2005年7月
「だからさ、コレで釣れねえかなーと思いつつ、実験してた感じ?」
「実験って?」
「なんだよ悟知りたがりかー?
まあいいや。
オレの術式さ、結界を作るだけなんだわ。ただ、一言で結界っつっても大きさや形状、数、強度、効果とかなんか結構弄れんのよ」
大堰が手元の鏡をクルクルと操る。
見た目に変化はない様に見えるが、五条曰くチラチラしているらしい。
保護した住職たちも大堰が乗っている結界内に居るとのことで、恐らく視覚妨害や呪力を遮断する様な効果を結界に持たせることができるのだろう。
「大きさだの形状だのはいつでも試せるけどさ、強度とか効果とかこーゆー時しか試せねえじゃん?
だから実験してた」
「遊んでたんだろ」
「そうとも言う」
さも当然の様に言っているが、特級呪物とは本来慎重に扱われるべき代物だ。
間違っても手の上で転がす様に扱って良いものではない。
しかし、同じようなトーンで会話を繰り広げる五条もおそらく大堰と同様の扱いをするのだろう。
呪術師の価値観の違いに唯一非術師出身である夏油からはため息しか聞こえてこない。
「世那後ろだ!」
隠れていた呪霊を五条の眼が一早く捉えた。
声に反応した大堰が振り返るも呪霊は既に目前まで迫っていた。
間に合わない
全員がそう思った攻撃が大堰に触れる直前で[止まった]
「無下限術式」
「なんつって、
攻撃受けねえのが無下限だけだと思ってんなよ!」
術式順転・結
呪霊の体を貫く無数の結界。
突然現れた結界に拘束された呪霊が何ごとか呟くのが聞こえる。
「結界の使い方が囲うだけだって誰が決めたよ。
結界術式だってなあ、やろうと思えば戦えんだよ!舐めんなクソが!」
応用術式・爆結
呪霊全身を囲んだ結界が質量法則を無視したまま収縮し、呪霊ごと爆発した。
「いよーし!お仕事終了ー!」