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2005年12月

「世那に言われたくねえ!」

息を切らしながら現れた白と黒に不覚にも泣きそうになった。本当に不覚だ。

「おせえ!」

「すまない!これでも全速力できたんだ!」

間髪入れず律儀な謝罪が聞こえてくる。
安心した。2人が来たことに根拠の無い安堵が湧き上がり、気が緩んだ。
元々不安定だった結界に意識が逸れた瞬間綻びが生まれ、拘束を破った呪霊が真っ直ぐに家入に向かった。
これは完全に予想外の動きだった。
前門に兎、後門に虎2匹ならウサギを狙うだろう。狙われるならまず大堰自身。そう考えていた予想を最悪の形で裏切ってくれた。

(勘弁してくれ、そんな呪力残ってねえぞ)

眼前に呪霊が迫る中、身を守るより先に患者を庇う家入の姿が見えた。

「かっけえなあ…」

出し渋っていたのが馬鹿みたいではないか。

(あんまし高精度なこたあできねえぞ)

照準を呪霊に固定。方向を可能な限り絞り、ありったけの呪力を流し込む。

術式反転


「爆」



爆発の起点は呪霊中心よりやや左。
人で言えば脇腹の辺りを抉った爆発は、呪霊を壁まで吹き飛ばした。

「トドメ!」

それからは早かった。
五条と夏油の見事なコンビネーションにより呪霊は祓われた。
生存者12名。遺体があるものが6名。
当初報告されていた人数にも2人足りない。
しかし、特級相当の呪霊が出現したことを考えると優を超えて秀を付けられても尚不足と言えるだろう。

削られまくった呪力を空にした大堰は案の定まともに動くこともできず、夏油に背負われ乍らの帰還となった。
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