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2005年7月

授業に間に合うとはいえ寝坊した。
完全に遅刻なら別に急いだりしないのだが、頑張れば絶妙に間に合う時間というのはダラけるには少しだけ勇気がいる。
朝食もそこそこに急いで教室へ向かっていた大堰は思わぬところで思わぬ人物と遭遇し、足を止める。

「おはよ」

「…はよ、ございます」

「なんで敬語」

教室にほど近い廊下の窓際に立つ家入の手元には些か不穏な物が握られていた。

「なんか朝っぱらから五条の機嫌が良過ぎてキモいんだけど、なんか知ってる?」

「いや…甲斐さんがなんか言ったかな」

前日の任務帰りに寄ったファミレスを思い返しても、ドリンクバーにはしゃいでいた記憶しかない。
その後、寮に戻ってきた時も不自然なことはなかった様に思う。

「かいさんって?」

「知り合いの補助監督」

「ふーん」

自分から聞いたくせに対して興味が無さそうに呟きながら紫煙を吐き出した。

「硝子さんは何してんの?」

「夜蛾せんが学長に捕まって来ないから、ちょっと一服」

「未成年よ」

「そうゆうの気にするんだ。ちょっと意外」

気にするも何も事実だ。よい子は決して真似してはいけない。
しかし、似合うのだ。
余りにも堂々としているからなのか、窓にもたれかかり青い空に紫煙を燻らせる姿はある種の絵画の様にも見え、咎める此方の方が場違いな気すらしてくる。
そんなことを考えていた大堰目の前に白と赤の箱が差し出された。

「なに?」

「口止め料」

「んじゃ、遠慮なく」

箱から一本抜き取ると無言で火が差し出される。
慣れた手つきで火を灯すと家入は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「いける口だね」

「まあ、嗜む程度にな」
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