2005年9月
「んー、じゃあ、コレやるよ」
何かいい案はないか考え、持ち物を探る大堰の手に当たったのは、任務前に立ち寄ったコンビニで貰ったディスペン・パックだった。
ケチャップとマスタードをパキッと折ると真ん中から一度に絞り出せるアレである。
「…なんで」
「さっきコンビニで貰った」
フランクフルトはそれ自体の味付けで十分だと思っている大堰は、もらうだけ貰ったディスペン・パックが自室に結構な量溜まっていたりする。
「なんか、すっげえ不味そうだったから、多少なりとも紛れっかなあって」
「…腎臓壊しそうだね」
「そんなに飲み込むなよ」
口振りからして、取り込める呪霊の上限がわからない。
もし、何百、何千という数の呪霊を取り込めるとしたら、
もし、1級や特級の呪霊も取り込めるとしたら、
それらを操る夏油の術式は間違いなく強力なものとなるだろう。
そして、上層部はそれを野放しにしておくはずがない。
「傑も偶に吐き出した方がいいタイプだな」
「どうかな」
非術師の世界から見るこの業界のなんて悍ましいことか。まさに地獄。
地獄を感受できるかどうかはまだ先延ばしにしても良い時期だろう。
「捌け口ぐらいにはなってやんよ」
「対価は?」
「あー…じゃ、ヤニ一本」
「硝子みたいなことを言うね」