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2006年1月

「と、送り出したものの…暇だ」

1年で担任の配慮もあり、大堰にも任務は入らない。
しかし人は、毎日何かに恐怖し、恨み、憎み、呪い、生きている。
従って、呪霊は年中無休で発生する。呪霊が出れば窓が動き、補助監督や術師が派遣される。

繁忙期ほどではないが動く人の多い高専内で大堰1人が何もない。
ドライに見えて何かと直ぐに集まる同期達も居ないと、自主練にも身が入らない。

「出かけるか…」

「どこいくの?」

どうせ誰もいないからと談話室でだらけていたところ、不意に声をかけられ椅子から滑り落ちるほど驚いた。

「は、硝子、さん?」

「いえーい」

「傑も、」

「やあ」

見慣れた真っ黒い制服ではなく、私服に身を包んだ家入と夏油がひっくり返った大堰を見下ろす。

「え、なんで…三ヶ日までは帰ってるって、あれ?」

「ぼっちで寂しい大堰のために帰ってきてやったぞ。よろこべ」

「めちゃくちゃ上からじゃねえか」

「硝子とは下であっただけだけどね」

示し合わせて帰ってきたわけではない。なら2人揃って、偶然、予定より早く帰ってきたということか。あり得ない…だろうか。

「出かけるんじゃなかったの?」

「いやー、2人が帰ってきたんならいいかなーとか」

「どこ行こうとしてたの?」

「すげえ興味津々じゃん」

「私の顔が好みらしいから、押し切ったらイケるかなって」

「すーぐーるー!」

「あははは」

好みなことに違いはないのだが、少し語弊があるというか、人伝に伝えられるべき情報ではないというか…

興味に染まった2人分の視線から逃げるには大堰の意思は脆かった。

「…両親のとこだよ」
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