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2005年10月

「世那は本をよく読むのか?」

「それなりに、かな」

朝食を食べ損ねた大堰は比較的甘くなく、それなりにボリュームのある惣菜系のパンケーキを頼んだが、とっくに食べ終わり、コーヒーをお供に生クリームを平らげる五条を眺めていた。

「なして?」

「部屋に本が多かった気がしてね」

「あー」

同じようにコーヒーを啜っていた夏油の言葉に自室を思い浮かべる。
東京に出てきて以来まともに触っていない書物が山積みにされ、部屋の大部分を占めていたことを思い出す。

そうだ、今日はアレを片付けようと思っていたのだ。もう無理だな。

「フィクションからノンフィクション、古典、現文、洋書に和書、自伝から伝記まで結構なんでも読むな。最近はあんまし読めてねえけど。
けど、今部屋にあんのは本家から持ってきたやつだな」

「世那も術師の家系だったね」

「まあ、一応な。
だから術式の資料とかねえかなって思ってパクってきた」

「大堰とか、俺聞いた事ねえけど」

「田舎のほぼ途絶えたような家だからな。それに、あっちとこっちとじゃ組織形態が違えだろ」

家々の関係や御三家の権力差など面倒な部分を除くと
日本における呪術業界は京都高専を拠点とする西日本と東京高専を拠点とする東日本、アイヌを中心とする北海道に大別される。

「そうなのかい?」

「アイヌはなー話が来ねえんだよ、秘密主義っていうの?」

「この業界、そんなんばっかだろ。
オレは悟のこと知ってたけどな」

「俺有名だからな!」

「そうゆう事じゃねえけど。
ま、ウチみてえなところのことなんざ知らなくていいさ」


知らねえ方がいい。
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