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2007年8月

廃工場で拾った呪物は、『両面宿儺の指』と呼ばれる特級呪物だったことを後から聞いた。
通常であれば厳重に封印されて然るべきものが何故アレ程までに無防備に放置されていたのかは謎のままだ。

任務復帰の許可が出た頃には夏も盛りの繁忙期真っ只中。
五条、夏油の特級術師たちは勿論のこと、大堰自身も1級となり単独任務がこれまでと比較にならないほど増えていた。
お陰で同期が揃うことは殆ど無いまま7月は過ぎ去った。

「世那さん!」

「お?雄じゃーん」

高専内に1箇所しか無い自動販売機に向かう途中、其方の方向から現れたのはいつも元気、満面の笑顔の灰原だった。

「なんか久しぶりだな」

「先週会いましたけどね!さっき夏油さんにもお会いしましたよ」

「マジで?」

夏油にも暫く会っていないな。
会いに行くような用事もないから遭遇できるとレア感があってちょっと嬉しい。

「夏油さんにも聞いたんですけど、世那さんお土産何がいいですか?」

「あー、しょっぱいもの」

「了解です!」

足早にすれ違ってしまったが、お土産ということは何処か遠方に任務に行くのだろう。

(どこに行くか聞き忘れたな)

肩越しに振り返ると、遠くの方で灰原と合流したらしい七海が見えた。
テンションの高すぎる灰原に絡まれる七海はうんざりしている様に見えるが、満更でもないことを知っていると微笑ましく見えるから不思議だ。

(なかよしきことは良きことなりってな)

遠目に目が合うと少し嫌そうな顔をしながらも律儀に頭を下げる七海に手を振り、次の任務へと気合いを入れ直した。
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