2007年6月
「おっまえ…んなことにキレてたのかよ!」
「はあ?!そんなことじゃねえし!」
「そんなことだろ!
俺がお前らに比べたら劣ってんのなんざ分かりきってたことだろうが!」
「でも!足手纏いなんかじゃない!」
「知らねえよ!
そりゃ足手纏いにならねえ様に努力はするけどな!」
自分達以外誰も居ない。誰も聞いてない。
そうわかっているからこそ、こんな馬鹿らしい言い合いを馬鹿みたいに大声でやり合ってて、それこそガキみたいだけど、
コレだけは主張しておきたい。
「オレは暗いところが嫌いなんだよ!
こんなとこに置いていくんじゃねえよ!」
「そこかよ!」
正直、誰に馬鹿にされようが、誰に貶されようがどうでもいい。
大抵のことは実力で黙らせるし、それが難しくてもそれなりにやり過ごす方法はある。
でも暗いのだけはダメだ。それだけはどうにもならない。
「俺だって、誰かと任務って久しぶりだし…
最近どこいくのも1人でさ、そりゃ俺最強だし?
1人でも余裕だけど、傑がいりゃもっと最強だし、世那がいればもっと簡単に終わんのになって、思ってたのにさ…」
身長差のせいでその瞳を窺うことはできないが、形の良い唇がツンと窄められるのを見れば、今までの鬱蒼とした苛立ちもどうでも良くなる。
己はなんと簡単なものなのだろうか。
「はぁ…このさびしんぼめ。
さっさと終わらせんぞ、腹減ったわ」
「俺クレープがいい!」
「奢らねえからな」
大体、クレープだけじゃ腹は膨れないだろう。
「で、状況は?」
「俺1体祓った」
「オレも1体。つーことは残り1匹か」
「なに、世那1体でそんなボロボロなの、ウケるー」
「うっせーな防御特化術式舐めんな」
「防御できてねえじゃん」
「それな」
防御できていれば傷だらけになることは無かっただろうが、攻撃しながら守ると言うのは凡人には中々難しいのだ。
「反転術式使えばいいじゃん」
「んなもん出来るわけねえだろ」
敷地内に響く大きな声を耳を塞いで聞き流す。
「術式反転できんのに?!」
「関係ねえだろ?
術式反転って外に向かって呪力打っ込むだけじゃん」
「意味わかんねー」
その言葉、そっくりそのまま返してやりたい。