2007年9月
「報告は以上です」
「ふむ」
厳つい容姿と不釣り合いにファンシーな背景のお陰で話が半分も頭に入らなかった。
夏油が作成した紙面の報告と口頭の報告を照らし合わせた夜蛾は渋面を作った。
「保護した双子というのは」
「今は硝子に預けています」
「報告によれば2人とも術式持ちなのだろ、規定であれば高専と繋がりのある施設で保護するはずだ」
「んなこたあ知ってますよ。
そのつもりなら昨日のうちに窓に預けてる」
「どうするつもりだ」
「オレたちで保護する」
「犬猫じゃないんだぞ」
「犬猫だって拾ってお終いなんて無責任なこたあしねえよ」
珍しくも必死に言い募る大堰に目を瞬いた。
「我儘か」
「そーですよ、我儘ですよ!言わせたからには聞いてくれんでしょうね!」
その立場故か、大堰は基本的に高専の方針や命令に意を唱えることは無い。
無論、文句は幾らでも並べたてるが、サボる事も手を抜く事もしない。
そんな大堰がムキになる姿は、年相応に見えた。
「…まあ、いいだろう。
但し、学生のうちは生活拠点は寮だからな」
「うっし!」
ハイタッチを交わす生徒たちを微笑ましい目で見ていた夜蛾は続いた言葉に耳を疑うこととなる。
「んじゃ、こっからは交渉。
傑の任務を5割、最低でも3割減らしてください」
思わぬ発言に夜蛾だけでなく夏油までも目を剥いた。
「世那、それは…」
「悪いけど傑の意見は聞いてやれねえ。
オレへの嫌がらせのつもりだと思っていたけど、どうもそうじゃねえらしいからな」
波を知らない大堰の瞳に静かな怒りが灯るのを見た。
「どんな意図があるか知らねえけど、聖漿体の護衛からオレを外した。
自惚れるつもりはねえけど、成功率を上げるならオレを守りに入れるのが最善だったはずだ。
オレと悟が行った任務に呪物の情報がなかった。
健人と雄が行った任務に至っては職務怠慢もいいところだ。産土信仰を見落とす馬鹿がいるか?
上の考えなんざ知らねえけどな、オレたちを使い潰してえってのはよーくわかった」
まくし立てる大堰に夜蛾は苦虫を噛み潰しなような苦い顔をした。
優しい担任のことである、思い当たる節があるのだろう。
「難しいと思うぞ」
「だろうな。
減らした分の任務熟せる程オレも戦闘向きじゃねえ。
けど、そこで無理じゃなくて難しいって言っちまうあたり、オレは夜蛾さんが好きだぜ。
…呪術師界は万年人手不足、呪霊はウジみてえに湧いてきやがるし、最近じゃ呪詛師なんかも活発化してきてる。
だけどさ、最近の任務量は仮に特級だっつっても学生に回す量じゃねえだろ。
悟に関しちゃ、あいつ自身に向けた嫌がらせが入ってんだろうからオレがどうこうできるもんじゃねえ。
オレに関しても今更文句を言うつもりはねえ。
けど、傑の方は口出しさせてもらう。
これ以上大事なもんが擦り潰されんのを黙って見てられるほどオレは人間できてねえ」
大堰の勢いに押され、遂には頭を抱えた夜蛾は重い息を吐き出した。
「それは、北方の意か」
「アイヌのじい様方の考えなんざ知るかよ。
向こうはこっちと違って他家のことなんざ興味ねえからな。
内政不干渉ってーの?自分の家の範囲に異常がなけりゃ他はどうでもいいの。
だからコレはオレの意思だ。オレは俺の切れるカードを使わせてもらう」
「ふむ」
厳つい容姿と不釣り合いにファンシーな背景のお陰で話が半分も頭に入らなかった。
夏油が作成した紙面の報告と口頭の報告を照らし合わせた夜蛾は渋面を作った。
「保護した双子というのは」
「今は硝子に預けています」
「報告によれば2人とも術式持ちなのだろ、規定であれば高専と繋がりのある施設で保護するはずだ」
「んなこたあ知ってますよ。
そのつもりなら昨日のうちに窓に預けてる」
「どうするつもりだ」
「オレたちで保護する」
「犬猫じゃないんだぞ」
「犬猫だって拾ってお終いなんて無責任なこたあしねえよ」
珍しくも必死に言い募る大堰に目を瞬いた。
「我儘か」
「そーですよ、我儘ですよ!言わせたからには聞いてくれんでしょうね!」
その立場故か、大堰は基本的に高専の方針や命令に意を唱えることは無い。
無論、文句は幾らでも並べたてるが、サボる事も手を抜く事もしない。
そんな大堰がムキになる姿は、年相応に見えた。
「…まあ、いいだろう。
但し、学生のうちは生活拠点は寮だからな」
「うっし!」
ハイタッチを交わす生徒たちを微笑ましい目で見ていた夜蛾は続いた言葉に耳を疑うこととなる。
「んじゃ、こっからは交渉。
傑の任務を5割、最低でも3割減らしてください」
思わぬ発言に夜蛾だけでなく夏油までも目を剥いた。
「世那、それは…」
「悪いけど傑の意見は聞いてやれねえ。
オレへの嫌がらせのつもりだと思っていたけど、どうもそうじゃねえらしいからな」
波を知らない大堰の瞳に静かな怒りが灯るのを見た。
「どんな意図があるか知らねえけど、聖漿体の護衛からオレを外した。
自惚れるつもりはねえけど、成功率を上げるならオレを守りに入れるのが最善だったはずだ。
オレと悟が行った任務に呪物の情報がなかった。
健人と雄が行った任務に至っては職務怠慢もいいところだ。産土信仰を見落とす馬鹿がいるか?
上の考えなんざ知らねえけどな、オレたちを使い潰してえってのはよーくわかった」
まくし立てる大堰に夜蛾は苦虫を噛み潰しなような苦い顔をした。
優しい担任のことである、思い当たる節があるのだろう。
「難しいと思うぞ」
「だろうな。
減らした分の任務熟せる程オレも戦闘向きじゃねえ。
けど、そこで無理じゃなくて難しいって言っちまうあたり、オレは夜蛾さんが好きだぜ。
…呪術師界は万年人手不足、呪霊はウジみてえに湧いてきやがるし、最近じゃ呪詛師なんかも活発化してきてる。
だけどさ、最近の任務量は仮に特級だっつっても学生に回す量じゃねえだろ。
悟に関しちゃ、あいつ自身に向けた嫌がらせが入ってんだろうからオレがどうこうできるもんじゃねえ。
オレに関しても今更文句を言うつもりはねえ。
けど、傑の方は口出しさせてもらう。
これ以上大事なもんが擦り潰されんのを黙って見てられるほどオレは人間できてねえ」
大堰の勢いに押され、遂には頭を抱えた夜蛾は重い息を吐き出した。
「それは、北方の意か」
「アイヌのじい様方の考えなんざ知るかよ。
向こうはこっちと違って他家のことなんざ興味ねえからな。
内政不干渉ってーの?自分の家の範囲に異常がなけりゃ他はどうでもいいの。
だからコレはオレの意思だ。オレは俺の切れるカードを使わせてもらう」