2005年6月
「は?」
ガッ
鈍い音とともに重なった二つの影が離れた。
「ってーなクソが、石頭かよ」
カウンターを仕掛けようとした五条の後頭部を掴んだ大堰が頭突きを喰らわしたのだ。
顔面モロに食らった五条の鼻から血が流れるし、歯が当たったのだろうか、大堰の額からも出血が見られる。
ダメージは凡そ等倍。
しかし、仕掛けた方と仕掛けられた方では精神的な部分で大きな差が生じる。
「無下限術式ってのは攻撃が当たらねえんだっけか、
こーゆーのは初めてかい?」
流れる血もそのままに膝をついた五条を見下ろす大堰は、口で言うほど馬鹿にするでも見下すでもなく、純粋に楽しそうだった。
「マジで殺す」
「はっはあ!やってみやがれお坊ちゃんが!」
テンションの上がりきった2人には背後でゆらりと動く影に気がつかない。
先程までの組手と異なり、完全に喧嘩の様相となった2人を止めるべきかと動きかけた夏油が止まった。
「体術だと、言っとるだろうが!!」
「っで」
「いってー!」
夜蛾からの鉄拳制裁が下された。
全く気づいていなかったのか、完璧に決まった鉄拳に頭を抱える2人を遠目で見ていた家入が大爆笑しているのが見えた。
夏油も堪えてはいるが隠すつもりは無いようだ。
「何故そうも喧嘩腰になるんだ」
「煽ってきたのはアイツだし!」
「自分を棚に上げて偉っそうに…」
「はあ?!」
正座させられてもなお口喧嘩を白熱させる2人には言うまでもなく二度目の制裁が下された。