2005年7月
「腹減ったー」
多少手間どいはしたものの初任務にしては上々の出来ではないか。
今回の任務の内容を辿り、大堰は1人越に浸っていた。
「なーってば!世那!いい加減聞けよ!!」
「うっせーな!こちとら初任務なんだ!達成感に浸らせろ!」
どうせこの先様々な任務に駆り出されることになるのだ。初めぐらいは純粋に喜ばせて欲しい。などと言う希望は五条悟には通じない。
「なんだよアレ!結界ってあんなんもできるのかよ!」
「知らねーよ、やってたらできたんだよ」
「そんな適当な」
「いやマジで。
じゃーねえだろ、こんな術式、大した記録もねえし、試行錯誤の結果こーなってんの」
長く術式持ちが生まれていなかった家系であり、結界という呪力を持つものならば学びさえすれば比較的容易に使うことのできるモノに特化した術式。
記録が少ない事も正直理解できてしまう。
大堰自身、本家に引き取られて以降術式を扱う訓練は受けていた。しかし、まともに使える者も使い方を知る者も少なく苦労させられた。
「作んのは結構簡単なんだよな。消すのがめんどくせえの。中々上手くいかねえもんだから、閉じ込められて何回か死にかけたわ」
「ウケる」
「うっせ、もーいいだろ、昼飯食い損ねて腹減ってんだよ」
高専を出発したのは昼前だった。それから任務にあたって帷が上がる頃には日は沈みきっていた。
元々帰りに何処かに寄って食べ物を買い込もうと思っていた。
「じゃあさ、ファミレス行こうぜ!ファミレス!ドリンクバー!」
「はいはい」
「ふぁみれすってなんだ?」
「は?」
箱入りのお坊ちゃんである五条ならまだしも、まさか大堰からそんな台詞が出てくるとは思いもしなかった。
硬直した2人を他所に、大堰の頭の中には空腹を満たす食べ物が浮かぶ。
(パン、麺、お握り…シャケ、明太子、おかか…
米が食いたい、米、米がいいな。うん、米にしよう)