2005年9月
準1級相当呪霊討伐任務
とある県立高校で生徒の失踪事件が発生。
呪物の情報はなし。
"窓"による調査の結果、準1級相当の呪霊を確認。
東京高専より1年2名を派遣。
現場が高校ということで任務開始は夜。
真夏は過ぎたとは言え、夜は未だ蒸し暑く、汗がベタつく。
「よろしく」
「こちらこそー」
件の高校に送り届けられた大堰と夏油は、自身らが通う学校とはかけ離れた様相の校舎を眺める。
都市部の学校など見た目では大した差は無いだろう。どこも鉄筋コンクリート製の校舎にギリギリトラックの取れる校庭がこじんまりした敷地に押し込められている。
住宅地にほど近い場所にある為、帳が下された校内は月明かりが差し込まない分本来の夜より暗くなっている。
「オレ、暗いとこ苦手なんだよなあ…」
一般人が入らねえように帳下ろしときゃわざわざ夜にせんでもよかねえか?
オレらが休日出勤するとか…いや、オレら休日もクソもねえな。
「傑?」
静寂が蔓延る校内では独り言の声量でもよく響く。
それよりも響き渡る足音が1人分しか聞こえて来ないことに気がつき振り返ると、少し離れたところで立ち止まる夏油がいる。
「何してんの?」
「いや、少し意外だったから」
「はあ?なんか最近よく言われんだけど、オレそんな意外性あっかな?」
生得領域では無いとは言え、夜は呪霊の力が増す。ツーマンセルで任務にあたっている以上意図しない形での別行動は得策とは言えないだろう。
「苦手なものとか、そんなにハッキリいうとは思わなくてね。どちらかと言えば隠す様なイメージがあったから」
「そうか?
別に気にして欲しいわけじゃねえけどさ、
なんつーか、自分中に溜め込んでんのがヤなんだよ。
嫌なもんも苦しいことも取り敢えず口から出しときゃ、なんとなくマシんなった気が済んだよな」
「そうゆうものかい」
「そーゆーもんなの
もーちゃっちゃと片付けようぜ、こんなとこ早いとこ出てえんだよ」
「そうだね」