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2006年6月

少し早い昼食にと2人が入ったのは落ち着いた雰囲気のカフェだった。
ショップが立ち並ぶメインの通りから細い道に逸れ、裏通りにある地元の人の立ち寄るような店にも関わらず、特に迷いもせず入って行く大堰に、来たことがあるのか尋ねると、いや、と曖昧な答えが返ってきた。

「知ってる店なの?」

「いや、さっき調べた」

「かっこつけめ」

「多少エスコートしねえとかなと思っただけっすよ」

しょうがないからエスコートされてやる。
そういうと大堰は、オススメらしいオムライスを2つ頼んだ。

「さっきの何」

「さっきのって?」

「惚けんな」

通しで出されたオニオンスープはコンソメベースの胃に優しい味がした。

「擬似無下限って悟達はいってんな。
つってもんな凄えもんじゃねえよ。ただ体表に結界這わせて展開してるだけだ」

「そんなのもできるんだ」

「結界制御の訓練でやってたら出来るようになったっつう副産物みてえなもんだけどな」

事もなげに言うが、そもそも結界の形状変化というのはそれ程簡単なものでは無いだろう。
大堰は中々に有能だ。ただ、自分たちを最強と言って憚らない同期達に埋れている節はある。

「それってさ、自分以外にも掛けられんのか?」

「お目が高いねー、最近実験し始めたところだ」

手、貸して。と言われ、断る理由もないのでテーブルの上に手を投げ出すと、徐に握られる。

「無機物は呪力の流れが掴みにくくてな、あんまし上手くいかんかった。その点、人はやり易い」

握られている手から徐々に広がる違和感に気がついた。
不快というほどでは無いが、何かに包まれているような、その部分だけ水につけているようなそんな感覚が手から前腕、二の腕へと広がってくる。

「触れてるところから拡げるのは結構簡単なんだけどな、触れてないと維持すんのに気力が持ってかれんだよなあ…」

手が離れると同時に感じていた違和感が霧散する。
アレが結界に覆われている感覚なのだろう。
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