このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

2006年8月

翌日、4つ並んだ座席は窓際2つのみが埋まっていた。

「せいしょーたいの保護?」

「らしいよ」

前日、任務説明のためと席を外すように言われた家入と大堰が教室を出て、呼び戻された頃には問題児コンビの姿は無かった。
個別に任務を言い渡され、面子が欠けることはまま良くあることなので特に気にしてはいなかったが、今回はいつもと一味違うらしい。

「なんでも天元様のご指名だそうだ」

「ほーそりゃ大変」

聖漿体といえば、呪術界に於ける防衛の要、天元様に適合する人間のことだ。
要するに天元様の術式を初期化するための生贄だ。

「何考えてる」

「べっつにー護衛任務ならオレも結構適性あると思っただけっすよー」

「たしかに」

最強を公言して憚らない2人のことだ。苦手分野など無いのかもしれないが、こちらにもプライドというものがある。

「ご指名だから」

「行きてえわけじゃねえよ。暇なのにこしたこたあない」

夜蛾が来ないのをいいことに教室で堂々と煙草に火をつける家入を眺めていると、軽やかな着信音が鳴り響いた。

「なんだこれ」

届いたメールは夏油からのものだった。
家入が見やすいように引き摺り下ろされた携帯を2人で覗き込みながら開いたメールには1枚の画像と人物名のみ。

「天内理子?」

「これ、聖漿体か?
極秘任務のはずだろ、情報を流していいのか」

「さあな」

いい訳がない。しかし、あの夏油が送ってきたのだから、何かしら理由があるのだろう。

「こんなガキを狙ってQと盤星教がねえ」

「硝子さんのそういう情報はどっからくんのよ」

Qは呪詛師の集団だ。見た目にも分かりやすい集団だと聞いているから、わざわさ此方に話を流す必要もないだろう。となると、盤星教の方か。

「みーつけた」

ポチポチとネットの海を漂った末、行き着いたのは呪詛師御用達の裏サイト。
盤星教は天元様を崇拝しているだけの一般人の集団だ。集団内の人間に対した力はない。ならば外部から人を募るほか道はないだろうと言う予想が見事に当たった。

「スッゲーのガキ1人にかける金額かよ」

「五条も昔、懸賞金掛かってたって言うけど、案外いい勝負だったりして」

「マジでクソだな、この業界」
3/7ページ
スキ