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2006年12月

「来たぜほっかいどー!」

「戻って来ちまったなー北海道」

腰の高さ以上に積もった雪に大はしゃぎの五条の声に被って呟かれた声が聞こえたのは多分隣にいた家入だけだった。

「大堰」

「ん?どったの硝子さん、寒い?」

「…まあ、それなりに」

「んじゃ、コレどーぞ」

そう言って自分が巻いていたダークグレイのスヌードを家入に巻き付けてる。
丁寧な様で少し不器用なところがあるから髪がボサボサだ。

「これじゃ大堰が寒いじゃん」

「こんぐらいなら慣れてるからなー」

借りたスヌードは見た目より触り心地が良く、想像以上に温かった。
少しムカつく。

「現場、網走っつったよな」

「そうだね」

「んじゃ、やっぱ予定通りここで一泊して明日だな」

今回の任務は正直遠足の様なものだった。
観光地化された元監獄で雑魚が湧いているらしく片付けろと言うもの。4人が揃って行くような難易度には到底及ばない。

「おーい悟ー傑ーホテル行こうぜー腹へったー」

それでも、何かとすれ違っていた同期が揃うこの任務を見た目の割に優しい担任からの労いと思って楽しむことにしていた。

「硝子、どうかしたかい?」

「別に。
夏油、ピアス外した方がいいよ。耳千切れる」

「えっ!?」

金属は冷やされると皮膚に張り付く。
飛行機の中で伝えようと思っていたのだが忘れていた。まあ、今言ったのだから優しさだろう。

「大堰の本家ってさ、北海道って言ってたよね」

「そうだね」

「どの辺か知ってるか?」

「…そういえば、聞いた事なかったな」

大したことでは無いはずだ。
しかし、先程の呟きも相まって、どうにもこの遠足は楽しいまま終わらない予感がしてきた。
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