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2005年10月

呪術師は忙しい。
特に夏の間は呪霊が多く繁忙期である。
そんな夏の終わり、暦の上ではとうの昔に秋。
久方振りの全休と来ればやる事は多い。

布団干して、
部屋を掃除し、
買い物に行き、
衣替えをし…

「って考えてたのによお…」

「つっまんねええ!出掛けようぜ!」

「すまない、世那」

「はあ…」

早朝、ノックもなく開け放たれた部屋の扉から覗くのは、入口を塞ぐ白と黒だった。
未だ短い付き合いであるが、大堰は覚った。
終わったと。

「せめて布団ぐらい干させてくれ…」



引っ張り出した秋物の服を纏い、繰り出した街並みは見慣れた田舎町とはかけ離れていた。

「んで、どこ行くんだ?」

「パンケーキ!
この間テレビで見てさー行くって決めてたんだ!」

「うっそだろ…」

男3人で行くところじゃねえだろ…

ただでさえ街に来てから突き刺さる周囲の視線に辟易としていた気分が三割り増しで重くなる。
両隣を見ればどちらも顔がいい。
同性から見てもそう思うのだ、異性から見れば尚良く見える事だろう。
そして何より目立つのがそのスタイルだ。
街を歩く日本人から頭一つ分以上高い背、その割に小さい顔。
羨望の眼差しが痛い。

「硝子さんはどうしたよ」

「甘いものは嫌いだからと断られてしまったよ」

同級生の内唯一の女性、目的地に最も相応しいと思われる人物の名前を出したが素気無く切り捨てられてしまった。
というか、断ると言う選択肢があったのなら初めに教えて欲しかった。

「なんだよ、世那も甘いもん嫌いなのかよ」

「好んでは食わねえけど食えねえわけじゃねえよ」

「マジで!じゃあ2つ頼めるな!」

「手伝わねえぞ」

結局五条は山の様に生クリームが盛られたパンケーキを2種類頼んだ。
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