このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

2005年12月

地を這うような冷ややかな声に口論の熱が一気に冷め上がる。

「オレたちの仕事は生存者の保護だ。
つまるつまらねえの話じゃねえ、一度承諾したことは確実に実行しろ。コレは正論でも正義感でもねえ常識の話だ」

悪ふざけに声を荒げることは多々あるが、大堰が本気で起こる姿は、半年近く共に生活し、任務にあたった仲だが初めてだった。

「術師だ非術師だはどうでもいい。どっちも同じ人間であるはずだ。それを人として扱えねえ奴は、オレは嫌いだ」

底冷えするような静かで落ち着いた声は、普段の大堰の印象とかけ離れていた。
何か言わなければ、そう思うほど喉が張り付いて声が出ない。

「で、どうするの」

口火を切ったのは家入だった。

「報告だと逃げ遅れたのは20人程度だったか?」

「多く見積もって25かな」

「どっかに拠点作って、生存者を一括で運んだ方が手っ取り早えか」



先程までの怒りが嘘のように家入と普通に会話を繰り広げていた大堰に、急に振られた五条からは上擦ったような声が零れる。

「お前さん、こっからだと中どんぐらい見える?」

「ぜ、全部?呪霊は今んとこ見えないけど、生きてる奴は、下の方と上の方に分散してる。
生得領域は多分ない」

「優秀な眼だな。
硝子さんは、治療すんなら室内がいいよな」

「寒いからね」

「んじゃ、広さが取れそうな一階スペースに張るのがいいか。
問題はどう集めるかだな。拠点で張ったらオレは動けねえし、硝子さんは中にいたほうがいいだろう」

「生存者の回収は、私と悟で廻ろう。呪霊を使えば手数は事足りる。
それから、目印がわりに私の呪霊を置いていこう。視覚の共有はできないが、何かあれば感知できる」

「したら、悟と傑が生存者の回収、オレと硝子さんで保護及び治療…
オレ、結構勝手に仕切ちまったけどいいの?」

「今更だろ、さっさとしろ」

非戦闘員を公言する女子の蹴りなど大したことは無いだろうが、大袈裟に痛がってみせる。
場を和ませようとでも思ったのだろうが、恐ろしいほどに空回りするのが大堰という男である。

「回収の方は悟の眼に頼りっぱなしになっちまうな」

「任せろ」

「最後、生得領域が展開されたら速攻で戻ってこい。
回収の進行度合がどうであれオレたちの任務はそこで終了、応援が来るまでの待機とする」

「了解」

「んじゃ、お仕事しますか」
2/6ページ
スキ