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2005年7月

なんとも恥ずかしい報告をしたものだと思う。
この歳にもなって友達ができたなどと、普通親にも言わないだろう。

残念ながら大堰の中に両親についでの記憶はそう多くない。記憶の大部分を占めるのは、術式にしか興味の無い大人たちの姿だ。
その中に於いて、甲斐という人物は最も父親の人物像に当て嵌まる人であり、唯一の人物だった。
まあ、多少見た目は厳つくもあるが、気を許すには十分だったのだろう。

「さて、お仕事しますか」

気恥ずかしさを紛らわせる様に大袈裟に背伸びをしてみるせる。
羞恥心と引き換えに多少スッキリした気がする。

(にしても、甲斐さんも笑ったりするんだな)

山奥とはいえそれなりに名の知れた場所である為、帳は必須とされた。
甲斐が紡ぐ呪文と共に上空からどろりと溶けた暗闇が広がっていく。

「生得領域は無しと、つーことは2級か?
ちっとばかし測り違えたかな」

踏み入れた境内は山の上へと伸びる巨大な階段とその階段の左右に複数の建物が広がる普通の山寺の様に見えた。

「呪物は本堂だったよな。
生存者は…しらみ潰しに行くしかねえか…」

長い階段に既に嫌気が差していくるが、動かなければ何も終わらない。
折れそうになる心を支えなおし、まずは本堂に向かい階段を駆け上がっていく。
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