存在が土方に言葉を失わせているとは露程も思わない近藤は、なおも嬉しそうに土方に笑いかけた。
「なんだなんだ、こんなに綺麗な紗己ちゃんに何か言ってやらんか!」
ガシガシと笑顔で肩を叩かれ、土方は何とも複雑な面持ちで近藤を一瞥した。何よりもまず、何故自分よりも先にこの部屋に入っていたのかそこを突っ込みたい。
「・・・何でアンタがここに居るんだ・・・・・・」
「え、俺? いやぁハハハ、早く紗己ちゃんの花嫁姿が見たくてなあ。お前も来てるだろうと思ってたんだが、まだだったんで中で待ってたんだよ!」
「・・・そうか・・・・・・」
あまりに明るく言われ、土方は頷かざるを得ない。
こういう時って、普通俺が一番最初にここに・・・ハァ・・・もういいか・・・・・・。
自分が一番に彼女の花嫁姿を見たかったし、当然見れるものと思っていたのに。そのため、彼女が着替えをしている間は一旦自室に戻っていたのだ。淡い夢を見事に打ち砕かれ、土方はがっくりと肩を落とした。
けれど相手は大切な仲間だ。悪気があるような人間ではないと誰よりもよく知っているし、今回のことでは心から感謝している。何せ、彼が『結婚』と言い出し進めてくれなければ、今このようにはなっていなかったかもしれないのだ。
土方は小さく吐息すると、
「近藤さん、ありがとな」
少しはにかんで言った。唐突に礼を言われ、意味がわからない近藤だったが、またも土方の肩を叩いて豪快に笑った。
「うわぁ、すごい綺麗だよ紗己ちゃん!」
土方より後に入ってきた山崎が、三白眼を輝かせて彼女の元へと近寄る。すると、土方の肩から手を下ろした近藤が、今度はそばに来た山崎の背中をバシバシと叩いた。
「そうだろそうだろ! そうなんだよ、本当に綺麗だろ彼女!!」
「あ゛だっ、痛い局長! ちょっ・・・力強すぎますって!」
「おお、すまんすまん」
詫びながらも、何故かご満悦な様子の近藤。その姿はまるで、娘を誉められ目を細める父親のようだ。
非常に和気あいあいとした雰囲気。その中で、まだ紗己に対し賛辞を贈っていない上司の存在に気付いた山崎は、にまにまと笑いながら彼の脇腹を肘で軽くつついた。
「副長、何黙ってんですかー。ほら、すごい綺麗ですよね! ねっ!!」
「ちょっ、ばっ・・・テメッ」
やもすれば、酷い返り討ちに遭いそうな山崎の迂闊な行為。しかし今の土方は、新妻を前に大いに照れているため、普段のような迫力は鳴りを潜めている。それを分かった上での確信的行動だ。
部下の態度に若干腹立たしさを覚えるも、この幸せなムードにすっかり流され、怒りよりも恥ずかしさが上回っている。やや強引とも言える誘導に、まんまと引っ掛かってしまった。
「あー、いやあの、その・・・」
二人のやり取りをジッと見ていた紗己と目が合い、少し気まずそうに頬を掻く。
「そそ、そのっ・・・き・・・キレ・・・・・・・・・・・・・・・似合ってる、ぞ」
一部、訂正したらしい。
驚くほど長い間を置いて言い放った言葉は、一番肝心な部分がかなり聞き取りにくい、低い呟きとなった。だが、彼のその声の特性もすっかり耳に馴染んでいる紗己には、しっかりと聞こえていたようだ。
「副長さん・・・・・・!」
どれだけ大勢に誉めあげられようと、ただ一人、愛する男からの不器用な賛辞は絶大な効果。紗己は嬉しそうに頬を染め、膝の上で自身の手をキュッと握った。
何とも甘い空気が流れている。見ている方が照れてしまうような光景に、それを茶化すように山崎が口を挟んだ。
「ちょっとちょっと紗己ちゃん! もう籍も入れたんだし、『副長さん』は無しにしたら?」
「え、でっでも・・・」
いつの間にか、誰も気付かぬうちにごく自然に変えていくのならいざ知らず、言い慣れた呼び名をいきなり変更出来るほど器用ではない紗己は、山崎の言葉に困惑を隠せない。確かに、『副長さん』はどこかよそよそしい雰囲気が漂う呼び名だけども。
山崎が言うように、二人は今朝のうちに入籍を済ませてきた。
土方は明日も非番なのだが、どうせなら今日一日で全部済ませてしまった方が気が落ち着くと、彼の意思のもと二人で役所へと足を運んだのだ。
さすがに大安吉日とあって、役所は朝から結構な混み具合だった。人目も憚らずイチャつくカップルなどもいて、隣の土方がいつ苛立ちを爆発させるかと気が気ではなかった紗己だったが、彼は時折鬱陶しそうに眉をしかめるだけにとどまっていた。
一生の記念になる日だ、彼女のためにもここは堪えなければ――と、沸き立つ不快感を抑制することに集中していた土方。粗暴な割には、案外フェミニストなところもあるのだ。