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2006年8月

聖漿体護衛任務の追加要員に後輩の七海と灰原がついて、何故か沖縄に飛んだ。
そこまでは又聞きではあるが聞いていた。

「失敗?」

手頃な任務を終えて帰還した大堰が聞いたのは、耳に馴染まないそんな言葉だった。

「2人は…」

はじめに浮かんだのは任務にあたっていた同期2人のことだった。任務失敗が容易に死に繋がるのがこの世界だ。もしかしたら、という考えが頭をよぎる。

「無事だ。治療も終えている」

「そっかー、よかった」

全身に残っていた空気を全て吐き出した気分だ。
高専に戻ってみたらあちこちが破壊され、血塗れの残穢だらけ。不安がるなというのも無理な話だ。

「つーことは、聖漿体の子は死んじゃったわけっすか」

「ああ」

「なら、オレ、使われる?」

厳ついサングラスの下で夜蛾の目が大きく開かれ、眉の間に深い谷が刻まれる。

[天元様に異常が起きた場合、高専にかけられた結界の肩代わりする]

それが大堰の術式に科せられた"縛り"であった。

「いや、その必要はない」

「気になる言い方しますね。どうせ聞いたって教えてくんねえんだろうけど」

「…アイツらには伝えてないのか」

「言ってねえっすよ。言う気もねえ」

嫌なことは口に出すようにしているが、コレは嫌なことではない。
無論、初めは嫌だった。
自分が見知らぬ人の為に犠牲にならなければいけないなど納得できるはずが無かった。
しかし、今は納得はできずとも嫌ではない。

「オレ、アイツらのこと結構好きみたいっすよ。
だから自己犠牲だろうが人身御供だろうがあいつらの為になるならやってやりますよ」

「そうか」

厳つい見た目の割に夜蛾は優しい。
大堰のこの縛りを知っているのは夜蛾と、夜蛾を通してこの縛りを提示してきた上層部のみ。
この手の話をするたびに彼はすまなそうな顔をする。
優しいのだ。厳ついけど。

「今回、なんでオレは外されたんすか」

「天元様の指名だったからとしか言えないな」

「そーですか」
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