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2006年6月

運ばれてきたオムライスは、最近流行りの半熟卵では無く、均一に火の通った綺麗な薄焼き卵に包まれたチキンライスにデミグラスソースが掛かっていて、見た目から大変食欲をそそられた。

「美味しい」

「お気に召したようで良かったです」

カッコつけている割にあまり食べるのが上手くない大堰の皿にスプーンで掬いきれなかったチキンライスが少しずつ溜まっていくのが気になる。

「この後は?」

「…服。それから靴が見たい」

「見るだけ?」

「だけ。新しい靴は履き慣らさないと靴擦れ起こして痛い目見るからな。下見しておいて歌姫先輩と買い物する時の楽しみにするさ」

「へー、」

「大堰は、どっか行きたい何処とかないのか?」

「特にはねえな」

付き合わせてる手前、少しは気を使ったつもりだったのだが、ばっさりと切り捨てられる。
減った分の気遣いを返せ。

「この辺はよくわかんねえし、欲しいものってもたいして思い浮かばねえな。
寧ろ実験に付き合ってもらえて凄え有り難かったから、大丈夫」

「は?実験って、さっきの?」

「そ。人にやんのは初めてだった。
展開は直接やるとして、課題はどう維持するかだな。
呪力の消費量的には大きく張るより効率いんだがなあ、均一に保つのに意外と神経使うのがわかったから調整しねえと…そもそも遠隔で結界を維持できるか、が先か…」

意外にも紳士的な態度に忘れかけていたが、此奴も中々クズだったな。
ブツブツと思案に耽る大堰の姿にいつも通りのクズさが見えて呆れを通り越して少し笑えた。

「水に浸かってるような感覚があったよ」

「んあ?」

「結界に覆われた時の感じ。アレが顔に来るのはキツいな」

「マジか、それは貴重なご意見」

昼食の代金は、自分が食べたものに支払いをしないのは居心地が悪いと言う大堰の主張により、結局割り勘になった。


そろそろ忙しい1年がはじまる。
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