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2006年12月

ほぼ一昼夜をホテルで過ごした4人は、電車を乗り継ぐこと約5時間。漸く辿り着いた場所も当たり一面純白の雪景色。

「なんもねーじゃん!」

「悟ーお前さん保護色ヤバいから!見失う前に戻って来い!」

日光に反射する五条の白銀の髪は見事に雪に紛れ込んだ。
家入と夏油は腹を抱えて大爆笑だった。

「なー世那!生キャラメル食べたい!」

「アレ何処だ?…十勝か、だいぶ戻るな」

「どんぐらい?」

「3時間」

「ダル」

「北海道の移動はダリィもんなんだよ」

何処までも景色の変わらない道を歩き続け、時間の感覚も曖昧になってきた頃、先導していた大堰の足が止まった。

「着いたぞ。網走監獄」

煉瓦造りの塀の向こうに変わった形の建物が見える。
網走監獄。日本最北端の刑務所で、放射状の舎房を持つ木造建築物。
明治から大正にかけて使用されていた刑務所であり、最近幾つかの建物が有形文化財だかなんだかに登録されたという。

「知識としては知っていたけど、実際に見ると圧巻だね」

「オレも来たのは初めてだよ」

観光気分の4人は入り口で入場料を支払い鉄格子の門をくぐり抜ける。
博物館にもなっている館内は一般人もそれなりの人数いる。今すぐに行動するのは難しいだろう。
ならば取り敢えず博物館見学だと歩き出した夏油と五条の目の前に屋根に積もった雪が滑り落ちてきた。
勿論持ち前の反射神経で避けることなど朝飯前だ。

「ビビったー」

「これに巻き込まれて毎年亡くなる人がいるぐらいだからね」

しゃくりしゃくりと薄く積もった雪を踏み足音が一つ、二つ、三つ…一つ足りない。

「世那?」

振り返った先で大堰は屋根から落ちてきた雪を見つめて固まっていた。

「大堰、どうした」

覗き込んだ家入が見えていないのか、見開かれた目は焦点がブレ、視線が定まっていない。
薄く開かれた口からは風を切るような引き攣った音が漏れ出ている。
このままではまずい。医療に関わる者として家入の直感がそう告げていた。
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